尖閣ビデオ流出事件とモラル・ジレンマ
最近、尖閣ビデオを流出させた人が分かったそうです。
この事件を見て、大学の発達心理学の授業でやった「モラル・ジレンマ」を思い出しました。
授業では、死にいたる病で苦しむ妻を助けるため、強欲な薬屋の倉庫に押し入って薬を盗んだ
夫の行為の是非とその理由で、道徳性の発達段階を測ることについて学びました。
ビデオ流出事件を、発達心理学の教科書やホームページを一部もじってやってみましたが、
こんな感じでしょうか? 長文お許しください。
中国漁船が日本漁船に衝突する事件が起きた。その時の様子を日本側がビデオに撮影した。このビデオには事件の一部始終が記録されており、本来なら日本政府が国民に公開し、真実を知らせるべきであった。しかし日本政府は、中国への配慮のため当分の間は非公開の方針をとった。
これに対し、義憤を募らせたであろう海上保安官の男性がビデオを持ち出し、youtubeに投稿し、
インターネット上に流出させた。彼のとった行為は国家公務員上の守秘義務違反に当たる。
彼の行動は正しいか。又、それはなぜか。
≪水準1 前慣習の水準≫ 社会の道徳を学ぶ段階
段階I 服従と罰への志向 諸々の行動は、事の善し悪しではなく、人から罰せられるかどうかで評価される。
・「ビデオの持ち出しは罰せられるので、この行為は悪い」
段階II 手段的欲求充足論 諸々の行動は、自分のニーズが満たされるか否かで評価される。
・「政府の対応に国民は満足しておらず、その反発として、ビデオを持ち出し流出させてもよい」
≪水準2 慣習の水準≫ 社会の道徳を身につけた段階
段階III 「よい子」の道徳 他人に喜ばれたり認められたりするに価値が置かれる。
・「ビデオを公開すれば、見たがっている多くの国民が喜ぶのだから、正しい行為である」
・「ビデオを勝手に公開する行為は政府の面目を潰すことになるので、 正しい行為でない」
段階IV 「法と秩序」志向 法律や秩序、社会的ルールに従うことが善とされる。
・「どのような事情があっても、ビデオの持ち出しは違法であるから、正しい行為でない」
・「法を破った点では、彼は悪い。しかし、特段の事情があったため、完全に悪いとは言い切れない」
≪水準3 脱慣習の水準≫ 社会の道徳を批判し、自律的な道徳を有するようになる段階
段階V 「社会契約」志向 法は擁護されるべきであるが、合意によって変更可能である。
法の定めがあっても、それより重要なものが優先される。
・「国民の知る権利を守るために、ビデオを持ち出したのは正しい行為である」
・「彼のとった行為は正しくない。政権の方針に問題がないとはいえないが、
政府の言い分も尊重し、そのような態度を保持すべきである」
段階VI 普遍的な倫理の原理
生命の崇高さと個人の尊重にもとづいた、自分自身の原理を発展させている。
大部分の法律はこの原理と一致しているが、そうでない場合には、原理に従うべきである。
・「今回、事件の真実を知る権利の擁護という普遍的な倫理の原理は、
どのような法律よりも重要であるから、ビデオを持ち出した行為は正しい」
・「彼のとった行為は正しい。そして、やったことをありのままに公表するのがよい。
彼は処罰を受けなければならないだろうが、
それによって法より大切な国民の知る権利を守ったことになる」
発達心理学や政治に詳しい方、そうでない方問わず、是非ご回答お願いします。
グラフィック心理学 サイエンス社
http://www.eonet.ne.jp/~like-a-flowing-r/psychology1.htm
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/ethics/wordbook/kohlberg.html