- 締切済み
妊婦健診でHTLV-I(ATL)抗体検査陽性と診断された場合の母乳育児について教えて下さい
現在30週目の初産妊婦です。 先日の血液検査(スクリーニング検査)で、 HTLV-I抗体検査陽性 と判定されました。 現在は貧血等の症状はありません。 医師の説明によると、 出産までは何も心配しなくていいそうですが、 母乳は一度冷凍してから与えるか、 人口母乳にするか、どちらかにしなくてはいけないとのことでした。 悩んでいるのは、冷凍母乳を与えるか否かについてです…。 冷凍することでウィルスが90%~死滅してくれるそうですが 100%というわけにはいかないようです。 また、すでにお腹の中で垂直感染している可能性もあるそうです。 ごく希ですが、出産の際に産道で母体から感染するという可能性も 否定できないそうです。 主人と話し合って、後悔のない母乳育児方法を選択したいと 思うのですが、情報が少な過ぎて、判断しかねている状況です。 どなたか、文献や情報をおしりの方、よろしくお願いいたします。。。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
みんなの回答
獣医師でウイルスに専門知識を有します。 たまたま私が専門的に調査・研究をしているウイルスがHTLV-1とほとんど同じウイルスで、病気としてもATLとよく似ています。なので自分の論文を書く時に文献を引用したりする必要から、ATLについても多少勉強しています。 以前、同趣旨の質問があり、そちらにも回答していますので、とりあえずそちらを見て頂けると幸いです。 http://okwave.jp/qa3771987.html この回答中に、長崎大学や鹿児島大学で長期に渡って実施された調査の成績が出ています。 その概要を簡単に書くと、「母子感染率は授乳期間に依存する」ということです。つまり授乳期間が長いほど感染率が高くなる、ということです。 https://www.iyaku-j.com/MDJOURNA/VIRUS/doc/2007n1/030.htm この文献の全文は上記リンクから購入できます。500円ちょっとですし、専門知識がない方でも理解できる内容ですので、読んでみても損はないと思います。 この文献中でまとめられているデータでは、授乳期間と母子感染率は以下のとおり報告されています。 調査区 感染率 ----------------------------------------- 人工栄養区 2.7% 短期母乳区(6ヶ月未満) 9.8% 長期母乳区(6ヶ月以上) 22.4% ----------------------------------------- 鹿児島大学では短期母乳区を3ヶ月として、その母子感染率が1%であると報告していました。つまり3ヶ月母乳を与えた調査区の感染率が、人工栄養の感染率より低かった、という数字で(ただし有意な差ではない)、理屈で考えても不思議なデータです。 これは素直に鹿児島大学の調査ではn(調査数)が少なかったため、"たまたま出てしまった数字"だったのだろうと考えるのが自然でしょう。上記文献でもそのように考察しています。 ですから、完全人工哺育での感染率が約3%というのは両大学で概ね一致しているわけですから、この3%をボトムとして後は「母乳を授乳する期間が長くなるほど感染率が高くなっていく」と理解すれば良いと思います。ずっと母乳を授乳し続けると、20%ちょっとまで感染率が上がる、ということです。 次に凍結母乳についてです。 このHTLVというウイルスは少し変わっていて、正確に言うと母乳中にも血中にも「ウイルス粒子」はほとんど出現せず、感染したリンパ球の遺伝子にウイルス遺伝子が組み込まれた状態を維持しています。 なので、「凍結」というのは、実はHTLV-1のウイルス粒子を殺しているのではなく、HTLV-1が感染したリンパ球を殺しているわけです。母乳中にも多数のリンパ球が含まれていて、それが感染源となるわけですから。 なので「凍結」が有効とされているわけです。"ウイルス粒子"が相手であれば、凍結融解した程度でウイルスが死ぬわけがありませんからね。リンパ球が相手だから有効なわけです。 ただ、全てのリンパ球が1回の凍結融解で破壊されるとは限らないのも確かです。それが"100%ではない"という話になっているのでしょう。 ちょうど私の専門分野でも、「凍結母乳では完全に母子感染を阻止できないのでは」という話になっていて、加温処理を推奨する事例が増えています。加温処理というのは56℃で30分の熱をかけるのですが、こちらの方が"確実に乳汁中の細胞を破壊できる"のは確かです。 でも、まだ信頼性が高いデータは報告されていませんし、データを出したところで、そもそも「凍結母乳による感染率」自体が非常に低いはずですから、加温処理にしたところで有意な差などはなかなか出ないと予想していますが・・・ 「完全人工哺育での感染率が3%」ということは、母乳感染以外の感染経路があることを意味しています。 その感染経路についてはまだ判っていないことが多いのですが、現在のところは胎盤感染はどうもなさそうだという話になっているようです。唾液感染も否定的です。 残るは出産時の産道感染なのですが、これが有力視されているようです。理屈で考えてもこれが一番ありそうですし。 従って、計画的帝王切開を行い、かつ人工栄養で育てれば母子感染はおそらくほぼ100%阻止することができそうだ、という推測ができます。 ・・まあ、通常分娩~人工栄養でも感染率は3%なわけですから、その3%のリスクを回避するために帝王切開までやるか?ということについては、個人的にはそこまでやる必要があるかなぁ・・と思いますが。 というわけで、帝王切開までするのか、哺育は人工栄養でやるのか、それともある程度の期間は母乳で育てて早期に粉ミルクに切り替えるのか、等々、"リスク"と相談しながら決めれば良いのではないでしょうか。