I.基本的な考え方
相場変動要因は各種あれど、その時代々で底流をなす根幹要因があると考えます。
この根幹要因は、時代の変遷とともに移ろうわけですが、通常は、前の根幹要因が、
フェーズアウトし、徐々に次の根幹要因が顕現化します。また、ある時は、
前の根幹要因を次の根幹要因が、さらに助長して変化を加速させることもあります。
II.日本株式市場の根幹要因
約13年3カ月に及ぶ下げ相場(途中8年間はボックス相場)の後、バブル経済における
負の遺産処理に、目処がたち始めたのを機に「外人投資家」が積極的な
投資展開をしていることと考えます。
III.世界の投資マネーの流れ
前記 II の根幹要因に、次なる根幹要因『素材・原油価格高騰・高止まり』が、
加わり、この要因が顕現化するにつれ、前の要因を助長・加速させていると考えます。
原油が年間10$上昇すると、石油輸入国から石油輸出国に、
約1,000~1,500億$の所得が移転します。この、いわゆる「オイル・マネー」は、
当初、$資産として保有され(中東諸国は自国通貨と$とが固定相場)、
米国債投資となり、資金がプールされます。昨年夏以降、FRBの利上げにも
かかわらず、いまだに、米10年国債が4.50%以下となっているのが、
その証左です。産油国は、自国の社会インフラの整備・設備投資等を積極化し、
自国産業の育成を行なうプロジェクトが目白押しですが、
急激に増加した所得は、米国債を中心とした$資産以外へ振り向け、
分散投資・資産収益の多様化に取り組まざるを得ない状況にあったと思えます。
8月以降、欧州系証券会社から大量の買い注文、いわゆるオイル・マネーの
日本株投資となって現れました。
IV.将来のインフレ・高金利
素材・原油の高騰は、先進諸国(含む中国)を中心とした世界経済の成長を
鈍化させ、やがては、インフレ・高金利へのトリガーを引く時期が
到来することは、否定できません。この、"さらに次なる"根幹要因が
顕現化するには、まだ時間がかかります。先進諸国で最初に顕現化する国は、
やはり、米国と考えます、この時が、外人投資家(含むオイル・マネー)が、
日本株投資のウエイトを引下げる、ターニング・ポイントです。
すなわち、米国でインフレ・高金利が示現すると、米国株は軟調、
米国債は利回りアップ、世界経済の拡大・成長の最も恩恵を受ける
日本株は低迷、為替相場は、金利差を反映し、ドル高基調の加速、
などが起こり、日本から外人投資家の投資マネーも流出する傾向を帯びます。
また、ドル高・円安基調の加速は、国内機関投資家の外債投資を加速させます。
V.まとめ
以上は、細かな相場変動要因を無視して、ざっくり株式市場を予測したものですが、
これらのことから、
(1) → 腰は強い(中長期)
(2)・(3) → 米国でインフレ・高金利が顕現化するまで
最後に、非常に興味あるご質問につられ、ついつい長文となってしまいました。
平にお許しあれ。
また、目先・短期のことをご質問だったかもしれません、
目先は、日経225=13,100~13,200円、TOPIX=1,340~1,345pt で調整入り
すると見てます。外人投資家は、$建日経225=120ptあたり(現在117pt)を
意識しているのではないでしょうか。「外人が売り方に回った or 外人が
日本株投資を一服させた」というニュース・観測・憶測だけで、
目先は崩れ易い環境です。ただ、国内勢の旺盛な買い需要・高水準な信用売り残高が、
下支えしますので、 調整というよりは、急落・急騰といった展開に
なるのでは、と予想しております。
お礼
私の愚問に対し、これほどまでに真剣に回答いただき、大変ありがたく思っております。 最近の米国長期債の利回り低下は疑問に思っていましたが、オイルマネーが要因の一つとお聞かせいただき、大変参考になりました。