うつ病で休職中の者です。
>そもそも鬱病が薬で治るというのがピンときません。
うつ病は精神・心の病気です。では、心がどこにあるかと言えば脳です。
そして、精神疾患一般がなんらかの形で脳になんらかの異常を来している病気と考えられます。
現在、(典型的な)うつ病はセロトニン不足仮説(モノアミン仮説)というので説明されています。
セロトニンというのは脳の神経伝達物質の一つです。
セロトニン神経系という脳内の神経細胞が「自律的」に一定のパルスを出しています。このパルスは、
朝起きると同時に活発になり、就寝時には落ち着きます。そのような形で人間の覚醒状態を制御して
います。(時計の振り子だと思ってください。)
セロトニンが不足すると、このパルスの伝達が不充分になり、脳の活動が鈍ります。
朝の目覚めが悪くなり、倦怠感に感じます。(時計の振り子の振りが悪くなっていると考えてください。)
これに対して薬を投与する事で、セロトニンの不足状態を解消して、パルスの伝達をスムースにする
のが抗うつ剤による治療です。
現在の抗うつ剤では直接セロトニンの量を増やす事はできません。セロトニンが代謝されて使用できる
量が減らない様に、再取込みを阻害して、使用できるセロトニンの量を局所的に増えたようにするのが
抗うつ剤の作用です。
因みに、抗うつ剤には、以下のようなものがあります。
○MAO阻害剤
セロトニンを含めた神経伝達物質をモノアミンといいます。これをモノアミン酸化酵素は酸化する
事で、モノアミン神経伝達物質を減少させます。
この酵素働きを阻害することによってうつ状態を改善します。
副作用により扱いにくく、現在はほとんど使われません。
○三環系抗うつ剤
ベンゼン環が3つある事からこの名前があります。
セロトニン、ノルアドレナリンの再取込みを阻害する事で、酸化されてしまうこれらの神経伝達
物質の量を局所的に増やします。
ただし、選択性が他の抗うつ剤より低く(その分効果が大きい)、副作用が強くでるので、身体
的困難を伴います。
○四環系抗うつ剤
ベンゼン環が4つある事からこの名前があります。
三環系抗うつ薬よりも副作用が少なく、即効性の面でも優れています。
不安や焦慮を鎮める効果が高いということがあげられます。
○SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害剤)
選択的で強力にセロトニンの再取込みを阻害します。それにより酸化されてしまうセロトニンを
減らし、使用できるセロトニンの量を局所的に増やします。
また、三環系抗うつ剤、四環系抗うつ剤より副作用が少ない事も特徴です。
○SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害剤)
選択的で強力にセロトニンとノルアドレナリンの再取込みを阻害します。それにより酸化されて
しまうセロトニンとノルアドレナリンを減らし、使用できるセロトニンとノルアドレナリンの量を
局所的に増やします。
>どのくらいの期間がかかりましたか?
>効果はどのように実感できたのでしょうか?
わたしはSNRI(トレドミン)を処方されて、抑うつ感がなくなったのは一週間ぐらいです。
この薬は、第四世代の抗うつ剤といわれ、抑うつ状態を普通の状態より更に引き上げる効果が
あるそうです。この薬はSNRIですが、通常薬剤の治験は四段階あって、認可された以上、
三段階はクリアしてます。市販後の治験は四段階目ですが、治験データが少ないということは
ないと思います。
その後、睡眠障害がなおるのに一年以上、途中でSSRI(デプロメール)に薬を変えました。
わたしの場合、やる気はなかなかでてきません。別の薬を追加してもらっています。
最後に、薬が効かないという点について、私見を述べさせてください。
(典型的な)うつ病は前述の通り、セロトニン不足仮説が説明がつけられています。
しかし、うつ病的症状は、精神疾患全般に渡ってなにかしら現れます。
そういう意味では、うつ病は一つの病気というよりうつ症候群といった方があっているように思い
ます。そして、その原因もセロトニン仮説だけでなく様々だと思います。
一方で、精神科医の先生は、これらの病気を問診だけで判断します。もちろんそれぞれ特徴的な
症状がでているのではあれば、診断は簡単なのだと思います。
しかし、それが現れてないない場合は、判断を誤るかも知れません。
(例:仮面うつ病:本当はうつ病だが、うつ病あるいはうつ状態が、身体の症状で隠されるもの)
つまり、効果のない薬を処方され続ける事もあると思います。
その点では、自分の症状の申告は正確で厳密にする事も必要です。
(わたしは日常生活で記録を取って、気になる症状があると書き留めています。それを診察の時に
先生に提示しています。)
それが、適切な治療や薬剤を引き出す糸口です。
医師は「治す手助け」をするだけですから、自らが「治す」事にできるだけの事をする必要があり
ます。
それから、セカンド・オピニオンも活用してみてください。わたしはしませんでしたが、多角的に
診断を受けて、本当の病気をはなにかを判断する事を必要だと思います。
お礼
非常に丁寧な回答ありがとうございます。 どのくらいの期間休職されているのですか? 1週間で効果を感じられたとは、ずいぶん早いですね。 薬は効くのがおそいとのことでしたので。 >>その点では、自分の症状の申告は正確で厳密にする事も必要です。 なるほど参考になります。