既に他の回答者諸氏が的確な回答を寄せられておりますので、余り言う事も無いのですが、戦車は必要です。
ヨーロッパ大陸で過去に行われた主要な戦車戦で戦闘区域となった地域の面積と、日本の平均的な平野部の面積にはさしたる違いが無い事を、以前に松村劭氏が著書の中で論述しておりましたが、日本国土の異質性を理由とした戦車不要論は精緻な軍事理論の考察の下に考えられた論では無いと言えるでしょう。ドイツやロシアにも障害になる森や都市は存在しますし、重量55トンのレオパルドIIが通れば、ドイツのアウトバーンだってボロボロになってしまいます。しかし、ドイツ軍もロシア軍も戦車の運用は続けています。何故ならば、戦車とは機動力、火力、生残性の三要素が、最も高度にバランスされた兵器であり、これに変わる別種の兵器は現在の所存在しないからです。戦闘に勝利する秘訣は、いつの時代でも敵の虚を突き、主導権を握る事です。それには敵の最も弱い部分に素早く兵力を集中し、打撃を与える事が第一となりますが、その先鋒を務め得る陸上兵器は戦車以外にありません。直接敵に肉薄しての交戦無くして、戦闘の決着など無いのです。歩兵は地形を盾に出来ますし、戦線維持には絶対必要ですが、いかんせん機動力が低すぎます。航空機は機動力があるものの、継戦時間が短すぎて土地を確保する事が出来ませんので、真の意味で陸上兵力と共同作戦は出来ません。
結局戦車を持たぬ陸軍は戦線が固定化して、敵軍の運動に翻弄される事となります。つまり、敵に主導権を握られる、と言う事です。攻撃側は、攻撃発起点を自由に選択出来ますが、防御側はそうは行きません。ならば、結局防御側も動き回るしかありませんし、敵はこちらの国土の事情を斟酌して攻撃地点を決めてくれる訳でもありません。太平洋戦争初期のマレー半島攻略作戦で、日本軍は戦車での夜襲による戦線突破を試み、見事に成功させています。英軍側では、街道一本しかないジャングルの防衛ラインを日本軍が戦車で突破するとは考えていませんでしたし、それが可能であるとも考えていませんでした。しかし、日本軍はそれを成功させたのです。ドイツ軍の場合も、戦車での踏破は不可能と言われたアルデンヌの森を突破してフランスに勝利しています。このような前例を見るだけでも、地形云々によって戦車全廃を唱える事が妥当性を欠く事が分かると思います。1960年代に対戦車ミサイルが登場した頃にも戦車不要論が囁かれた事がありますが、現在でも戦車が地上戦の王者であるのは以上のような理由からです。
お礼
具体的な事例ありがとうございます。機動防御のために必要ということでしょうか。 全体的に戦車必要論が多いですが、細かい部分は百家争鳴のようですね・・。