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算数の教材でお金を使用する有効性について
- お金を使用する算数の教材について、特別支援学校等でも取り入れられていることがあります。お金を操作しながら数の感覚を養うことができ、生活との結びつきも強くなります。
- お金そっくりの教材を作成することで、実際のお金を用意しなくても雰囲気が出せます。
- ただし、現金にこだわらず他の教材でも数のかたまりを意識することができるため、必ずしもお金を使う必要はありません。子どもたちにとって理解しやすい授業を実践することが重要です。
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ご質問ありがとうございます。私は研究者ではなく一介の関係者に過ぎませんので、以下は全くの私見になってしまいますが、日頃考えていることを述べさせていただきます。 確かに教室内の配慮としては、以下の例が良く挙げられます。 例えばアスペルガーのお子さんのために、一日のスケジュールボードや用意するものの絵カードを黒板に貼ることで、他の児童も自主的に動けるようになったと言うことは良くあります。 また板書等を意識して色分けし、できるだけ余分な言葉を省くようにしたら、やはりとてもわかりやすくなったということもあります。 広汎性発達障害のお子さんへのパニック対応が、他の子のぐずりに効果があったり、視覚優位のお子さんに絵文字で示すことで、全員に対しても声で指示する回数が減ることもよく見られます。 そういったテクニックは特支担当者は多く持っています。 実際、特支学級は教材の宝庫ですので、私の関わっている学校では気兼ねなく学担が特支の教室から「これ使えそうだから、貸して」や、「こんなことに使いたいのだけれど、良い教材はないか」という相談をいつも持ちかけています。もちろん特支担当者も情報を発信しています。 それをふまえた上で、質問者様の「特支での学習の良さを通常学級でも生かせないか」という点について考えてみたいと思います。 おそらく質問者様は、例えば以下のような特支の単元を思い浮かべていらっしゃるのではと思いました。 「遊びやゲームを取り入れる」「料理を作る」「すごろく作りなどをする」「おもちゃ作りをする」「バザーの品物を作る」「○○に行こう」「買い物学習」…。違ったら済みません…汗 (それらは低学年においては、生活科で行われている学習内容が多いかと思います) 繰り返しになるかとは思いますが、「買い物学習」を例に挙げてみます。 自分たちで店屋を作ってたっぷり買い物を楽しんだとします。児童の活動は生き生きとしたものになるでしょう。支援を必要とするお子さんでも、抵抗なく参加できると思います。 大切なのはこのあとではないでしょうか。 通常学級(通)の算数では、買い物活動でどんなことがわかったのかをまとめていきます。自然に活動させていても身につくものではありません。そこに数学的な観点から、規則性法則性を見つけ出すのが「算数」の学習です。一人一人が何となく活動するのではなく、一人が見つけた法則を全員で共有していくことが大切なのです。 特支学級(特支)では、買い物活動一つとっても内容をかなり絞ります。このお子さんにはこの能力を身につけさせたいからこの活動を行うと、あらかじめ教師側が意図して活動場所を限定しておくのです。情報の取捨選択が難しいお子さんが多いためです。 (特支)で行われている学習活動を(通)で行うことはとても良いことだと思います。しかし必ず目標を明確にし、(通)では何を身につけさせるためにこの活動を行うのか、そこに戻っていただきたいと願っています。(通)の子どもたちがが「あー、楽しかった」というときに、できるだけ知的活動への楽しみを味わわせていただきたいのです。 (特支)の活動はお宝がたくさんあります。教育資源を生かさない手はありません。お互いの情報交換を密に、上手に共有していけたらと思います。 現在ではどの学校にも必ず「特別支援コーディネーター」が置かれていることは、ご存じだと思います。ですので例えばよい教材や指導方法を知りたい、個別支援が必要なお子さんへの具体的な支援方法を知りたいという学担は、コーディネーターを通して特支学級或いは地域のセンター的役割を担う特別支援学校との連携を図ることができるようになっています。 ですから、教材の有効活用という点ではこれからもお互いが情報を共有するべきだと思います。また前述した通常学級に在籍する軽度発達障害児に対する支援法は、ぜひ積極的に特支担当者が関わっていくべきだと考えます。 話は変わりますが、知的障害特別支援学級(以下(知))や、情緒障害学級(情)は、本来障害を持つお子さん一人一人のニーズにあった教育が行われれる場所であるはずです。以前は(知)が多かったため人数も多く、生活単元学習の中で生活に即した学習や、ゲームや生活場面の再現などで楽しみながら、自然と自立に向けた学習や自立活動を行うことが可能でした。 しかし昨今、障碍の多様化や広汎性発達障害児に対する支援の重要性が見直されてきたため、このような学習形態が取りづらくなっていることは事実です。 ただ学習支援がプリント学習等で可能であれば、本来、軽度発達障害児は通常学級でも十分な配慮の上で学習を進めることになるかと思いますが。 (情)では認知に障碍があったり、対人関係のスキルが育っていなかったりという面をフォローするために、カリキュラムを組んでいくべきだと私は考えます。ソーシャルスキルトレーニングやロールプレイング、または少人数のゲームから始めて班活動など、できるだけ将来の就労に向けて身につけるべき力を、小学校のうちから意識させていく必要があると考えます。勉強ができるだけでは社会では働けません。最終目標は「社会的自立」です。それとともに最近は成人後の余暇の過ごし方が問題になっています。(情)では、自分なりに楽しめる趣味が持てないだろうかという点についてまで、個々に応じて支援しています。 生活全般について個別指導計画・個別の教育支援計画等に盛り込んでいく必要があります。 教員に求められる支援や周囲からの期待は、ますます大きなものになっていくと思います。どうか、目の前のお子さんの成長を少しでも支援していけるように、そしてそれが学童期のみならず、将来の自立へつながるように考えていきたいですね。 良い勉強の機会を与えてくださってありがとうございました。
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新学習指導要領について、大切な点が抜けていたので補足させてください(しつこくて済みません…汗) 算数においては、近年「算数的活動」という言葉が遣われるようになってきています。質問者様の意図するものに近いのではないかと思い、文科省サイトのQ&Aから抜粋しておきます。よかったら参考にされてください。 (以下抜粋) 「算数的活動とは,児童が目的意識をもって主体的に取り組む算数にかかわりのある様々な活動を意味しています。 ここでいう「目的意識をもって主体的に取り組む」とは,新たな性質や考え方を見いだそうとしたり,具体的な課題を解決しようとしたりすることです。算数的活動を通して,数量や図形の意味を実感をもってとらえたり,思考力,判断力,表現力等を高めたりできるようにするとともに,算数を学ぶことの楽しさや意義を実感できるようにするためには,児童が目的意識をもって主体的に取り組む活動となるように指導する必要があります。その意味で,例えば,教師の説明を一方的に聞くだけの学習や,単なる計算練習を行うだけの学習は,算数的活動には含まれません。 算数的活動は,様々な活動が含まれ得るものであり,作業的・体験的な活動など身体を使ったり,具体物を用いたりする活動を主とするものが挙げられることが多いですが,そうした活動に限られるものではありません。算数に関する課題について考えたり,算数の知識をもとに発展的・応用的に考えたりする活動や,考えたことなどを表現したり,説明したりする活動は,具体物などを用いた活動でない場合であっても算数的活動に含まれます。」(抜粋終わり) 体験的活動のみならず、いろいろな活動が含まれていることに注目していただけたらと思います。これらは先ほど挙げた解説にも詳しく書かれています。
補足
迅速且つ、大変詳しいお話ありがとうございます。 新学習指導要領解説は既に、手にしており現在熟読している段階です。huhka様からのご指摘頂いた箇所を、再度確認したいと思います。 確かに、私が考えている部分は授業の導入部分で発揮されるべき内容だと思います。しかしなぜ、算数科において金銭の使用の有効性について質問したかというと、本来の目的?は特別支援教育(学校・学級等)の視点を通常学級に活かせないかと思ったからです。 特別支援の指導法は、本当にワンクッションおいているものが多く、通常学級において出来る子ども達(学力的にも上)には退屈な内容になると思いますが、様々な指導法を用いることでボーダーラインの子や、支援を要する子(軽度発達障害等)…しいてはクラス皆に「分かる授業・楽しい授業」になるのではないかと思います。 教室環境や座席、習熟度別指導等の面での配慮は既にどの学校でも行われていると思いますが、指導法に目を向けて行くことは、これからは本当に大切になっていくと思います。 現在、支援学級の方に週1回お邪魔して子ども達の学習を援助していますが、個別に応じたプリント学習がほとんどになってしまい(進度の差がもちろんあるため)、全員に発する指導法(支援教育の視点を踏まえ)で何があるのか…考えていますがなかなか良い指導法が思いつきません。 現場に出て、子ども達がぶつかる困難に直面した時にこそ様々な指導法が思いつく?と思うのですが…考えてみたいと強く思いました。 huhka様は、特別支援教育の指導法が通常学級にも活かせると思いますか?
新学習指導要領については、詳しくは文科省サイトの「学習指導要領解説」をご覧ください。指導要領の本文には簡潔にしか書かれていませんので、具体的な指導計画や指導案を立てる際の柱としてはこの「解説」を参照することが大切になってきます。(リンク先参照) 算数や数学は、まず具体物を用いての学習から始まります。さらにそこからおはじきなどの半具体物へと進み、すべてを「数字」という同じもので表せることに気づくのです。高学年になるにつれて数字を操作することで、求めたい答えをわざわざ本物を使わずとも抽象的論理的思考のみで出すことができるようになります。 小学校の段階では、特に新学習指導要領では「算数を創造的、発展的、日常的なものに。そして感動のあるものに」という主張がされています。ですから質問者様のおっしゃるように、子どもにとって身近な教材を取り上げる、算数で学んだことを日常生活に還元していくことは大切です。 しかし同時に問題を解決したり判断したり推論したりする過程において、見通しをもち筋道を立てて考えたり表現したりする力を高めていくことも重要なねらいとしています。 つまり実体験で終わらせるのではなく、「筋道を立てて考える力=論理的思考力」を高め、それを他教科でも生かせるだけの力を身につけさせたいという願いもあるのです。 授業の導入で模型のお金を用いる、提示の例題で金額を含んだ問題文を取り上げるということは、実際の教育現場では当然のように行われています。しかし、問題解決の場面になれば具体物からいったん離れ、純粋に論理的思考で説明ができるようにしていきます。なぜならばそうしないとその考え方が普遍性を持たないからです。 お金の問題でできた考え方を、今度は他の問題でも使えるようにしていこう。それが自然な算数の授業の進め方です。 そして実際の生活場面で自分が困った場合、算数で習ったあの考え方を応用してみよう、となったときが本当の意味での「生きて使える算数」になるのだと思います。 通常学級で実物のお金をあまり操作しないのは、児童が十分にふだんの生活の中で金銭に対する経験があり、言葉による刺激のみで想起が容易だからです。「この消しゴム200円だったんだよ」と言えば、「高いな~」や「○○の店だといくらだったよ」「他なら二個買えるのに」などと、多くの児童から反応が返ってきます。そして児童はノートなどに自分で描いたお金の絵などで、どう解いていったらいいかの説明を書いていくことができます。 しかし特別支援の場ではそのような反応が期待できないことが多いため、本物の具体物である「実物のお金」を使うのです。本物を扱うことに慣れ、実際に使う機会を多くし、いずれは自分一人で上手に金銭の管理ができるようにしていくのが目標なのです。 なお、特別支援学校や特支学級では教科のうちの「算数」もしくは「生活(今現場を離れているので調べきれませんでしたが、通常は生活単元学習と言っていました)」で扱います。 質問者様が子どもたちをぐっと引きつけたいと考えていらっしゃる箇所は、いわゆる授業の導入部分です。ここでどれだけ子どもたちが乗ってくるか。工夫のしどころだと思いますので、いろいろとたくさんのアイディアで楽しい授業を実践していってください。手作り教材等を生かすのは、ここだと思います。 そして最後のまとめでまた取り上げることで、「ああ、僕たちの考えた算数の決まりはいつでも使えるんだね」と気づいたとき、子どもたちの目は本当に輝きます。 これは私見ですが、算数の醍醐味は「自分たちで決まりや法則性を見つけ、それが普遍性を持つことに気づく」ことではないでしょうか。 現場に出る前にこれだけ深く考えてらっしゃる質問者様ですので、とてもよい先生になれることと思います。どうか頑張ってくださいね。
特別支援関係の仕事をしています。中学(数)の二免も持っています。 私が教育学部で学習した時代には「お金というものはあまりに生活に密着しすぎているため、抽象的な数概念を形成する際に他のイメージがつきやすく、かえって数というものに先入観や固定観念を与えがちである。よってまず数に対する概念がある程度形成されてから、大きな数など具体物を使わない抽象的な操作では難しいものについては、硬貨や紙幣を使用するとよい」と習った記憶があります。 ですから、小学校一年生の導入ではお金を使わないことが殆どです。しかしその後は、特に低学年では使われることも多いです。算数セットの中におもちゃの硬貨も入っていますし、教師の提示用の硬貨や紙幣教材は大抵の学校で用意されています。 特別支援学級等ではお子さんの能力にも依りますが、かなり重度のお子さんで数の抽象的概念が形成されていなくても、ふだんの買い物の経験があったり、自分がどうしても食べたいお菓子を人数分分けたいというときには、非常に意欲的に計算に取り組みます。 しかしこの場合は、数というものを理解しているわけではなく、「お金の操作の作業」をしていることになります。ここからさらに例えば10円の10と10個の10は同じ「10」というものである、或いは数式で表す、と理解させるのはとても困難です。 ただ、最終的な目標を「数概念の形成」に置くのか「生活者としての自立つまりお金を管理し、使いこなせること」に置くのかで、特別支援としての算数の位置づけは変わってきますので、一概に通常学級と同じように扱うことはできないことをご理解ください。 実際には、お金を扱うと通常学級のお子さん方でも理解しやすいようです。特にノートなどに十円玉や百円玉の絵を描いて説明すると、高学年で個別指導の必要なお子さんでもすんなりわかってくれることがあります。 このように意欲的に教材を開発してこうという方が、これから教壇に立たれるというのはとても心強いです。陰ながら応援させてくださいね。 (註)特別支援の場で本物のお金を使うのは、例えば買い物学習やバザー等です。しかしこの場合は当然、複数の担任や保護者の監督の元、かなり厳重に取り扱います。 通常学級の場で本物のお金を取り扱う場合は、それだけの大人の目が届くかが心配されます。提示する程度なら構わないでしょうが、個々人での操作は難しいのではないでしょうか。ご参考までに。(手作り教材の出番ですね^^。やり出すとはまりますよ~)
補足
大変貴重なご意見ありがとうございます。 通常学級で、現在採用されている教科書は6社ありますが、啓林館が1年生の発展学習等において、買い物ごっこと称した学習があり、教科書にお金の絵が記載されています。「次のうち200円で返るものは?」と言った問いもあります。生活に関連していてとても面白い学習だと思いましたが、huhka様がおっしゃるように最終目標をどこに置くかで、方向性が変わることを念頭に置く必要があると感じました。 特別支援学校等で扱うお金の学習(お金は、本物ではなく手作り教材)は、実務という単元になるのですか?(無知ですみません。) 小学校の新学習指導要領には、「進んで生活に生かそうとする」とだけ記載されており、金銭の学習内容は書かれていませんが、やはりそれは金銭に対する価値だったり、使用の制限の難しさだったりがあるために細かく書かれていないのでしょうか。 huhka様は、どのようにお考えですか。 お忙しい中だとは思いますが、お返事よろしくお願い致します。
- yukiusa_0110
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学習塾講師です。 特別支援学校でお金を結びつけていくのは、社会適合能力支援の一環として行われるようですので、少し毛色が違うかもしれませんね。 ただ、発想としてこういったところから学んでいく姿勢は非常に大切です。現に教授技術や教具を科学的に分析する教育工学という学問領域では、「実物に敵う教具なし」と言われています。そう言った意味でもお金を使った教育というのは社会性を育むという点からも理に適っているのですが、懸念されている通り「現金を扱うことは教育現場とはそぐわない」という考え方も根強く、実際には難しいと思います。実際の授業に組み込むとすれば、やはりそれに近い物を用いてロールプレイングしてみる等の疑似体験をする等となってしまうでしょう。 私はそういった規制を受けない現場で働いていますので、現金(まぁ、高額紙幣を使わないとかは心得ていますが)や時に他国の紙幣を利用して公民の授業を行っていますが、当然理論で終始してしまうより効果的ですし、子どもも記憶として残っていることが多いですね。なにより楽しそうです。 こういった試みを実際に勤務する前に色々思案して、書きとめておいて練り直していくとより良い教授技術を獲得していけると思います。頑張ってください。
お礼
回答ありがとうございます。 「実物に敵う教具なし」という言葉は初めて聞きました。 現場での教師は、主に採用されている教科書を元に指導していますが、生活に結びつけた教具開発をどんどんして行かなければいけないと強く思っています。 ご意見参考にさせて頂きます。
- bullfrog
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お金だと、分数や小数の時に困るんじゃないかと思いますが、どうでしょうか?
お礼
回答ありがとうございます。 場面を日常生活に設定するので、小数や分数の買い物はしません。 十進法の原理や位取りを理解するための教材として扱うつもりです。 分数は10進法の原理が適用出来ないと考えます。
お礼
お答え本当にありがとうございました。 「特支での学習の良さを通常学級でも生かせないか」という点についてですか、指導法や教具に焦点を当てて私は考えています。遊びやゲームを取り入れる」「料理を作る」「すごろく作りなどをする」「おもちゃ作りをする」「バザーの品物を作る」「○○に行こう」「買い物学習」…等は、huhka様がおっしゃるように低学年で行われていることだと私も考えます。 従来の指導法(教科書等)のほかに、ワンクッション置く指導法が特別支援にはあると思います。 私は、来年から現場に立ちます。まだまだ勉強不足の身で子ども達に楽しい学びを提供できるか分かりませんが、常に探究心を忘れず頑張っていきます。 勉強になりました。本当にありがとうございます。