中国の対日感情について、日本のジャーナリズムは一般的に何でも「反日」に結びつける傾向が強すぎるように思います。ひと頃は確かに現地も(自分たちの政府への不満の憂さ晴らしもかねて?)大きく騒いでいたと思いますが、その後日本と中国の結びつきは文化・経済両面で大きく進展しました。その結果、今では一般市民、特に若い世代(ネットで情報を得ているような世代)では闇雲に何でも「反日」で感情処理する傾向は殆ど無いそうです。これは現地で活躍している知識人エージェントからの情報をメルマガで配信しているある有名なブログから得た、非常に信頼性の高い生情報です。この層の尖閣問題への感情は「あんな小さな島一つにがたがた言っていないで、もっと俺たちの暮らしを良くしてくれ」というようなものらしいです。中には「あの島が日本並みに暮らし易い島になるなら、日本領で良いから自分はあの島に住みたい」などという面白い意見もあるようです。(中国版ツイッターからの紹介)
私は、現在の「反日」は中国政府の国内不満が政府へ向かわないようにするためと、「反日」さえ持ち出せば対日本との交渉事は全て優位に立てる、という中国政府の思惑で動いている面が大きいと感じています。
なぜ今回の事件が起ったのかという理由ですが、今年の春の400人の「小沢売国訪中団」事件と、これも売国元首相である鳩山氏の「米軍基地国外転出論」に根本的な原因があると思っています。
あの小沢訪中団は正に日本の政権与党トップが中国トップ(党主席と政府首脳)に「臣下の礼」を尽くすためにのこのこと出かけたものでしょう。中国(の古い世代)には現在でも「華夷秩序」思想は強烈に残っていると感じます。あの訪中団を中国側から見れば、正に「華夷秩序に基づいて日本の新しい政権与党トップが自分の配下の一族郎党を引き連れて『臣下の礼』を尽くしにやってきた」、と受取る以外に考えようが無いと思います。実際彼等の態度は正にそれを具体的に表明していましたね。中国首脳から見れば「これで日本は現代の册封体制に取り込めた」と感じたものと思います。
また、鳩山思想の「駐沖縄米軍基地出て行け」論ほど今の中国の領海攻勢を勇気づけた思想は他に無いと思います。これはつまり日本の首長が中国政権に対して「私が、我が日本の鎧を脱がせますから、どうぞいつでもやってきてください。貴国のために沖縄の米軍事力は追い払いますから、簡単に入り込めますよ。」と誘いをかけている思想です。現実には米軍はまだ出て行ってはおりませんが、しかし一国の首長が公式にここまで発言すれば、普通は、やがてそれらは実現されるだろうと思われても不思議ではないですね。これを聞いた中国政府は「日本は、既に沖縄近辺は中国に入ってきても良いというシグナルを出してくれた」と考えることに不思議はないでしょう。
つまり、日本はつい二ヶ月ほど前まで政権与党のトップと国家の首長とが相携えて、中国に向かって「我が国は貴国の臣下であり、貴国は日本の君主国家です。」と華夷秩序に従うことを態度で明示し、「鎧を解く予定ですから沖縄近辺にはいつでも入ってきて頂けるようにしますよ。」と宣言したとんでもない人たちがトップに座っていたわけです。
ここまで垂涎の据え膳を用意されれば、中国としてはそれを食わずにはおれませんね。それが今回の事件となって現れたものと私は思います。
>日本政府は、どのような対応をすべきでしょうか?
日本には対中国の関係で領土問題は存在しません。これは前原新外相もはっきりと言っております。従って、今回の事件も国境侵犯した中国船を公務執行妨害で取り調べるという国内問題として、淡々と法令に従った処理が為されております。今困っているのはむしろ中国政府であって、日本に対して打てる手が無く、返って苦し紛れの理不尽な「対抗策」に走っています。これはこれで、日本にとっては困ったことですが、日本は絶対にこの挑発に乗って対抗策など執ってはいけません。そんなことをすれば、日本がこの事件を国際的な事件であると認めることになり、従って否定している領土問題を認めてしまうことにつながります。ただひたすら、「国内問題」であるので「国内法」に従って淡々と処理するだけ、と言うのが最良にして唯一の対応策です。つまり、現状の政府の処理が最良、と言うことになると思います。