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ワーグナーの作品で最高傑作はなんでしょうか?
最近になってワーグナーを聞き始めました。 どの作品も力強く、男性的で、とても個性の強いものと思いました。 ところで、ワーグナーの作品の中で最高傑作といわれているものがありますか? どの作品が人気が高いのでしょうか? また「トリスタンとイゾルデ」(バレンボイム指揮)のCDのライナーで、しきりにこの作品が新しい、画期的だ、及ぼした影響が大きいなどと書かれています。 具体的には、従来の音楽に比べてどこが新しいのでしょうか? ワグナーの作品は楽劇しか知りませんが、そのほかの作品もありますか? よろしくお願いします。
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ワーグナーの曲の中で「最高傑作は」と言われると、なかなか難しいところですが、「最大の作品」は「ニーベルンゲンの指輪」です。CD10枚ぐらいかかります。「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々黄昏」の四部作からなりますが、それぞれ個性が違い、ワーグナーのすべてが出ていると言っていいでしょう。「ラインの黄金」は明るくわかりやすいですし、「ワルキューレ」は劇的でロマンチックでもあり傑作と言われます。「ジークフリート」は総じて退屈と評されがちです。「神々の黄昏」は、深く暗く、内容的に大きく広くなっており、難解な部類に属します。 他に、最晩年の作品である「パルジファル」は、(特にクナッパーツブッシュなどの雄大な指揮で聴くと)あまりに巨大、深淵で、永遠の時の流れという感じがする非常に神秘的な曲であり、ある意味、ワーグナーが到達した最終点であり、最高傑作ということもできるでしょう。 その他、初期のワーグナーの楽劇(歌劇)は、比較的わかりやすく、ローエングリンなどお薦めですが、ワーグナーとして最高傑作とは言えないでしょう。また「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、ワーグナーとしては明るくわかりやすい雰囲気で、これもまたちょっと特殊な部類に入ります。 この二つは初心者向きとも言え、また人気が高いと思います。 「トリスタンとイゾルデ」は、冒頭の和音が「トリスタン和音」などと言われ、それが今までにない和音で、現代音楽への道を開いたとされています。当時の演奏家(オケ)が「こんな音楽はわからない、演奏できない」と練習を放棄し、初演が延び延びになってしまったという曰く付きのものです。 今では、実にいい響きと思えるのですが。 この曲は、CD4枚ぐらいでしょうか、ワーグナーの楽劇では標準的な長さですが、そうした意味でも、ワーグナーにおける画期的な作品です。ワーグナー自身、これを書いている最中、「お前は神の化身だ」と叫んだそうな。 音楽界では、トリスタンの後、ワーグナーの影響から逃れられた音楽家はいないと言われるほどの「トリスタンショック」を生みました。シェーンベルク、プッチーニ、ドビュッシーなどは、トリスタンを偏愛した典型的作曲家です。後者二者は、トリスタンとイゾルデ全曲を暗記したとか。 逆に、ワーグナー的な壮大複雑な音楽に反発して、簡素な音楽に向かった人もいます(サティが典型)が、それもワーグナーの影響といえるでしょう。 といったことで、「トリスタンとイゾルデ」は、クラシック音楽では特に、画期的な音楽だったわけです。 なみに、バッハはバロックから古典派へ、ベートーヴェンは古典派からロマン派へ、そしてワーグナーはロマン派から現代音楽へ……という風に、時代を画した大きな影響を与えた三人とされます。なのでこの三人が、クラシック音楽における三大楽聖と言われる次第です。 「トリスタンとイゾルデ」は、こうした意味でのベルエポック的な作品と言えるでしょう。 ということで、「ワルキューレの騎行」(これは楽劇「ワルキューレ」の中の一部ですが)などしか知らない場合、「トリスタンとイゾルデ」はあまりに甘美で内向的で精神的すぎ、ついて行けない人も多いかと思いますが、このトリスタンを最高傑作とする人は多いと思いでしょう。 最も(いわゆる)男性的でない曲、と言えるかもしれませんが、ここにあるロマンティシズムやヒロイズムは、明らかに男性的です。が、曲の傾向として、内向的なのですね。 でも「トリスタンを知らない人は、人生を損してる」という人すらいるほど。それだけ、特殊な感銘をもたらしうる作品です。 ということで、私的には、作品の凝縮性からしても、「トリスタンとイゾルデ」を最高傑作にあげたいです。「指輪」は、あまりにも長すぎるので。「ワルキューレ」だけひとまず聴いてみるとか、「リング抜粋もの」を聴いてみるとか、いかがでしょう。 ちなみにワーグナーの「楽劇」以外の作品というと、若い頃に作曲したピアノ曲のレコードが出ていました。駄作とされてますが、私はけっこうまあまあ好きでした。 他に、あるんでしょうか。 あ、管弦楽曲で「ジークフリート牧歌」というのがありました。奥さんの誕生日のために作曲して、まだ寝ている時にオケを家に呼んで、静かに演奏させ喜ばせたそうな。 借金の天才のくせに、しゃれたことをやっております。
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- juzube
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3で回答したものです。 ご質問の主旨から外れてしまうのですが、ちょっと……。 5の方の回答内容に全面的に賛成です。 ヒトラーは「ニュルンベルク行進曲」なんてつくって、ワーグナーのメロディ(モチーフ)を単調につなげただけってなものを党大会で流したりなどしてました。大変卑俗で、あんな素晴らしい曲がこんなに下らなくなるか、と逆におもしろいです。 ドストエフスキー、ニーチェ、ショーペンハウアー、ワーグナー、っていうような流れがあり、それらはみな危険な香りをはらんでいるんですが、それの音楽面の勇壮さだけを利用したのが、ヒトラー・ゲッペルスです。 なので、トリスタンとイゾルデ、なんて曲は、全然使いようがなかったわけでした。 ちなみに、特にハリウッド音楽(中でもジョン・ウイリアムズでしたっけ)は、ワーグナーの影響をモロ受けです。ワーグナー信奉者・プッチーニの「マノン・レスコー」の旋律の一部なども、「ジョン、あんた完全にパクったろ」と思うほど同じのがあります。 てなことで、ワーグナーに見られた(政治的)危険な香りというのも薄らぎ、通常の国では、今はワーグナー自身の評価が正しく成されている状態でしょう。 「ワルキューレ」の中にも、「トリスタンとイゾルデ」的な部分は強くありますし、「トリスタン」の中にも勇壮なところはあります。ワーグナーは奥が深く、あまりにも巨大ですね。 「最高傑作」は、なので難しいのです。 ただ、「トリスタンとイゾルデ」「ニーベルングの指輪」「パルジファル」のどれか、であることは、確かじゃないかな、と思います。 前二者を挙げる人が多いでしょうね。
- umibouzu64
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♯4です。「指輪」に関する♯2さんのお話の補足、というか、私の理解しているところについてお話しします。 ヒトラーがワーグナーの熱烈な信奉者であったのは有名なところです。ナチスもワーグナーの音楽をプロパガンダとして積極的に利用しました(これには、ワーグナー自身が反ユダヤ主義者であり、作品によってはドイツ至上主義が稀にリブレットに顔を覗かせていることも関係しているでしょう)。そのことが、イスラエルをして、国内でのワーグナーの演奏を禁止したことにつながっていきます(解禁した日のコンサートも、大変な混乱ぶりだったと聞いています)。 ですから、ヒトラーの愛好は「指輪」にとどまるものではなかったのです(このことが、ワーグナー愛好家にとっての後ろめたさの一因であります)。そして、ナチスが一番好んで上演した作品は、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」でした(特に第3幕)。音楽といい、筋といい、プロパガンダには最適の作品でしょう。だからといって、「マイスタージンガー」がつまらない作品かといえば、決してそうではないです。危ない香りを感じつつ、ハマってしまう作品と思います。一方、「指輪」は、最後は神々の没落ですから、このような暗い作品は、戦前のナチスは好んで取り上げなかったようです。「反ユダヤ主義」も、「指輪」では、リブレットでの言葉上はほとんど見られません。 そういうわけですから、「指輪」だけを悪者扱いすることもないかと思いますし、今ではアメリカをはじめ各国で「指輪」は上演されていて、CDの数も多いですから、あまり神経質にならなくてもいいかと思います。ヒトラーの思想に同調するつもりは毛頭ありませんが、彼の嗜好と同じだからといって、自分がヒトラーになるとは思いませんし。 そういえば、シェーンベルクでしたか、ある若い作曲家から「現代音楽に毒されそうだ」と相談を受けたことに対し、「心配ないですよ。あなた、牛肉を食べるでしょう?でも、あなたは牛になってはいないじゃないですか」と答えたという逸話を思い出しました。 私も、ワーグナーに関する著作を多少は読み、ナチスとの関係についてもある程度知るところとなりましたが、「指輪」への入れ込みは、全く変わることありません。また、ワーグナーの「思想」を理解しなくても、別に鑑賞の妨げになるものではありません。ワーグナーの愛好家は、彼の作品の持つ魅力、また危険な香り、等々を知った上で楽しんでいるはずです。むしろ、知らず知らずのうちにプロパガンダに毒されるよりも、危険な香りを感じている方が、むしろプロパガンダに毒されることはない、などと思うくらいです。 ワーグナーの作品も、一部の権力者により、いいように利用されてしまいましたが、それでも、作品自体の価値は揺ぎ無いものと確信しています。
- umibouzu64
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音楽史上の重要作品、ということになれば、やはり「トリスタン」ということになると思います。冒頭の、いわゆる「トリスタン和声」は、調性をぼかすことで音楽の持つ表現の可能性を飛躍的に高めましたが、これが無調音楽の扉を開いたともいえるでしょう。 もちろん、このような試みは、ワーグナーが初めてではないでしょう。が、それまでの作曲家は、調性への「反逆」は、部分的に、遠慮気味に行われていたに過ぎない。しかし、ワーグナーはこれを大胆に、完全にバックボーンにしてしまった。それが「画期的」ということではないかと思うのです。 また、ある意味では、彼はこの作品で「パンドラの箱」を開けてしまったともいえます。現代音楽の閉塞感の原因の一つは、調性を放棄してしまったことにあると思うからです。無調が部分的に使われているうちは、まだ効果的で良かった。しかし、主役と脇役が逆転(というか、無調だらけになった)してしまうと、もはや音楽の表現方法の可能性は、ほとんど残っていなかった(だから、現代音楽はヘンな楽器の使い方をしたり、周囲の雑音を取り込んだりという馬鹿げた実験に終始することとなった)。その西洋音楽の閉塞感の扉を開けた、とも評価されるのではないかと思います。まあ、時代の流れからしたら、当然の帰結ともいえるでしょうけども。 では、「トリスタン」が実験的で退屈な作品かといえば、決してそうではありません。めくるめく官能の世界の虜になること間違いありません(音楽の背後に、底知れぬ「世界」を感じます)。が、最初に聴くにはちょっと辛いかも…。「前奏曲と愛の死」が、ワーグナー名演集としてよく収録されていますから、これから入っていけばいいでしょう。特にこれは、「性のいとなみ」を音楽で表現したという説がある(マユツバものですが…)ので、創造力を逞しくして聴くのもまた一興かと思います(笑)。
- yuusui_tanbou
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かつて、よく聴いていました。ヒットラーが愛好していたことが気になりだして、一時の熱は冷めていますが、、、。 やはり、「ニーベルンゲンの指輪の4部作」を一度聴いて欲しいと思います。気が遠くなるような時間が必要ですが、ワグナーが創作に最も時間とエネルギーを費やしただけのことはあると思います。 かつて、暮れになるとBS・FMなどでその年のバイロイト音楽祭の特集を組んでいてそこで聴いていました。最近はどうかな?
- tnt
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私はどちらかというと楽劇よりも 歌曲の方が好きで、 タンホイザー、さまよえるオランダ人、 ローエングリンを、この順番に良く聴いています。 特にタンホイザーのファンファーレから合唱に入るところ (大行進曲)は大好きなのですが、ここは 録音によってかなり良否は違うように思えます。