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トランス脂肪酸の表示義務化 どうなった?
「消費者庁がトランス脂肪酸について表示の義務化を検討していましたが、その後どうなりましたか。他にも健康リスクのある成分があると思いますが、なぜトランス脂肪酸だけが注目されるのでしょうか」=東京都多摩市の会社員、大輪正志さん(50)
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■低い日本人の摂取量 トランス脂肪酸は油の構成成分である脂肪酸の一種だ。植物油を加工してつくるマーガリンや、菓子によく使われるショートニングなどに多く含まれる。大量に摂取すると、血液中の「悪玉コレステロール」が増えて「善玉」が減り、動脈硬化や心筋梗塞(こうそく)などのリスクを高めるとされる。 米国やカナダ、フランス、韓国も加工食品の栄養成分表示にトランス脂肪酸を義務付けており、日本でも消費者団体が表示の義務付けや含有量規制を求めていた。 福島瑞穂・消費者担当相は昨年11月24日、閣議後の記者会見で「健康の増進を図る観点」からトランス脂肪酸の食品中の含有量の表示について検討することを表明。12月に厚生労働省、農林水産省を含む関係省庁課長会議が立ち上がった。専門家や関係団体のヒアリングを行い、今月15日に第3回が催されることになっている。消費者庁の担当者は「結論をいつ出すかは未定」と話すが、福島担当相は「表示できる方向で検討してほしい」と強調する。 そもそもトランス脂肪酸はどれほど、健康に害があるのだろうか。 食品安全委員会が調べた日本人のトランス脂肪酸摂取量(平成18年度)は、1日平均0・7~1・3グラム。総エネルギー量に占める摂取割合は0・3~0・6%。世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の専門家会合が示した目安である「最大でも1日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満」を下回っている。 一方、米国の成人平均は1日当たりの摂取量が5・8グラム、総エネルギーに占める割合は2・6%で、目安を大きく上回る。米国の死因の1位である心疾患は、肉などの脂質を多く摂取する食生活が背景にあるため米政府は2006年、飽和脂肪酸やコレステロールに加え、トランス脂肪酸の表示も義務付けた。 ニューヨーク市では飲食店でもトランス脂肪酸の表示を義務化する条例を制定した。カリフォルニア州では08年に同様の規制を行う州法が成立している。 ■消費者庁の存在誇示? 食品安全委員会は日本の場合、平均的な食生活では問題ないという立場だ。ただ、「偏った食事をしている場合は平均を上回る可能性があるため注意する必要がある」と指摘している。 こうした動きを受け、ドーナツやチーズ、油などの製品でトランス脂肪酸を低減する取り組みをアピールするメーカーも出ている。 栄養表示に関する主な法律としては、飲食の衛生上の危害防止を目的とする食品衛生法▽原料や原産地など商品選択に関するJAS法▽栄養の改善などを図る健康増進法がある。健康増進法は栄養表示をする場合に、(1)熱量(2)タンパク質(3)脂質(4)炭水化物(5)ナトリウム-について表示を義務づけている。 こうした法律でトランス脂肪酸の表示を義務化した場合、摂取しすぎると動脈硬化などの健康リスクが指摘されている他の脂質(飽和脂肪酸やコレステロール)の表示の扱いについてはどうするのかといった問題も生じてくる。 現行法の下では、法改正しない限りトランス脂肪酸の栄養表示はあくまでもメーカーの任意となる。 消費生活コンサルタントの森田満樹さんは「そもそも日本には栄養成分の表示自体が義務化されておらず、先進国の中で遅れている。できたばかりの消費者庁としての存在感を示すためにトランス脂肪酸をとりあげた印象は否めない」と疑問を呈する。 菅野道広・九州大学名誉教授は「日本人はトランス脂肪酸よりも飽和脂肪酸の摂取量が多い傾向にある。トランス脂肪酸だけではなく、飽和脂肪酸や脂質全体の摂取量も含めて理解してもらえなければトランス脂肪酸の表示義務の意味がない。トランス脂肪酸表示にかけるコストとその効果を全体的に考える必要がある。重要なのは何より、バランス良く食べることだ」と指摘する。(杉浦美香) ◇ 「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。