英語に「Agree to disagree」と言う言葉があります。意味は、「見解の相違を認め合う」。日韓で必要なのは、どっちが正しいかを真正面から論争し続けることじゃなくて、立場が違うのだから歴史認識でも見解に相違があるのは当たり前で、そのことにとらわれていたら永遠にお互いの反感が解けないことを理解することだと思います。実は戦後の日韓政府の交渉ごとには度々この「Agree to disagree」的な解決策を行っています。1965年の日韓基本条約直前には、政府間で竹島密約と言うものが結ばれ「解決せざるを持って解決したとみなす」と言う問題の棚上げが行われ、基本条約では竹島のことは触れられず、日韓漁業協定は竹島が地球上に存在しないものとして双方の漁業水域を定めました。基本条約は1910年の日本による朝鮮併合が合法か違法かで激しく対立し、暗礁に乗り上げそうになったところで、「千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。」と言う条文を加えて決着しました。これは韓国からすれば、1910年の時点で併合条約が無効だったととらえることができ、日本からすれば、1965年の時点までにはすでに無効になっている、ととらえられます。日韓請求権協定で日本は多額の資金や無償融資を韓国に与えましたが、日本に非があったかのような賠償、補償と言う言葉は一切使っておらず、独立祝い金みたいな名目で支払っていますが、韓国からすれば当然補償される費用として受け取っています。慰安婦に対するアジア女性基金を日本政府が事実上多額の費用を支出して形式的にはNGOによる支援金として立ち上げた際、裏では日韓の政府でこの解決方法で良いと確認がされています。ところが韓国の慰安婦支援団体の激しい反対にあい、韓国での女性基金が失敗に終わると韓国政府は裏合意などなかったかの様に黙ってしまいました。軍艦島や旧八幡製鉄所など明治維新の歴史遺産を世界遺産として登録する際、韓国の強い反対にあった際には、そこで働いた朝鮮半島からの労働したに対する記述を加えることで合意し、その記述に「Forced to work」と英語で表記することにしました。これは、日本からすると「労働を強いられた」。韓国からすると「強制労働に付された」と訳される余地を残したものですが、実際にはそれぞれのメディアが逆の意図で訳し、かえって紛糾しました。これまでのところ、これらの玉虫色の解決策や密約は韓国側によって破られていることが多いようですが、それでもなかったらそもそも今の関係ができていない。また韓国の方が間違っている思っても感情問題は自分の正当性を主張するだけでは解決しないことを忘れてはいけないです。
日本は戦後東アジア、東南アジアの国々と戦後の和解をしてきたのですが、傷跡は深く経済協力と言う金に物を言わせたハード面の取り組みでは感情問題を解消できず、その後技術指導や国の成長を後押しするソフト面の取り組みと交流を行ってようやく関係改善をしてきた歴史があります。韓国に対してもそうしてきたはずなのですが、韓国は戦後国をまとめてアイデンティティを維持するために反日を政治利用してきたのも事実で、感情問題と政治問題がミックスされているので厄介です。また日韓基本条約、請求権協定は国家間の関係の礎なので、ないがしろにされたら拠り所がなくなり困ります。かと言って、当時の朴正煕大統領の軍事独裁政権下で、条約反対の大規模なデモを戒厳令をしいて抑え込んで成立した条約を金科玉条として振りかざすだけだと感情問題が残ることは日本政府も意識すべきと思います。
古い書物を紐解くと、今の韓国の反日感情は日韓併合どころか豊臣秀吉の朝鮮侵攻の時から面々と続いています。日清戦争で日本は朝鮮半島から清国の影響を退け、韓国を独立国としてなり立たせる後をしをしたのですが、ところが文献によると日清戦争以前に朝鮮半島の一般庶民は清国の商人を重宝し、仲も良く、またキリスト教を布教しつつ一般の居住地に入り込み教育や医療を施した西洋人に対する見方も友好的だった一方、威圧的な態度で取り乗り込んできた日本人に対する嫌悪感は相当な物だったそうです。その日本が当時の国際的な常識を逸脱していないにしても、国王を事実上幽閉し、権力者であったその母、閔妃の暗殺に関与し、内閣に圧力をかけて併合条約に調印させたわけですから、恨みに思わないはずもないでしょう。ただ歴史的な出来事はいつまでも感情として残っているものでもなく、経済、文化、スポーツ交流などを続けていけば将来薄れていくものだと思います。日韓の場合は歴史問題がちょっとした拍子に蒸し返され無限ループになるようで、この問題はお互い納得できない、合意できないことをまず理解した上で、真摯で我慢強い態度で望むことが大事だと思います。
ちなみに、他の国々でも歴史的には根深い問題は山のようにあります。でも仕事のパートナーとして、友達として付き合う時には、双方相手の国はさぞかし恨んでいるだろうなと思いつつ、個人的な信頼関係の元にあえて歴史の話はしません。棚上げと言うか封印します。真剣に自国の見方や自分の知識で歴史問題に踏み込んだら、それまでにできた信頼関係にすら傷をつけかねないことを皆んな知っています。この間話の流れで中国の友人と日中の歴史問題に触れそうななって慌ててお互いやめました(笑)でも私も相手も、それぞれの国で随分と違う解釈がされていると言うことだけは知っています。
お礼
回答を拝読して、少し涙が出てきました。歴史に対してまだまだ不勉強だなと感じましたので、もう少しいただいた内容を自分なりに調べてかみ砕いてみようとおもいますが「感情問題は自分の正当性を主張するだけでは解決しない」というのは、昨今の日韓双方のマスコミや人々の意見を聞いて実感しております。国家間の歴史や情勢はともあれ、個としての付き合い方はきちんと誠実に行っていきたいとおもいます。ありがとうございました。