人工関節に限らず、骨をさわる手術は一般的に術野の大きさの割に出血量が多くなります。
その理由はNo.1さんが仰るように、骨からの出血は血管からの出血と違い、止血しにくいからです。血管からの出血であれば、電気メスで焼くか、大きい血管でも結紮すれば止血できます。しかし、骨から出てくる出血は骨髄からしみ出してくる出血なので、結紮することも焼いて止めることも出来ません。自然に止血するのを待つか、骨ロウという特殊な材料を骨髄に詰めて止血するしかないのです。
また、四肢の手術では、止血帯という大きな血圧計のようなもので、手術中に四肢の根本を締め付けて血流を止めながら手術する方法があります。これを使うと、手術中の出血はほとんどなくすことが出来、その間に出血しやすい骨髄面に人工関節を設置したり、出血しやすそうな部分をあらかじめ止血しておく事が出来、出血量を減らすことが出来ます。股関節手術ではこの止血帯が使用できませんので術中出血が多くなるのです。これが2つ目の理由です。もし、止血帯を使用しないと仮定すると、人工股関節手術よりも人工膝関節手術の方が出血量は多くなります(理由は骨髄の露出面積(骨の切除面積)が膝の方が大きいからです)。
もう一つの理由は、局所の骨の血流の違いです。骨盤、大腿骨はともに血流の豊富な骨として知られています。骨盤骨折や大腿骨骨折では出血多量になることもあります。人工股関節手術では大腿骨、骨盤ともに一部骨髄を露出させる必要がありますので、多部位に比べると露出骨髄の面積あたりの出血量は多くなります。
これらの理由により、他の手術に比べ、「人工股関節手術は出血量が多い手術である」という事になるのです。
お礼
とてもわかりやすい回答ありがとうございます。 とても参考になりました。