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ガスタービン発電の燃料
アジアの某国で発電所建設(25-30MW x 2-3基)を考えている。 当面は低硫黄ディーゼル油を使用し、今後石油価格が高騰すれば、LNGの貯蔵設備、配管設備を導入してLNGを使用したい。そのような燃料の使用方法を考えているが、発電設備自体は当初からこの二通りの燃料を使用することを前提とした設備を制作しているメーカーはあるのか? この規模のガスタービン発電機を製造しているメーカーは川崎重工などあるが、両方の燃料を前提にした発電機の製造は可能か? Single Cycle C/TとCombined Cycle C/Tのそれぞれで回答を頂きたい。
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- kagakusuki
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ディーゼル油とLNGのどちらの燃料も使用可能なガスタービン発電機が可能かどうかを考えるためには、まず「エンジンによっては、どうして燃料を限定しなければならないものがあるのか」というその理由を知らなければなりません。 オットーサイクルの場合、シリンダー内に吸引された「空気と燃料を予め混合した混合気」を、ピストンの上昇によって圧縮し、ピストンが上死点に達する辺りで電気火花等の点火装置を用いて点火して混合気を燃焼させ、燃焼熱で高温・高圧になった燃焼ガスの圧力がピストンを押し下げる力を利用して力学的エネルギーを取り出しています。 その際、混合気の空気に対する燃料の割合が少な過ぎても多過ぎても火炎が伝搬しなくなり、シリンダー内の混合器の全てを燃焼させる事が出来なくなるため、混合気の空気に対する燃料の割合が適度な範囲内に収まっている事が必要になりますが、その範囲は燃料の種類によって異なっていますから、燃料の種類によって空燃比(空気と燃料の混合比)を変える必要があります。 また、気体を圧縮すると温度が上昇し高温になるため、もし発火点が低い燃料を使用すると、ピストンが上死点に達するよりもずっと前の時点で混合気の温度が発火点を上回ってしまい、混合気が自然発火して異常燃焼を起こしてしまいますので、それを防ぐためには発火点が十分に高い燃料を使用する必要があります。 このため、オットーサイクルの場合は使用可能な燃料の種類が限られる上に、例えオットーサイクルというサイクルには使用可能な燃料であっても、燃料の種類に応じて混合気の空燃比や圧縮比を変えねばならないので、同じエンジンで異なる種類の燃料を使用可能にする事は容易ではありません。 ディーゼルサイクルの場合、シリンダー内に吸引された空気をピストンの上昇によって高い圧縮比で圧縮し、ピストンが上死点に達する辺りで「高圧になるまで圧縮された事によって高温になった空気」の中に燃料を噴霧し、シリンダー内の空気の高温によって燃料に点火して燃焼を行い、燃焼熱で高温・高圧になった燃焼ガスの圧力がピストンを押し下げる力を利用して力学的エネルギーを取り出しています。 シリンダー内に噴霧された燃料の噴流は、シリンダー内に噴出した直後の時点では燃料の濃度が高過ぎて燃焼が持続しませんが、時間の経過とともに燃料はシリンダー内の空気と混じり合って希釈されて行きますから、シリンダー内の空気の量に対して燃料の量が多過ぎない限りは、必ず適度な空燃比となる瞬間が生じますので、ディーゼルサイクルではオットーサイクルとは異なり空燃比に関してはあまり気にする必要がありません。 また、圧縮するのは空気のみで、混合気の様な可燃性のガスを圧縮する訳ではないため、圧縮行程の途中で自然発火が起きる恐れは皆無ですので、発火点の高い燃料を使用する必要はありません。 このため、ディーゼルサイクルではオットーサイクルと比べれば使用可能な燃料の種類が多くなります。 しかし、燃料の発火点が高過ぎますと、そのエンジンの圧縮比では「シリンダー内で圧縮された事によって上昇した空気の温度」が発火点を上回っていない事によって燃料に点火する事が出来なくなる場合があります。 そのため、ディーゼルサイクルのエンジンに使用する燃料としては、ガソリンや天然ガス等の発火点の高いものはあまり向いてはおらず、実用的にはディーゼルサイクルのエンジンでもある程度は燃料の種類が限られる事になります。 それに対しガスタービンの場合は、連続して一定の流量で吸い込んだ空気を圧縮機で圧縮し、その圧縮空気を燃焼器に送り込み、燃焼器内において送り込まれて来た空気の中に燃料を連続して注入しながら燃焼させ、それによって生じた高温高圧の燃焼ガスをタービンに送り込み、その送り込まれた燃焼ガス流の圧力や運動量を受けてタービンが回転する事を利用して力学的エネルギーを取り出しています。 【参考URL】 TDK > テクの雑学 > 第164回 燃料に石油要らず!発電効率も高い! ~意外とエコな火力発電「ガスタービン・コンバインドサイクル」方式~ http://www.tdk.co.jp/techmag/knowledge/201105/index2.htm 1 : ガスタービンとは何か / 渡辺・姫野研究室 - 東京大学 航空宇宙工学専攻 http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/jetlab/gtsj/ ガスタービンでは、圧縮機で圧縮工程を行い、燃焼器で燃焼行程を行い、タービンないしはタービンノズルで膨張行程を行うという具合に各行程を別の場所で行っているため、オットーサイクルエンジンやディーゼルサイクルエンジンの様なレプシロエンジンとは異なり、各行程を連続して行う事が出来ます。 燃焼行程も連続して行っているため、「ピストンが上死点付近に達した辺りで点火する必要があるレプシロエンジン」とは異なり点火のタイミングの問題がなく、オットーサイクルとは異なり、圧縮するのは空気のみであるため燃料の発火点は高いものである必要がなく、ディーゼルサイクルとは異なり空気の温度で点火させているのではなく、エンジン始動時に1度点火した後は火炎自体の高温によって燃焼が連続的に起きるので燃料の発火点は低いものである必要がなく、ディーゼルサイクルと同様に空気中に燃料を吹き込んで燃焼させているため混合比の問題も少ないため、ガスタービンエンジンはレプシロエンジンと比べて極めて多様な燃料を使用する事が可能です。 それと、レプシロエンジンの場合は燃焼が起きているのは一瞬だけの事に過ぎないため、ピストンやシリンダーなどのエンジンの構成部品に対して燃焼ガスから伝わる熱量は多くはなく、そのためレプシロエンジンの構成部品の温度は燃焼ガスの温度と比べてずっと低いものに過ぎません。 それに対してガスタービンの燃焼器やタービンなどは高温の燃焼ガスに連続して曝されているため、レプシロエンジンの構成部品とは比較にならないほどの高温となります。 高温になれば構造材に使用している材質の強度が低下しますから、高速で回転していて強大な遠心力や振動が加わるタービンブレードの温度をあまり高くする訳には行きません。 もしガスタービンエンジンで石油系燃料や天然ガス等の発熱量の大きな燃料を、吸い込んだ空気に含まれている酸素の全てを使って高圧で完全燃焼させた場合、それによって生じる高温は数千度にも達しますので、例え現在実用化されている最高の耐熱材料を使用して、尚且つ冷却方法に工夫を凝らしたところでタービンブレードは到底耐えられません。 そのため、ガスタービンエンジンでは吸い込んだ空気に含まれている酸素で燃やす事の出来る最大の量と比べて、かなり少ない量の燃料しか燃やしていません。 つまり、石油系燃料や天然ガス等の発熱量の大きな燃料を使用する場合、ガスタービンエンジンの燃焼ガスの温度は、タービンブレードが耐えられる温度に合わせなければならず、そのため燃料の種類を変えても燃焼ガスの温度は変わらない訳です。 加えて、ガスタービンエンジンでは吸い込んだ空気に含まれている酸素で燃やす事の出来る最大の量と比べて、かなり少ない量の燃料しか燃やしていないため、燃焼ガスの大半は空気になりますので、燃料の種類を変えても燃焼ガスの性質はあまり大きくは変わりません。 ですから、燃焼器の構造を火炎の伝搬速度が遅い方の燃料に合わせたものとした上で、天然ガス(気体)の供給用配管系とディーゼル油の供給用配管系の両方を備える様にしておき、後は燃焼器内のバーナー部分だけを燃料に合わせて交換可能な様にしておいて、燃料を切り替える際に一時的にそのタービンの運転を止めてバーナー部分を交換する様にすれば、 >今後石油価格が高騰すれば、LNGの貯蔵設備、配管設備を導入してLNGを使用 する事が可能になります。 また、燃焼器内にLNG用のバーナーと燃料油用のバーナーという2種類のバーナーの両方を最初から設けておき、バルブの切り替え程度だけで使用燃料を切り替えたり、両方の燃料を同時に使用したりする事が可能な「ガス・油デュアル焚き燃焼器」というものも存在しています。 【参考URL】 http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/2012/11/2012_11_02.pdf ※上記URLにあるpdfファイルのp.22目「3.2 H-25形ガスタービン技術」の項目を参照のこと >Single Cycle C/TとCombined Cycle C/Tのそれぞれで回答を頂きたい。 「ガスタービンと蒸気タービンのCombined Cycle発電」はガスタービンの排気が高温である事を利用して、そのガスタービン排気を高熱源として使用した蒸気タービンを駆動し、ガスタービンと蒸気タービンの両方で発電を行うというものです。 ガスタービン排気は蒸気タービンの高熱源としては十分に高温であるため、蒸気タービンの方の効率を上げるために、「排気温度が高くなる様にガスタービンの効率を敢えて低くする」という設計にする必要はまずありません。 先述しました様に同じガスタービンを使用した場合は、使用燃料がディーゼル油でもLNGでもガスタービン排気の量や温度比熱等はほぼ同じになりますから、「ガスタービンと蒸気タービンのCombined Cycle発電」において、(排気の腐食性がLNGと比べれば若干強い)石油系燃料油を使用したものが実用化されている以上は、「Single Cycleガスタービン発電」と「ガスタービンと蒸気タービンのCombined Cycle発電」のどちらにおいても、ディーゼル油とLNGのどちらの燃料にも切り替えて使用する事が可能な発電機を製造する事は可能であるという事になります。
- fujiyama32
- ベストアンサー率43% (2298/5278)
下のURLをクリックして問い合わせのメールを発信すると良い回答が あると思います。 川崎重工 ガスタービンビジネスセンター [インターネットからの問い合わせ] https://www.khi.co.jp/gasturbine/product/industry/gasturbine.html
お礼
どうもありがとうございます。 ただ知りたかったのは、同じガスタービン発電機械で当初はULSD(低硫黄燃料)で、時期が来たらガスに変更できるような設備が製造可能か? との意味でした。如何でしょうか?