一応、戸籍を仕事にしておりますので、夫婦別姓のメリット・デメリットとひと括りにされても…量が多いのですが。
一応、両方の立場から思いつく限りを箇条書きにします。
どちらの側に汲みするか、もしくは方針が決まりましたら補足します。
夫婦別姓反対論
・夫婦別姓というのは、個の尊厳を主張する者たちと家名存続を求める者の呉越同舟である。今はたまたま同方向のベクトルだけが取り上げられているがそもそも、お互いに相容れない存在である。
・先進国は夫婦別姓だ、という論理を別姓論者はするが比較することが全くナンセンスである。ます、ヨーロッパ諸国の中で氏を先に読む国はハンガリーの他はほとんど無い。そのような状況下で欧米と同列に氏の問題を論じるのはおかしい。
・欧米には結合姓という便利な物がある。
・夫婦別姓の先進国といわれる、アメリカ、スウェーデンでは国民総背番号制が採用されている。日本のように戸籍により夫婦関係を判断するのではなく、コンピュータにより簡単に判別できる。
※ちなみに、国民総背番号制度は「全体主義につながる」として非常に反対の多い制度である。
・夫婦同姓はそもそもお上が定めたのではなく、明治にはいってから市井の住民からの要望の高まりによって実現したものである。夫婦別姓論者の使う「役人の押しつけ」という論法は通らない。
・夫婦別姓に対するアンケートは「対象者」「アンケート内容」が不明瞭な物が多い。資料として不適切である。
・アジア(中国・韓国)において夫婦別姓を採用している国は存在する。しかしこれは夫婦平等の賜ではなく実体は正反対である。儒教が影響する父兄主義の最たるものが東アジアの夫婦別姓である。
・東アジアの夫婦別姓は婚姻後も妻にはその家に帰属する財産や地位の継承を認めない、極めて男尊女卑色の強い制度である。
・夫婦別姓になると民法第760条に規定する「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」費用の分担責任が定かではなくなり取引の安全が失われる。
・現段階で共働きの若い夫婦には「婚姻届」の実質的効果は仲良く生活しているうちは「氏を同じくする」効果しか存在しない。これからますます女性の社会進出が進むのにもかかわらず夫婦別姓を導入すると「婚姻届」のレゾンデートル(存在意義)が失われてしまう。
・夫婦別姓先進国であるアメリカ、スウェーデンでは家庭崩壊(離婚、未婚の母)に苦しんでいる。同氏という絆を失った家族は非常に弱い。
夫婦同姓反対論
・民法第750条に規定する夫婦同氏は平等ではない(現実、女性の90%台が氏を変更している)。仮に男女半々になったとしてどちらか一方が氏変更の苦痛を被るのは変わらない。
・1985年に日本は「女子差別撤廃条約」という国際条約を批准しておりその中で「女子に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む)をとること」という規約がある。にほんは当然に遵守しなくてはならないし、そのためには民法第750条は障害となる。
・「ライフスタイルにおける自己決定権」が重要である。夫婦の氏に国家が介入するのは自己決定権の侵害であるし、幸福追求権に対する冒涜である。
・女性の社会進出が進むにつれ、職場に於ける女性の地位も向上した。婚姻前後で氏に相違が生じると業務に差し支えがある。
・現行戸籍制度は旧戸籍制度の名前を変えただけの生き霊である。実質は戦前とほとんど変わっていない。戸主が筆頭者になっただけである。戦後すぐは物資が不足していたため、紙(戸籍用紙)の節約のために中途半端な改正となったが、現在に於いてそれを理由には拒めない。
・婚姻により氏を変えることにより、様々な社会的手続きを必要とする。この現代に於いてこれは時代に逆行した行為であり不都合以外の何者でもない。
・現段階では女性が氏を変えることが多いが、これは婚姻という私的な行為を社会に広める行為でありプライバシー権の侵害である。
・離婚時には氏を変更した者が旧姓に復することとなる。そのような不自由を国民に強いるのは離婚権の侵害である。夫婦別姓であれば婚姻時も離婚時もそのような無駄な労力を使う必要は無くなる。
多分高校生には難しいと思います。
ですが、これにしてもまだ全部ではないです。問題は双方にもっとあります。
そもそも夫婦別姓というのは非常に奥が深いもので、それだけで何冊も本を書けてしまうくらいのものなのです。是非、図書館に行って法律書の「親族」や「戸籍」関連図書の中に夫婦別姓に関する物がありますので一度見てみてください。
お礼
す・・・すごいですね。法律にかかわることですもんね、やはり奥が深いんだ・・・。 高校生にはかなり難しいです(苦笑)私は今回やるディベートでは「夫婦別姓」に対して賛成側です。(反対側の意見も聞きたかったので、あえてどっち側につくと書き込みませんでした)とても参考になるご意見ありがとうございました。もしよかったら夫婦別姓賛成側の意見の中でどういうことを一番押すべきかアドバイスいただけませんでしょうか?