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民法の物権(相隣関係)について

民法の物権について。 物権のところの相隣関係の部分の質問です。 甲土地の所有者Aは、X土地から自然に水が湧き出し始め、それが自己の土地に流れているのに気付いた。(X土地は他の土地よりも高い所にある)。このためAは自己の土地の内側ではあるが、X土地との境界に非常に近い部分に溝を設けて、その水を隣地・丙に流し込む構造にした。そのため隣地・丙の土地が水浸しになった。 以下の場合において、丙の所有者はAにどのような請求ができるか? (1)X土地の所有者が丙である場合 (2)X土地の所有者が第3者Bであった場合 この場合(1)と(2)で何か結論が変わるのでしょうか?僕は216条を使って請求していけばいいのでは…と考えているのですが。 どなたかわかる方お願いします。

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回答No.2

ることができると考えれば良いでしょう(仮に216条を使わなくても物権的妨害排除請求権から直接認めるという方法もありますが、一般論としては根拠条文がある方が説得力があると思ってください)。 対して、Aはどんな反論をするでしょう?そもそもの原因が丙土地と同一の所有に属するX土地にあるのだから、Xからの流水は丙土地を流すべきであると反論することが考えられます。そこで使えそうな話として、まず、高地が浸水した場合に低地に排水を認める220条を見ると「低地のために損害が最も少ない」という要件があります。この規定は「浸水した高地を乾かすため等」の場合の規定ですから、単なる湧水を流すというのは直接該当しません。しかし、水を流すという意味では同じなのですから、これを類推適用してX土地の所有者と丙土地の所有者が同じ場合には、甲土地に損害が出ないように丙土地を利用して排水するようにすべきであると考えることができます。また、隣地通行権について、土地が分割により袋地を生じた場合には分割前の土地しか通行できないという最判の趣旨を考えると、できるだけ無関係の隣人には損害を与えるべきではないと考えるべきであり、そうであれば、この趣旨を援用して本来、丙土地を通してすべき排水を甲土地に流すことは認めるべきではないと言えます。 とはいえ、それだけで勝手に排水溝を設置して丙土地の都合をまったく無視して一方的に水を垂れ流して良いとまでは言えません。 たとえ丙土地の所有者がX土地の湧水を丙土地を使って処理するのが妥当であるとしても、その処理をするに当たって丙土地の事情と言うものを考慮する必要があるわけですから、それを無視して一方的な解決を勝手に図ろうとするAの態度は是認できるものではありません。これを認めると実質自力救済を認めたことになってしまいますから法秩序維持の観点からも是認するわけにはいきません。 よって、丙土地を利用して湧水の処理をするのが妥当であるとしてもなお、本件においては丙土地の所有者はAに対して妨害排除請求は可能とすべきです。つまり、排水を流すのを止めさせることができるということになります。 ところで問題が「丙の請求」なので甲の立場は問題の答えではありません。ですから、甲が丙に対して湧水を何とかしろと妨害排除請求をできるとしても丙の妨害排除請求を否定するものではないということ以上にくどくどと甲の請求の可否を論じるのは失当です。あくまで、甲の反論とその正当性を一定限度認めた上で、丙の請求の可否を論じるべきです。 次に、損害賠償請求の可否を検討します。 請求の根拠は明らかに不法行為になるのですが、問題に多くの事情が書いていないので細かい検討はできませんしする必要もないでしょう。 甲が独断で丙の事情も考慮せずに一方的に排水を丙土地に意図的に流したのであれば、そのために損害が生じれば損害賠償責任を負うという結論だけあっさり書けばよいと思います。 後は、根本原因が丙側にあることを考慮して、過失相殺の問題として、過失相殺の理論的な位置付けから、原因のある丙について損害賠償請求を制限する必要性を論じて、丙は過失相殺を受ける可能性があることを指摘しておけば十分だと思います。 (2)について。 相隣関係の規定が「土地に付着した物権的負担」であることを考えれば(隣地通行権についての最判など)、所有者が誰であるかは基本的には関係ないと考えて良いでしょう。すると、(1)と同じく、丙土地の所有者は妨害排除請求をできると考えて良いと思います。具体的には、排水を丙土地に流すことを止めさせるということになります。これが原則論です。そしてこの原則論を曲げる事情は(1)以上にないので原則どおりの妨害排除請求を認めるということで良いと思います。 また、X土地と丙土地の所有者が別人である以上、丙に対して「自分の土地で処理しろ」という反論は使えないので、せいぜい、甲の行為は正当な権利行使だと主張するくらいしかできません。そこで信玄公旗掛松事件最高裁判決を引き合いに出して、権利の行使であっても他人に迷惑を掛けることまでは認めておらず、他人の権利を不当に侵害するような態様の権利行使は信義則に反し、不法行為が成立することを妨げないということから、損害があれば丙は損害賠償請求ができるという結論を導けば良いと思います。 本来こっちを先に書いて、特別な人的関係を考慮する必要のある(1)を後に書く方が流れがいいので、(1)(2)は逆の方がいいのではないかと思うわけですが、問題がこういう順番になっている以上は仕方がありません。

回答No.1

随分マイナーな議論だと思いますが、少なくとも二つの請求を考える必要があります。一つは、妨害排除の問題、もう一つは損害賠償の問題です。 もし仮に純粋に物権の話だけを答えさせたいなら「いかなる請求ができるか」ではなくて「排水を止めさせることができるか」とかそんな問題にするでしょう。 先に基本的な発想について説明しておきます。 民法で「いかなる請求ができるか」という問題が出たら、「もし自分が原告の立場なら何をして欲しいって請求する?」って考えるところからはじめます。この問題ならば「排水を自分の土地に流すな」「排水を流したことで受けた損害を賠償しろ」辺りでしょう?だとすれば、それぞれの請求を検討しないといけません。 次に「もし自分が被告の立場だったらどんな反論をする?」って考えます。 そこでもし丙土地が問題の原因となったX土地と同一人所有なら、「そもそも原告が自分の土地の問題を自分の土地内で解決しないから悪いんだ」って言いたくなるでしょう?そこで「丙所有のX土地から生じた湧水は丙土地を使って排水すべきだ」ってことを言うわけです。 もし別人所有ならそれは言えませんね。強いて言うとすれば「自分の土地に自分で排水溝を作るのは自由のはずだ」つまり、自己の有する正当な権利を行使しているだけだということくらいなものです。そこが事例(1)と(2)の違いだと思います(もっともこの反論は(1)の場合でも可能です。ですから問題の順序としては(1)と(2)を逆にする方が良いのではないか?という気がします)。 さて、こうして原告被告それぞれの立場で何を言うかということを決めたら、その法的根拠を探して、その主張の正当性を論証します。そしてその主張をつき合わせて最後に結論を書きます。結論は問題に沿ったものでなければなりませんから「丙は」どんな主張ができるかという問題には、「丙は、かくかくしかじかの請求ができる」という答え方をしなければなりません。 つまり、実際の訴訟で争うときにどういう風に争うことになってどんな結論になるかということを想定して書くわけです。 それでは、具体的に考えるとします。 以下全部私個人の独断と偏見なので、その法論理的正当性は一切保証できませんので悪しからず。 (1)について。 まず、排水を自分の土地に流すなという主張をするわけです。「高地から自然に流れる湧水を排水溝を使って隣地に排出してはいけない」ということを定めた直接の規定は少なくとも民法にはないのですが、214条、218条辺りが使えそうです。 214条は「自然に流れてくるのは諦めろ」という規定ですが、直接的には、水が流れてくる高地と水が流れ込む低地の関係を規定して低地側は「妨げてはならない」というものです。低地側でその水を「他所に流してはならない」とは言っていません。しかし、「妨げてはならない」とする趣旨が「水が流れるのは高低差のある土地につきものであり、低地の所有者は一定限度はそれを甘受すべきだ」ということだと考えることができます。すると、「妨げずに他所に流してしまうのは問題ない」ということにはなりません。もちろん、他所に流しても何の問題もないのならいいのですが、現に問題になっているわけですから。ならば、214条の趣旨は、単に妨げるに留まらず、他所の土地に流して迷惑を掛けることも制限していると考えることができ、214条を類推適用することが考えられます(なお、丙土地側から見たときに甲土地から「自然に」流れてくるのを妨げてはならないとしても反対解釈すれば「人為的に」流れてくるのは妨げて構わないと読むこともできます。であれば、丙土地は、その「人為的に」流れてくる水を「妨げることができる」言い換えれば流すなと主張できると解することもできます)。 また、218条は「雨水を隣地に直接に流すような工作物を作るな」という規定ですから「雨水ではなく湧水」の本件には形式的には該当しません。しかし、218条は自分の土地に流入する水を直接隣地に排水するような設備を作ってはいけないという規定であり、「雨水か湧水か」などという形式的な話ではなく、「雨水」は単なる典型例と考えることができます。そこで類推適用できると解することができます。 以上のように考えれば、214条、218条類推適用または同条の趣旨により、「甲は排水溝を設けて丙土地に湧水を排水することは法律上できない」となります。 そして、216条は「排水等のための工作物の破壊等により」損害が及ぶときは妨害排除請求ができる旨定めるのですが、工作物の破壊、閉塞ではなく設置の本件には直接適用できません。しかし、設置であっても破壊、閉塞と同じく損害を防止する必要があることはあるのであり、216条を類推適用すべきと考えて、同条を根拠に排水を止めるよう請求す