サス屋です(操縦安定性の研究で食ってる者です)。
>・・・リジッドアクスルへスタビライザーを取り付けた場合、効果はあるのでしょうか。
機構学上の説明は長くなるのでハショりますが、結論から申し上げますと『効果があります』『スタビライザとサス形式は関係ありません』となります。
リジッドの車軸は左右のタイヤを接続しているだけで、他に機能はありません。
一方スタビライザは車体の左右方向の傾き(この動きをローリング、或いは単にロールと言います)を減らす装置で、言い方を変えると、左右輪が上下逆(『左右逆相』といいます)に動いた場合にのみ作動する『ばね』です。左右のタイヤを連結している様に見えるのは、ただ『見えるだけ』で、車体の傾きがサス形式とは関係無い様に、車体の傾きに効くスタビライザもサス形式とは関係ありません。
>ちなみにクルマは旧型タント(ターボ)でフロントは標準装備でリヤにスタビライザーは装備されていませんが
ここからはちょっと難しい話になりますが・・・
クルマのロールに対する抵抗力(ロール剛性といいます)は、
1)シャシばね(いわゆるサスのばね)の固さ
2)スタビライザのばねの固さ
3)車体の重心点高さ
4)ロールセンタ高さ
・・・で決まります。4番目のロールセンタ高さとは何ぞや?という話は、これも幾何学や機構学という学問に関する話でちょっと説明が難しいのでハショりますが、要するにこのロールセンタ高さという数値が車体の傾き量を決める要素になっている、ということです。
さて、スタビライザですが、これは上述しましたように左右輪が逆相に動いた時だけ働くばねで、言い方を変えると左右輪が逆相に動く場合には『見かけ上』ばねが固くなる、ということを意味しています。
ばねが固くなれば当然乗心地が悪くなりますし、操縦性上も固いばねはよいことがありません。(←とにかくばねを固くさえすれば操縦性が向上すると思われている方が多いですが、ソレは大きな『間違い』です。ばねを固くして操縦性が悪化するケースも多いです。)
故にスタビライザはなるべく使いたくない、というのがサスペンション設計者のホンネですが、リジッドアクスルでは上述しましたロールセンタ高さの数値が独立懸架より大きくなり、独立懸架と同じ固さのばねを使ってもロール剛性が高くなります。
御質問のタントターボにどういう乗心地・操縦安定性が与えられているか判りませんが、スタビが無くても必要なロール剛性が得られる、或いはスタビ装置による乗心地や操縦性の悪化が著しい、とダイハツさんの開発部門が判断した結果ではないかと思われます。
お礼
非常にわかり易く、また詳しくご説明いただきましてありがとうございました。