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ドリルのクレーター摩耗と対処方法について
- ドリルのクレーター摩耗について教えてください
- ドリルの再刃件品の使用後、すくい面にクレーター摩耗のようなものが見られます。現在の加工条件では摩耗状況が変わらず、対処方法を知りたいです。
- クレーター摩耗の発生メカニズムについても教えていただけると幸いです。
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クレータ摩耗は、すくい面と切りくずとの摩擦によって、もっとも高温となる箇所に発生する刃先の摩耗形態です。高速切削を行う場合によく発生します。切り込み自体は刃先で起きますが、切りくずはその後すくい面をある距離だけ摩擦しながらカールして排出されていくため、刃先から離れた位置にもっとも高温となる箇所が存在するということです。もちろんすくい角との関係で、同じ切削条件であってもクレータ摩耗が発生する位置は変化するはずです。 クレータ摩耗自体の説明から少し離れますが、高速切削の要点について少し説明します。 切削理論から見た高速切削のポイントは、切削熱をいかに切りくずに効率よく持ち去らせるかということになります。切削熱は切削速度に大きく依存するため、高速切削では当然切削熱が増大する訳ですが、反面、切りくずへ移動する切削熱の割合も増加していきます。高速化によって工作物へ熱が伝搬する時間的な余裕がなくなるからです。 低速切削から切削速度を上げていきながら、工具寿命との関係を見ていくと、切削熱の増加によって工具寿命が急速に短くなっていくものの、さらに切削速度を上げると、上記の理由によって逆に工具寿命が大きく減少しなくなる領域が存在します。高速切削の利点が現れ始めた領域と言うことになりますが、少し古い文献では、このときの切削速度は 100m/min前後 と紹介されています。もちろん刃物の大きさや切削形態によって差があるでしょうが、ひとつの目安になると思います。工作物と切りくずの間での熱移動の割合と同じように、高速切削化によって切りくずからすくい面への熱移動が軽減される効果があるのかも知れません。 ここでようやく解答の本題ですが、 (1)クレータ摩耗をすくい角との関係で考えれば、切りくずを早くすくい面から引きはがす工夫が必要ということ。すくい角の調整で効果が期待できると思います。 (2)切りくずへの熱移動を効率よくするためには、ある程度の切りくずの大きさが必要です。切りくずの状態から考えて、送りを逆に増加させる可能性を検討してみてください。 (3)送り量との関係になりますが、切削速度をより高速化して状態を見てください。もう少し早くしたほうがいいかも知れません。 (4)刃先の摩耗よりクレータ摩耗のほうが進展が早いようであれば、刃先の潤滑よりは冷却の効率を上げる方向でクーラントの調整を考えてみてください。ただし切削熱による切りくずの軟化が切削自体の難易度に影響しますので、まず(1)(3)の対策を優先すべきだろうと思います。