結果として、#1の回答者さまのご回答を敷衍することになりますが…。
保健所は、地域住民の健康の保持及び増進を目的とする組織で(地域保健法1条)、都道府県や政令指定都市、中核市などが設置することとされています(同法5条1項)。
その仕事は、食品衛生の取り締まりや、衛生思想の普及、病院の開設許可など「医事衛生」という専門分野の行政を担当することです。
一方、県民局は、都道府県知事が所管する仕事のうち、主として県民生活にかかわる仕事を分掌させるために、知事が作った組織ということになります。
私が住んでいる北海道(北海道庁)では、県民局に相当する組織として「環境生活部」が置かれ、 環境保全、循環型社会の推進、防犯・交通安全思想の普及、道民文化の振興、男女平等参画、そして北海道特有の仕事として少数民族であるアイヌの方々に対する各種施策を担当しています。
産業振興でもない、建設でもない、道民の生活一般に関することということですね。
北海道庁では、「食品衛生課」とか「薬務課」というのは、環境生活部(県民局)ではなく保健福祉部が所管しているのですが、県によっては県民局が所管していることもあると思います。
そこで、質問者さまの疑問は、別に保健所があるのに、県の県民局にも食品衛生を担当するセクションがあったり、医事薬務を担当するセクションがあったりすることから、両者は同じ組織ではないか、というところにあるのではないですか?
もしそうであれば、お答えは、こういうことになります。
保健所は、原則として「現場官庁」なのですよ。立入検査とか、日常の細かい許認可とか、県の出先機関として、そういうことを処理するための組織なのです。仕事の内容が「医事衛生」という専門分野なので、とくに法律で組織の名称を決めて、わかりやすくしたものでしょう。
一方、県民局で「医事衛生」を担当するセクションは、原則として「企画官庁」なのです。現場官庁である保健所から集めた情報(県民ニーズ)に基づいて県の医事衛生に関する企画立案をしたり、国との連絡調整に当たったり、財政当局と折衝して医事衛生に関する予算を確保したり…。
ただ、全県や全国にまたがる食中毒事件の陣頭指揮や、重大事案の立入検査、重要な許認可については(保健所には書類を経由させるだけで)県民局が直接に実施するということもあるので、いよいよ両者の「役割分担」は不透明になりそうですが…。
「専門機関」と「その上に立つヘッド・クオーターとしての機関」
「現場官庁」と「企画官庁」
そんなふうにお考えになると、両者の関係はわかりやすいのではないでしょうか。