Q/ガン細胞が人を侵す仕組みを教えていただけませんか。
A/既に回答があるように、単に食事しかしない細胞で、無秩序に増えるため、それによって内蔵や血管機能、皮膚機能の障害(本来持つ機能を失う)が起き、人が弱っていきます。消化管などで起きて、癌が大きくなれば、消化管が詰まる(閉塞する)こともゼロではありません。癌というのは、人を人の形にとどめることさえも忘れた人の細胞です。
Q/うまく利用してスーパーマンの原料には使えませんか。
A/現状で言えば、テロメラーゼを無くした細胞が、正常にコピー能力を維持して、ずっとルール通りのコピーを続けられるかというのが、難しい部分なのですよ。テロメラーゼはそこに、限界を与えることで、人の生存能力としての形を保とうとしていると考えることが出来ます。
もう少しわかりやすく言いますと、人の体は受精して細胞分裂を繰り返し胚となり、そこから人の形になっていきます。最終的に30兆以上の細胞の集まりとなり、その細胞一つ一つが役割を持つことで、人になるわけですが、子供頃と大人になってからでは、細胞の数は変化しています。成長する過程でさらに細胞数は増えるのです。
じゃあ、その数を制御するのは何でしょう?ということを考えると、そこにテロメラーゼと呼ばれる酵素(テロメア)が何らかの形で関与している可能性があります。もし、それを排除したら・・・がん細胞とは違うかも知れませんが、さらに大きく成長しようとする可能性もあるわけです。
そもそも、がん細胞は無尽蔵に増える機能不全の細胞ですが、テロメラーゼが生きていれば、機能不全の細胞でも、数ヶ月もすれば生まれ変わり死ぬ訳です。即ち、実際に何千個の癌が生まれていると世間では言いますけど、無尽蔵に増えず機能を失っただけの細胞ならもっと無意味に壊れた細胞は多いとされます。
もしも、その可能性がある中で、テロメラーゼを廃した遺伝子組み換え技術を人に応用したら・・・。果たして人は10年生きられるのでしょうか?まあ、癌のメカニズムは進行が早いものと、遅いものなどいくつかあり、90年代以降、部位毎にある幹細胞のがん化などが関わっているのではないかなどといった方面にも広がっており、必ずしも癌で死ぬ人が増えるとは言いませんが・・・。
壊れる部分がテロメア+細胞機能性なら、がんです。壊れる部分が細胞機能性だけなら、壊れた細胞です。テロメアだけなら、仕事はするが・・・分裂は無秩序にするでしょう。あれ・・・癌っぽいよね?ってね・・・。良性のしこりとか、良性腫瘍というのはそれに該当するとしたら?
要は、テロメアを消せばそれで万事上手くいくことではありません。テロメアの代わりに細胞の分裂を制御し、回数だけを無制限にするという役割を何かが持たないといけないのです。また、もし癌というものが、遺伝情報コピー時の失敗や細胞の破損で生まれるなら、分裂が無制限な細胞が生まれ続けるということは、不正な細胞も今まで以上にたくさん出来る可能性があることを忘れてはいけません。
単細胞生物には、こういう問題がないのです。なぜなら、単細胞だからその細胞が生きればOKです。たとえ当初の細胞情報と今の情報が違おうが、増えればOKです。しかし、多細胞から分化する生き物は、細胞同士に役割があり、どうしてもコピーのミスが個体の生き死にに直結します。そこで、考えたのが分裂限界と生殖による子孫の繁栄です。大きくなりすぎてしまえばいつかは、分裂ミスから自らが自らを苦しめることを計算し、子孫という形で、1つの細胞に戻し、それを育てて増やすという方向を選んだと思われます。そして、その個体として細胞全体を一つの意志が、制御できる期間の限界を生み出したのが、テロメアであると考えれば良いかと思います。
まあ、科学ではあまりこういう発想はないですから・・・スーパーマンやスパイダーマンも作れるかも知れません。人類はどこまで挑戦するか分かりませんが、ただそのとき、それの第一号になった人は、人ではなくなるでしょう。特に、時間が経過したときに、想定した科学的な人のあり方とは違うものになる可能性も高いと言えます。
お礼
専念的な仕組みを分かり易くご説明いただきました。機能不全の細胞なのですね。お答えありがとうございました。