帝王切開は下腹部で行って基本的に腹膜外に位置する子宮を開いて赤ん坊を取り上げる処置ですので直接腸を触ることはありません。しかしながら腸を包んでいる腹膜は外界に現れますし作業の都合で多少はキズがつきます。帝王切開に伴う腸管の癒着、その後のイレウスはたぶんにこれが原因と考えられています。
『腸が癒着する』とはどういうことかを考える前に、腸がいつもどのように動いているかを理解しなければなりません。腸は小腸・大腸あわせて10m弱ありますがこれが整然と腹部に納められています。結構狭い空間に押し込められている割に『蠕動』といって動くことができるのは数箇所の固定部分を除きほとんどがフリーな状態にされているのと摩擦部分にあたる箇所には腸間膜やら腹膜といった緩衝材が配置されているからです。この緩衝材は表面がゼラチンコーティングされている潤滑面だと考えるとわかりやすいです。たとえるならば和服での着物と長じゅばんの関係のようです。着物をピシっと着込んでいても間にあるじゅばんのおかげでズレるゆとりが生まれ着崩れすることなく着物が動くことができる…そんなイメージです。
さて手術をして、あるいは疾患の都合(癌の浸潤など)で潤滑面である腹膜や腸間膜が傷つきますと、キズの部分からゼラチン面が失われさらにキズを修復するために細胞成分が膜の内面に増生したりします。また膜そのものが無くなれば腸同士が触れ合うこととなり表面が傷つき同じように細胞成分が内空に増生することとなります。
こうして増生した細胞成分や失われた潤滑能によって腸の自由な動きが障害されたとき『癒着』という病態が起こります。症状については「イレウス」という単語でお調べください(割愛します)。
ですからおなかを開ける手術では大なり小なり術後の腸管の癒着は起こります。またおなかの中の操作が複雑なほど腹膜・腸間膜や腸管自体をいためる機会も増えますので症状は強くなります。さらに下腹部(腹膜外)の手術よりも腹部(上腹部)の消化器の手術のほうがより一層顕著に障害を来たすのは理解できると思います。
お礼
ありがとうございます。癒着の事知れば知るほど怖くなります。将来自分に腸閉塞や捻転が起こったらどうしようって思ってしまいます。