周期の長い低音域の音波同士は互いに干渉し易く、聴収位置によって増幅したり減衰したりする一方で、80Hz~160Hz 以下ともなると発音源の方向が判らなくなってきますので、2.1ch のように 100~200Hz 以下を受け持つ Woofer を独立した Monaural 駆動とする Speaker System がありますよね。
Amplifier で左右の Power Amp' 出力が位相の乱れを生じていると一定の音量で発音している筈の音波が干渉波で揺らいでしまい、低音域が痩せたり不明瞭になる他、実際には聞こえない筈の超高域での乱れが中高域での音色感を大きく阻害したりします。
低音弦楽器は胴共鳴を起こす主音こそ低域にありますが、弓の Touch や指使いで生じる中高域の倍音部が音色感に大きな影響を及ぼしている事から低音域が痩せたり不明瞭になる低域位相の乱れのみならず、超高域で生じる Ringing と呼ばれる位相の乱れも Amplifier にとっては抑さえ込むべき大きな課題になります。
Amplifier 回路には歪を押さえ込む為に NFB (Negative Feed Back) という手法が用いられている事が多いものですが、NFB は位相を反転して混合するという原理である事から位相を乱し易く、位相の乱れを補正するために CR (Condenser と Resister) による微分回路や積分回路を追加したりします。
Non NFB 回路でも小容量の Condenser で直流を Cut するのみならず、低域の位相補正として Condenser を入れているものがあり、電気的には Low Filter (High Pass Filter) であるものの聴感上は位相が補正される事により低域の籠りが減じて音が明瞭且つ豊かになるものもあります。
低域位相補正用 Condenser は容量こそ小さなものですが、同じ要領でも Polypropylene Condenser を用いるか PET (Polyethylene Terephthalate) Film Condenser を用いるか Metalized Film 型にするかStyrene 型にするかといった材質の違いで音色感が変わりますので、低域位相の調整に神経を遣うと言うのはこうした Condenser の材質にまで Test を重ねて拘っているという事なのでしょうね。
Non NFB の真空管 Amp' だと Miniature 双三極管 1 本と出力管 2 本だけで済んでしまうような Amplifier が、Transistor Amp' では補正回路用の Transistor を加え、温度変化によって特性が変わる補正回路の温度補償のために更に Transistor を加えた Phono Equalizer に Line Amplifier、Power Amplifier を各々 2 Channel 分といったように総計 100 個以上の Transistor が用いられたものになっていたりします(^^;)。
これほど複雑な回路をきちんと設計して調整するのは決して簡単な事ではなく、Transistor Amplifier 黎明期の 1970 年代初頭、TRIO-KENSONIC 社から分離して高精度 Amplifier 開発を目指した技術者達が冠した Maker 名は ACCUPHASE……Accuracy と Phase を組み合わせて「正確な位相制御」を前面に打ち出したものとなり、以後現在に至るまで日本を代表する Audio Amplifier Maker になっています。
1990 年代以降の IC (Integrated Circuit) 時代になると Transistor 数百個から数千個に匹敵する複雑な電気回路が組み込まれた Ope'Amp' と呼ばれる IC Chip を Phono Equalizer や Line Amplifier 或いは DAC (Digital Analog Converter) の Analog 出力部に多用するようになりましたが、複雑な回路だけに安易に反転増幅回路等に利用すると盛大に発振してしまったり、位相補償用 CR 回路の素子選定で音色がコロコロ変わったりするようになり、Ope'Amp' IC Chip を多用する AV Amp' や DAC 内蔵 Amp' 或いは Class D Amp' 等では位相補正回路での音の作り込みにどれほど心血を注いでいるかが音色評価を大きく左右しているようですね。
因みに単体の Tweeter を追加する Multi-Way Speaker 再生では Tweeter の位置や方向の微調整に神経を遣うものでして、指向性の鋭い Horn Tweeter を単体で追加する人などは Tweeter 設置位置を数cm 以下、向きを 10° 以下にまで追い込んでいたりします(^^;)。
Woofer まで Enclosure を自作する人は部屋の構造を考慮して配置決めをするのが大変でしょうが、Full range + Super Woofer + Super Tweeter 派の私なんぞは Woofer と Tweeter を Monaural 駆動で済ませています(笑)。……Full Range Speaker 用 Amp' は最近 NFB を掛けた真空管 Amp' を作りましたが、今までは Non NFB 真空管 Amp' 派でした(^^;)。
素敵な Audio Life を(^_^)/
お礼
ご回答ありがとうございました