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スーツのハンドメイドとマシンメイド
スーツの縫製についてお尋ねします。 テーラーさんやイージーオーダー専門店のHPを見ていると 「ハンド率の高いマシンメイド」などの表現が散見されるのですが 「マシンメイド」の意味がよく分かりません。 ハンドメイドというのはミシンであれ手縫いであれ人間が縫っている物で、 マシンメイドは機械が全自動で縫っているという事でしょうか。
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マシンメイドとは一般に”ミシン”を使って縫製することを意味します。但し、 ハンドメイドという言葉の定義があいまいなことも事実でして、特に日本の 洋服屋は”洋の服”を扱っているのに英語が全くダメ、雑誌の編集者の多くも 全くダメ、結果、自分達に都合の良いミョウチクリンな和製英語を作り出す 天才が多いのです。(だからいつまでたっても日本の服のレベルが一部を 除いて世界レベルに成長していかない部分があるわけなんですが...)。 今でもイタリアの一部のテーラーでは、上着の芯地据えを手作業で行えば "hand made"と言っている人達もいますし、要するに、日本で言っている ハンドメイドとかハンド率【くだらないが】と言うのは、ハンドソーンhand sewnを 意味していることがほとんどなのです。上着には、最低6箇所手縫いで仕上げる ことによって服の”格”が上がる部分がありますが、例えば上衿の取り付け、 袖付け等がその一部です。 手で縫うことによるメリットとは、仕立てが柔らかく、服が身体の動きに追従 しやすくなること、仕上がりがより立体的となることなど、様々なメリットがありは しますが、あくまで熟練の職人が行ってはじめて成りうることです。 実はハンドメイドの隠された、より重要な意味とは、”ハンドアイアン”にあります。 ハンドアイアンとは生地をアイロンを使って立体化する作業なのですが、日本に おいてはこの作業が軽んじられてきました。イタリア製はじめ、外国製の、しかも 既製服でさえが高額なのは、ハンドアイアンにかなりの時間をかけて服を高度に 立体化して縫製していることが理由に一部にあり、そのことによって生地により丸み、 即ちより立体化されると当然ながらミシンでは縫いにくくなり、結果、手作業を増や さざるをえない、作業により時間がかかる、それが製品コストにはねかえり、小売 価格が上がってしまうというサイクルがあるのです。 つまり、標準化された既製服の型紙を元に生地を裁断し、単にプレス機で鯛焼きの ごとく簡便に作り上げたミシン縫製のスーツと、個別に型紙を起こし、入念な生地の クセ取りがされた上で、それぞれの体型の特徴を生かしながら、良いところをやや強調し、 悪いところはうまくカバーしながらの入念なハンドソウイングhand sewingが行われ、 これも仕上げのプレスを入念に手作業hand ironで行った服とでは、作製に要する時間 も全く異なり、結果、出来上がった服の作り出す曲線、そしてドレープも全く異なるもの となるのであり、譬えはベストではないかもしれませんが、トヨタのカローラとF1ほどの 違いがあると言えるのです。 立体という三次元の話と着心地という本人でしか理解出来ない話ゆえ、文章化すること も難しいのですが、紳士服とは本来そういうもの、つまり結果が個人の嗜好と感性に帰する もので、そのような違いのわかる極く限られた人達のためのものではあるのです。
お礼
詳細にご回答いただきありがとうございます。 立体的なスーツを作る上では布をアイロンワークで立体的にする事がポイントで、立体的なパーツを綺麗に縫い合わせる為にはハンドソーイングが有効であると。なんとも深いですね。大変勉強になりました。 もう一つだけ、スーツのデザインについて手本とすべき画像・資料があればお教えいただけませんでしょうか。セレクトショップでよく見る胸のボリュームと腰の絞りを極端に強調したボディコンのようなスーツは、プライベートはさておき仕事着としては相応しくないよう感じています。日本基準ではなく海外、特にイギリス、フランス、アメリカに胸を張って着て行けるスーツとはどのような物か、お教えいただければ幸いです。