LEDを行先表示に採用している理由は「コスト削減」と「情報量の確保」。詳細は以下の通りです。
ここでいうコスト削減は、あなたが考えておられるものとは性質が全然違うものです。どのようなコストかというと、これは表示することによる運用時の電力や減価償却ではなく、その設備を維持するために必要な保守にかかるコストをさします。具体的には、ダイヤ改正による表示駅の増減や運用区間の増減のための行き先の差し替えや、サービス改善に伴う表示情報の増加にすぐに対応するだけでなく、メンテナンスにかける時間を大幅に減らすことによる非営業時間の短縮(運用の効率化)や予備部品点数の減少が期待されます。
今までの幕式だと、1駅の表示を増やすだけですべての幕に表記を追加しなければならないばかりか、空きマスがなくなればすべての車両の幕を全部取り替えないといけませんでした。また、幕式のものは裏から蛍光灯で照らすものがほとんどで、この蛍光灯を取り替えたり、それをストックしておくためのコストも発生していました。たかが蛍光灯とはいっても1本小売で150円から200円するものを首都圏では3000両以上に対してつけていると考えればそのコストは膨大なものになります。それに人件費を上乗せすれば…もうそれは恐ろしい費用になると思います。
で、これらの問題をLEDはすべて解決してくれるのです。駅情報の追加はICカードの書き換えによって編成単位で済ませることができ、転属の時もデータ全体を差し替えるだけでOKです。表示器の故障はLED全体を取り替えればいいので部品ストックを最小にすることができます。蛍光灯の取り替えはもちろん不要です。これらの理由から駅の案内表示器も同じ理由で取り替えが進んでいるみたいです。
…ただ、本来の質問である消灯理由は、納得されないかも知れませんが、ズバリ「高速走行中は側面では判読が難しいから」。これについては問題があるという人も多数いますが、LEDは光の素早い点滅を繰り返すことによって情報を表示するものです。人間の目ではわかりにくいのですが、LED付きの車両を正面から速いシャッタースピードで写真を撮ると行先表示がきれいに写らないことからそれがわかります。本来はLEDは速いスピードで情報を見せるのには向いていないということですね。
で、そもそも駅や駅間を高速で通過する列車の行先表示をなぜ確認する必要があるのでしょう?実際に列車を利用するのは駅、すなわち停車しているときだけですよね…。実際に判別しにくい表示を四六時中つけておいて、通過列車の表示をつかまえて「読めなかった」という苦情をうけるくらいならいっそ消しておく方が…という判断なのだと思います。じゃあ前面はなぜつけっぱなしかというと、前面は高速で走行していても判読しやすいからです。(実際、低速で走る路線バスはLED付きであっても側面も常時表示するようになっています。)
LEDに関しては、上記のように視認性の問題がいろいろ取りざたされていますが、現在は情報量の確保を優先し、かつ総合的なコスト削減をねらうという意味で導入をすすめているようです。決して世間が考えるようなみみっちい浅知恵でやっていることではないことをご理解下さい。
<参考>JR西日本の在来線や近鉄でも新車にLEDを導入していますが、あくまでも行先の表示だけで、種別については従来の幕式を採用しています。これは視認性の問題と、LEDで発色できる色数に限界があること、それと利用者が車両に対して望んでいる情報は最終目的地よりもむしろ「どの電車が速く着くか」なので、種別情報を重視した結果だと推測されます。JR東日本の首都圏の場合は湘南新宿ラインと埼京線・京葉線・横浜線を除くとほとんど種別は関係ありませんよね。電車を見れば種別がわかりますから。
お礼
ありがとうございます。LED採用の理由はよく分かりました。 しかし総武線「各駅停車」がLED消灯することの意義がまだ理解できません。 駅間で並行する快速電車との相対速度は小さいので、乗り換え客への情報伝達のために、常に表示しているに越したことないように思います。