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対人関係を通して主人公が成長していく物語
タイトルの通りなのですが、対人関係(人との出会いや関わり)などから主人公が成長(良い意味での変化)していく物語を探しています。小説、エッセイ、映画でも構いません。出来れば思春期、青年期の子が人との関わりを通して心が変化していく…みたいな感じのものを探しています。 よろしくお願いします。
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- fukuyori
- ベストアンサー率45% (38/83)
梨木香歩『西の魔女が死んだ』(小学館/現在は新潮文庫)が、そのものずばりの内容です。以下、1997年に書いた書評を転載します。一部本文を引用していますが、著作権法上の引用の要件を満たしているのでOKWebのチェックはパスする筈、と信じてそのままにしています。 -------- 一昨年・昨年と主要な文学賞を受賞し続け、一躍児童文学界の寵児となった観のある梨木香歩。いろんなところで本書と『裏庭』の書評を見るにつけ、いつか読むべと狙っていたのですが、今回松江市立図書館に予約してようやく借りることができました。 「西の魔女が死んだ。4時間目の理科の授業が始まろうとしているときだった」との文章で物語は始まります。「西の魔女」とは、中学生の主人公まいの祖母。まいは中学入学後まもなく、他の女の子たちの陰湿な仲間意識に疲れ、登校拒否を起こして田舎の祖母の元にあずけられます。学校でも家庭でも自分の居場所を見失ったまいを、祖母は肯定し勇気づけ、そしてある夜、自分たちの家系は魔女の力を受け継いでいると告げる。それからまいの魔法修行が始まるのですが、その修行とは「まず、早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」こと。豊かな自然の中での一ヶ月余りのまいの生活は、しかし、心をくしゃくしゃにする悲しい出来事で終わりを迎えます。それから2年。祖母の訃報に駆けつけるまいを迎えたものは……。 タイトルなどから予想される超常的な設定や出来事は、実は何もありません。物語はごく日常的な風景の中でごく日常的な人と人との触れ合いを描き続けます。魔女や魔法や不思議な出来事が語られるのはほとんど祖母の語る思い出話の中だけだし、ラストのある出来事も合理的解釈の余地があるものです。しかし、「魔法の話」を通して語られているのは、喜びや哀しみや怒りや慈しみなどの、人が生きるという事の根本に関わる情緒的経験です。祖母はまいに魔法というファンタジー(空想)を与える事で、自分の心の中に起きている出来事を見つめる目を育ててゆくのです。 祖母の家の側に住んでいるゲンジさんという得体の知れない男に、まいは強い嫌悪感を抱きます。ある事件が起きた時、その原因がゲンジさんにあるのだと強く主張するまいに対して、祖母はこう語りかけます。 >「まい、どうか分かってください。これはとても >大事なことなのです。おばあちゃんは、まいの言っ >ていることが事実と違うことだといって非難して >いるのではないのです。まいの言うことが正しい >かもしれない。そうでないかもしれない。でも、 >大事なことは、今更究明しても取り返しようもな >い事実ではなくて、いま、現在のまいの心が、疑 >惑とか憎悪とかいったもので支配されつつあると >いうことなのです」 (梨木香歩『西の魔女が死んだ』 小学館 148頁) ユング派心理学でいう元型的表象(人類に普遍的なイメージ)のひとつに老賢者がありますが、この祖母はまさに叡知を伝授する存在です。著者はイギリスに留学し児童文学者に師事しており、豊富な読書経験と共に、ユング派のファンタジー理論にも慣れ親しんでいるでしょう(『裏庭』にはその影響が色濃く出ています)。また、子供である主人公の心の傷を癒す為にファンタジーを与える老人という点で、三原順の傑作『SONS』の「フォルナーの婆ちゃん」も思い出しました。 うん、凄い。どきどきするくらい素晴らしい。寝る前に「さわりだけ」と読み始めて、そのまま一気に読み終えてしまいました。荒唐無稽な空想物語としてのそれではなく、人の心に起こる体験を圧倒的な力で伝える物語としてのファンタジー文学の王道を行く作品です。超お奨め本。 --------
- arimaru
- ベストアンサー率28% (2/7)
小野 不由美 (著) [十二国記シリーズ]がそのままのストーリーです。アニメ化されNHK教育で再放送中です。ファンタジーですが熱烈なファンが多いようですな
- syuitiroh
- ベストアンサー率15% (3/19)
『バッテリー』という大人向けの(?)児童小説がおすすめです。 あさのあつこさん作です。 中学野球の男の子たちの物語なんですが、自分に関係のないことや自分にとって必要でないものには凄く淡白な少年・巧(投手)が主人公です。 笑うこともほとんどありません。 しかし転校先の中学校の野球部に入部してから、様々な人たちに出会い、徐々に変化を表してきます。 …ホントに徐々にですが(苦笑) 読んでると少しじれったくなるくらいですが(特に相方のキャッチャーとのすれ違いの様子が)、私はお薦めしますね!
- kyuukeityu
- ベストアンサー率31% (62/198)
宮本輝「錦繍」(新潮文庫)はお勧めです。 分かれた夫婦が偶然再会し、そこから始まった手紙のやり取りだけで書かれた小説です。 そこに書かれた近況でお互いの事を思い合いながら、それぞれが必死に生きていこうとする姿はじんと来ました。 青年期から少し先の主人公たちですが、迷ったり苦しんだりしながらも、それぞれの道を行こうとする物語です。 ノンフィクションで、小林紀晴「ASIAN JAPANESE」(情報センター出版局など) アジアを旅する中で出会った人々を、一人一人写真と文で書いた作品です。そして数年後、日本でふたたび彼らと出会うのですが・・・。 旅の中での出会いが、筆者をも変えていき、思いがけない出会いがそこからまた導かれていく姿は読み応えがあります。出会いのかけがえのなさを考えさせられる作品です。 もう一つノンフィクションで、渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ」(北海道新聞社) ある障害者と、彼をめぐるボランティアたちとの物語です。二十四時間否応おうなしに向かい合わざるをえない関係で、お互いが徐々に変化していく過程は凄みすら感じさせる力があります。 エッセイで小林司「出会いについて」(NHKブックス) 様々な人々の出会いの体験を紹介して、そこから出会いや関わりについて考察した文章です。 紹介されているエピソードから、興味深い物を選んで原典に当たってみたら、また面白い読書ができるかも。 ではよい読書を。
- huyou_77
- ベストアンサー率22% (308/1368)
金蓮花さんの「銀朱の花」はいかがですか?引っ込み思案の少女が、聖女に選ばれるところから話がスタートします。 津守時生さんの「喪神の碑」シリーズ「やさしい竜の殺し方」シリーズも面白いです。 「喪神の碑」は、宇宙船の新米乗組員が、ほかの乗組員(特に船長)に、目をかけられながら、大きく成長していくストーリーです。テーマは別のところにあるのですが・・・・ 「やさしい竜の殺し方」は、人間嫌いの美貌の聖騎士(男)が、ある少年と出会うところから話がスタートします。 井上祐美子さんの「五王戦国志」も、主人公の少年がさまざまな人間と関わりあいながら、成長していきます。ストーリーは暗めですが、王とは何かといったことも考えさせられる物語です。 以上、参考にしてくださいね、これで失礼します。
- brainbaster
- ベストアンサー率35% (34/96)
川上健一「翼はいつまでも」(集英社文庫) とにかくいい! 青森・十和田の中学生・神山久志は中学二年生で14歳。 野球部ではレギュラーになれず球拾い。クラスの憧れの女子とはまともに言葉を交わせすことも目をあわすこともできず、なんてことのない情けない中学生。 しかし、ある夜米軍放送から流れてきたビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」が少年の心を激しくノックした。 恋、性、スポーツに友情、親との確執、教師との対立・・・様々な出来事が少年を成長させる。 さわやかで、しみじみといい物語。 少年の成長を描いた小説ってのが、ぼくは大好きなんだけど、その中でもこれは秀逸。 生涯のベストテンに入るかもしれないというくらいの名作ですよ。 くわしくは語らないけれど、物語の構成は王道パターンを離れない。 でもディティールがよく、主人公の神山くんがどこにでもいそうなありふれた情けなさで抜群。 その神山くんが途中から自分自身に目覚めていく過程も抜群。 最後のあたりの展開も、卑怯なくらいにいい。 いい小説を読んだという気になって、読んだあとむやみに道行く人の肩をたたいて、 「あんな頃、あったよね」 とにやつきたくなるような、かっこ悪い中学生活を描いた作品。 重松清や浅田次郎、小説の名手はたくさんいるが、この川上健一には勢いがある。文体は走っていて、止まらない、止まらない。 夏休みの課題図書にするには、おしいくらいの作品。 これは、読まないと後悔するような元気のいい本です。 ぜひ。