ナチスの党名の謎
現在、『中公バックス 世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦』(中央公論社)という本を読んでいます。この中で、ナチスはもともと1919年1月5日に「ドイツ労働者党」として発足した右翼団体で(p.32)、その後、1920年2月末に「国民社会主義的ドイツ労働者党」(略称NSDAP)と改められた、とあります(p.34)。
実際には極右政党でありながら、党名に「社会主義」とか「労働者」という、いかにも左翼的で社会主義政党的な名称を使用しているのはなぜですか?
Wikipediaによれば、ナチスの訳語はこの他、「国家社会主義ドイツ労働者党」、「民族社会主義ドイツ労働者党」もあるそうですが、いずれにせよ大差はなさそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%81%E3%82%B9
Wikipediaには、綱領に社会主義的政策が掲げられているとありますから、このためでしょうか?ただ、中公バックスによれば、綱領に掲げられた利子奴隷制の廃止、戦時利得の没収、トラストの国有化、百貨店の地方自治体への譲渡、農地改革等の社会政策の拡充が実際に実行されることはなく、ナチス時代の労働者の地位は以前より悪化し、むしろバイエルンの工業化連盟やライン-ウェストファーレン(ドイツの重工業地帯)の大工業家がナチスを援助するに当って求めた代償は、ワイマール憲法に基づく労働者保護規定(団結権、団体交渉権、8時間労働制、ゆきとどいた社会保険、労働者の経営参加権等)の除去、労働組合闘争の弾圧だったと記されています(p.33,46)。
左翼的・社会主義的な政党名では、こうした大資本からの援助を受けることなど到底できないのではないかと思います。むしろ「全ドイツ愛国者党」といったような右翼的な政党名の方が、実際に行ったことからして適当なような気がします。にもかかわらず、ナチスがこの党名にして敗戦までそれを温存し、ある意味固執し続けたのは、どういった理由によるものでしょうか?