1.ギリシャ人にギリシャ国民という主体的意識、当事者意識が存在しない。
ギリシャ人は歴史的に見ても自分で問題を解決したことがないのです。第一は東ローマ帝国時代の十字軍です。聖地エルサレムをイスラム勢力に奪われたのは東ローマ帝国の責任でしたが、東ローマ皇帝はローマ教皇に丸投げで自分たちは戦いませんでした。それは自分たちの問題でなくて、キリスト教圏全体の問題だという言い分です。そういって西欧諸国を巻き込んだ。東ローマ帝国皇帝アレクシウス1世は、かつて偶像崇拝問題を巡ってローマ・カトリックと縁を切った過去も忘れて恥も外聞も無く対立していたローマ教皇に泣きついたわけです。ウルバヌス2世はローマ・カトリックの権威を高める絶好のチャンスと判断したのですね。これがギリシャ人の一番目の泣きつき芸だったのです。
二番目の泣きつき芸は、ギリシャ独立戦争の時。これもギリシャは独力でオスマン帝国から独立した訳でなく、西欧諸国の支援と介入によって独立させて貰えたといった話です。
三番目の泣きつき芸が今回の欧州債務危機問題です。要はギリシャ人は自分で問題を解決できなくなると欧州諸国を巻き込んで、助けてもらうのが伝統芸能です。つまりギリシャ人にはギリシャ国民という主体的意識も当事者意識も無いのです。
2.ギリシャの国際収支構造は、慢性的な貿易赤字を観光黒字で補う構造である。
ギリシャは元々農業国ですが、それでも食料を自給できていません。古代ギリシャ時代にポリスに分立していてマケドニアに支配されるまでは一度も統一国家が生まれなかったことで分かるように国土が山がちで平野が少ないからです。ギリシャの主要産業は農業、観光業、造船業、公務員といったところですが、それでも穀物自給率が75%前後で生産性が高くありません。ギリシャの輸入品目は機械、自動車・車両、石油・石油製品、化学製品、食料品と多岐に渡っていて、特に近年は食料価格の高騰、石油価格の高騰が貿易赤字を拡大させているのです。地球温暖化問題が本来、冷涼な気候を好む小麦の収穫に悪影響を与えて供給が伸び悩む一方で、世界人口の増大によって需要が増大し続けているからです。供給が増えずに需要が増えれば価格が上がるのは経済学のイロハです。欧州債務危機問題が明らかになってからユーロ安は進行していますから、なおさら輸入額は増えます。同じ数量を輸入すれば通貨安によって輸入額は増えますが、元々ドルベースでも値上がりしているので二重のパンチになっています。日本がギリシャの首を絞めているようなものなのです。日本は世界最大の食料輸入国で、パンだ、パスタだ、スイーツ・バイキングだと小麦を輸入しまくって、高値で買い占めています。ドルベースの小麦価格が高騰していても、円高によって日本人にとっては小麦は決して高価な食材ではないからです。コメに比べれば、まだ安い。小麦には200%を超える輸入関税をかけていますが、それでもまだコメより安いのです。また日本は、福島原発事故以来、火力発電所の稼働率を上げていますから、石油の輸入量を増やしています。それが食料と同様に、ドルベースでは価格が高騰していても円高によって相殺できてしまうので、日本人は世界的な価格高騰の事実すらほとんど知らないでいます。ギリシャは日本以上に90%強も火力発電所に依存していますから、石油価格高騰とユーロ安のダブルパンチで電力料金も高騰しています。ギリシャには原子力発電所が無く、水力発電の資源も乏しいのです。こうした輸入額の増大に対して、ギリシャの輸出品目はごく限られています。国際競争力のある輸出産業が乏しいからです。そうした構造的・慢性的な貿易赤字を古代ギリシャ時代の観光資源を活かした観光業の稼ぐ黒字で穴埋めするといったことがギリシャの国際収支の基本パターンです。ところが観光客は景気次第で激しく増減しますから、国内努力だけでは観光収入を増やすことは難しいのです。特にギリシャがユーロに加入してからは、いくらユーロ安になってもユーロ諸国からの観光客は増えません。同じ通貨ですから、ギリシャ旅行に割安感が生じないからです。
よってギリシャはユーロに加盟してから、それまでとんとんだった国際収支が、赤字に転落し、なおかつ赤字幅が増大するといったことになっているのです。
3.ギリシャは国営産業の比率が多く、なおかつ公務員のストが禁止されていませn。
日本では民営化している公共インフラ産業、電力、道路、鉄道、港湾、電信電話といった産業がギリシャではことごとく国営産業です。日本ではそれらの公共産業は、初めから民間産業だったか、後に民営化されたのですが、ギリシャでは逆にことごとく国営なのです。だから公務員の比率が約3割と非常に多い。ギリシャが社会主義国だといわれるのはそうした要因です。国営ですから、コスト意識がありません。石油価格が値上がりすれば、コスト削減努力をしようと考えずに、安易に料金を値上げしようと考えるのです。また日本では公務員のストライキは法律によって禁止されているのですが、ギリシャはそうではない。ギリシャの公務員はあれが不満だ、これが不満だと、待遇に少しでも不満があるか、利用者の迷惑を考えずにやみくもにデモだ、ストだとブチ上げます。それが電力、道路、鉄道、港湾、電信電話と一斉に公共サービスが止まることになるわけです。公務員のストで停電になり、電車が止まる。要はギリシャでは年がら年中、国中が東日本大震災みたいなことになっているわけです。破綻するもなにもなく、そういう経済的大混乱が日常茶飯事です。例えばギリシャの電力料金は欧州諸国でもトップクラスに高いです。それは火力発電の依存度が高いことも大きな要因ですが、国営なので企業努力で価格高騰を抑えようという意識が全く無いことも大きな要因なのです。電力が国営化されていることを逆手にとって、政府は新税の徴収を電力料金に加算するという手法を取りました。
ギリシャはバラマキ公共政策などで莫大な借金をしてしまったわけではありません。国際収支の赤字を埋めるために国債を発行したのです。要は国が借金して輸入代金を支払っているということなのです。
ギリシャ経済が破綻するというのは機械、自動車・車両、石油・石油製品、化学製品、食料品の輸入が出来なくなるということです。実際には輸入が完全にストップすることはないでしょうけど、支払い条件は確実に厳しくなります。例えば、税収を第三者機関に差し押さえられるといったことです。
それは歴史的に例があります。日韓併合前の李氏朝鮮の宮廷は財政破綻していて、関税収入を日本の第一銀行韓国総支店に管理させて、関税収入を担保にして第一銀行から借金していました。
ギリシャ経済は前述の3つの要因によって大変深刻です。ギリシャは、日韓併合前の李氏朝鮮のように独立を失い、ユーロから財政を管理されるようになるでしょう。そうしないと食料品が輸入できなくなって、ギリシャ国民の4人に一人が餓死することになります。また電力も使えなくなるでしょう。どちらにしろギリシャは御終いです。これが公務員天国の行き着く先として歴史的教訓を残すことになるでしょう。
実際のところはギリシャは低金利で借金をする為にユーロに加盟したのです。それは一時しのぎに過ぎず、構造的な問題は全く手付かずのまま残されていました。ギリシャの破綻は、社会民主主義の破綻なのです。日本の公務員にも日本国民という意識は希薄で、今なお既得権益死守しか脳裏にない公務員の論調が目立ちます。それは国の東西を問わない問題なのかも知れません。
経済を知らない人には、少し難しい話だったかも知れません。少なくとも日本とギリシャは大変国情が違う国だということは知っておいてください。ただ最近、31年ぶりに日本が貿易赤字に転落したというニュースが報じられたように、日本もギリシャの後を追う可能性は無いとはいえないのです。円高の日本でさえ輸入額が増えているならユーロ安のギリシャはどんなことになっているやら。
お礼
長文回答ありがとうございます。 低金利借金をするために、EU加盟を果たしたのは 初めからそのような意図が政府内にあり、 それを隠して、EUの加盟審査に臨んだのでしょうか? ギリシャに賢い政治家がいるとしまして、 国の経済についてわかる人だったら、 このような事態になることはEU加盟をして お金を借りまくっているところの最初の方でわかることですよね?