かなりの難問だと感じ、知り合いの医師に尋ねてみました。
前骨間神経麻痺は、絞扼性神経麻痺と言って、正中神経の運動神経部分が、何らかの原因によって圧迫されたり捻れたり、あるいは直接断裂したり、感染したりして発生する神経麻痺です。
現在でも正確な発症原因や確定診断の方法等は解明されていません。
その発生原因となる部位は、肘関節付近であると言われており、知覚障害は少なく運動障害が主体となる病態と言われます。
つまり、しびれや痛みの発生はむしろ少なく、運動麻痺が主体の病態と言うことです。
発生原因となる部位が肘関節付近と言われる関係で、頚部捻挫で前骨間筋麻痺になると言うことは、あまり予想できないと思います。
肘や腕を強打した事実があるのでしょうか?
今までは、神経の癒着や自己免疫、感染、神経の損傷や炎症・血行障害によるもの等、さまざまな原因が上げられるようになりましたが、詳細な発生原因は確定されていないのが実情だそうです。
怪我をされたのが頚だけと言うことであれば、元々事故前から身体に前骨間神経麻痺の要因があり、そこにむち打ちによって発生する神経症状が影響を与えて、麻痺が誘発されたと仮定できるなら、事故との因果関係があると診断される可能性はあると思います。
正中神経や橈骨神経・尺骨神経等は、大元をたどると頚から出ている腕神経叢から肩関節付近を通り、上肢へ通じています。
つまり、腕の神経群の大元は頚から伸びているのです。
症状の存在やその程度を証明する方法としては、高感度MRIや電気生理学的検査(筋電図や神経伝導速度検査等)になると思いますが、検査で異常があったと言っても因果関係を証明することは困難と思います。
事故前には、こうした神経麻痺がなかったこと、事故時に頚神経に炎症が発生したこと(神経学的異常所見があったこと)、親指が曲がらない等の運動麻痺状態が、受傷からしばらくして発生したこと等を後遺障害診断書に記載してもらって、等級申請をあげてみると良いと思います。
絞扼性神経麻痺とは、締め付けられたり圧迫された状態が長時間継続することで発生する神経麻痺を言うので、事故直後ではなく、事故から少し時間をおいて麻痺が生じると言う形態が一般的です。
そういう意味でも事故から麻痺発生までの症状の推移はかなり重要です。
受傷から麻痺発生までの身体状況の時間的推移を詳しく書き留めておこくとをおすすめします。
肘付近の直接損傷がない場合は、元々の素因があって、事故が引き金になったと認定されることもあり得ると思います。
また、この神経麻痺は、あくまでも肘関節付近が発生原因と考えられている関係で、因果関係の証明がなされていないとして否定される危険性もあります。
かなり難しい問題だと思います。