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食道裂孔ヘルニアの治療法
- 食道裂孔ヘルニアの治療法について、健康診断で診断された場合、薬物治療が一般的に行われます。
- しかし、薬物治療では炎症を抑えることはできますが、ヘルニアの原因に対しては効果がありません。
- 考えられる治療法としては、ウェイトトレーニングや外科手術が挙げられます。手術については入院期間・施術法・費用などの情報が必要です。
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これはなかなか難しい質問です。 食道裂孔ヘルニア(以下ヘルニア)は、それ自体が手術の適応になることが余りに少ないからです。 ヘルニアは、小児の場合先天奇形により、成人の場合は食道と胃の接合部を締め付ける靭帯の脆弱化及び進展をベースにして起こります。catecholamineさんは検診で指摘されたとのことですから、後者のケースであると思います。成人のヘルニアは、言わば加齢性変化であり、50歳を過ぎると特にその頻度が上がります。 このように年齢を経るにつれて誰の身にも起こりうる病気(いや、病気と言うよりは「状態」であると言った方が適切かもしれません)ですから、症状がない場合には特に治療を要しません。 ではヘルニアにより症状が出て困るのはどういう場合なのか?これはcatecholamineさんも診断を受けている逆流性食道炎を起こしている場合です。逆流性食道炎を起こすと典型的には胸焼け症状が出現します。治療の対象になるヘルニアのほぼ全例が、(1)典型的な逆流性食道炎を合併している(2)胸焼け症状はないが内視鏡で食道に炎症所見を有している(3)内視鏡的には食道に炎症がないが胸焼け等胃酸逆流を思わせる症状がある、の3つに集約されます。この3つの状態をまとめて胃食道逆流現象(以下GERD(ガード);gastro-esophageal reflux disease)等と呼んでいます。逆に言うと、このGERDがない場合、ヘルニアがあるだけでは(前述の通り)治療の対象になることは殆どないということです。 次に、症状がある場合にどういった治療が行われるかですが、いきなり手術しましょうと言う医者はまずいません。これもcatecholamineさんが今受けている内科的な薬物療法が第一選択です。胃酸を抑える薬が処方されているのではないでしょうか?これで症状や内視鏡所見の改善が得られれば、まずは治療成功とされています。ヘルニアそのものを治すのではなく、合併するGERDを治すことこそが、ヘルニア治療の第一目標と言えるわけです。 一般的な薬物療法で成功しなかった場合も、多くの医者は、あの手この手で内科的に治療を完結させようと頭を悩ませます。薬剤の量や種類を変えて長期投与にしてみたり、睡眠時に枕を高くしてみるよう指導してみたり、減量を指導してみたり・・・。ひょっとしたらcatecholamineさんは、腹圧を上げるようなことを控えるように指導されているかもしれませんね。こんなまどろっこしいこと考える前に手術でスパッと治したらえぇんちゃうんか?と思われるかもしれません。でも、これはなるべく手術を避けたいという医者の思いの表れなんです。手術で人間の体にメスを入れるということは、それだけでリスクを伴う作業です。麻酔をかけて体内に器具や外科医の手を加えることで、術中は勿論、術後にどんな合併症が待ち受けているかもしれません。外科手術というのは、いつもそうした緊張感の中でなされる治療です。ですから、ヘルニアのような良性疾患(癌など命に関わる病気を悪性とした場合の)に対する手術適応は、より慎重に判断せざるを得ないのです。 こうした背景から、ヘルニアに対して手術が行われるのは、(1)胃内容逆流による誤嚥がたびたび(高齢者、寝たきりの人に多い)(2)食道炎、食道潰瘍が内科的治療抵抗性(3)出血や狭窄を起こしていて内科的に治療困難(4)稀なタイプのヘルニアで、ヘルニアした胃が飛び出した孔に締め付けられて阻血を起こしそうな場合、の4つくらいです。 (1)(2)の場合は、ヘルニアした胃を腹腔内にずるずる引き戻し、更に食道も腹腔内に引きずり出してそのまま胃袋のなかにずぶずぶとめり込ませ、めり込ませた部分を胃ごと縫い合わせる(「Nissen手術」「Toupet手術」など)方法が中心です。最近では、がばっと腹を切らなくても、腹腔鏡手術によって、1週間程度の入院で出来る施設も増えているようです。(3)の場合は、問題となる病変部(ヘルニア部)を切除する方法がとられることもあります。(4)は命に関わりかねないので緊急を要しますが、稀であり、catecholamineさんの場合には当てはまらないと思います。また、これはヘルニアそのものの治療ではありませんが、最新の手術として、内視鏡を使って食道と胃の接合部を縫い付けて締め付けを強化させる「経内視鏡的噴門部縫縮術」という方法もあります。これは切る手術とは違いますので、3日もあれば退院可能です。費用に関してはどれも詳しく知りません。すいません。 しかし、ここまでの私の記載を読んで、catecholamineさんは、ご自身で手術を受けた方が良いと思われましたか?入院期間や費用の問題でしょうか?癌も有していない正常な胃袋や食道にこうして手を加えることが、果たして賢明な手段でしょうか?(3)(4)は特別な場合ですからともかくとして、多くのヘルニア手術は病巣を切り取る目的でなされるものではなく、どれもこれも症状を取る(胃酸の逆流を防止する)ことを目的としたものばかりです。現在のcatecholamineさんの病状は、薬で炎症やその症状は治まっており、ましてや命に関わるような状況ではありません。トレーニングを続けるために手術を受けるというのは、もう一度冷静になって考え直したほうが良いのではないかというのが私の意見。内服薬で症状が治まっており、その状況下でトレーニングも特に支障なく行えているのであれば、それはたいへん治療がうまくいっている状態であると考えて良いと思います。 もし、内服薬で普段は症状が治まっている、が、トレーニングで腹圧をかけると症状が悪化する。でもトレーニングはやめられない・・・というのであれば、それは主治医の先生とじっくり相談して下さい。主治医はきっとトレーニングを控えることを提案するでしょう。「病気を治すこととトレーニングを続けることとどっちが大切なんですか!!」なんて言って。でもcathecholamineさんにとって、トレーニングを控えることは生活の質を下げることになるわけですから、その点は(あなたの生活に占めるトレーニングの重要性を完全には理解していないであろう)主治医に対してしっかり主張すべきです。きちんと相談し、十分に納得して治療にあたって頂ければと思います。 (私の意見も参考にして頂ければ幸いでございます・・・)
お礼
大変詳しくかつ分りやすいご説明ありがとうございます。 懇切丁寧にお答えいただいて感激しております。 手術というものが安易に受けられるものではないということがよく分りました。 まずは食道炎をきっちり治してから、ヘルニアを悪化させないようなトレーニング法を自分なりに工夫してみようと思います。 大変ありがとうございました。