インフルエンザのようなウイルスが原因の病気は細菌が原因の病気のように色々な生物に感染することはあまりありません。人のインフルエンザウイルスが猫に感染したり猫のインフルエンザウイルス(有るかどうかわからないが)が人に感染することは無いと思っていいでしょう。
細菌性の病気や寄生虫が原因の病気はかなり多種の生物に感染したり発病したりするものが多いのですが、ウイルス性の病気は一部のウイルスを除き特定の生物のみに感染するものが多いのです。これは細菌や寄生虫とウイルスではその仕組みが全く異なるからです。
細菌や寄生虫はそれ自体が生物としての基本的な部分をすべて持っているので、細菌や寄生虫が生存するのに適した環境と栄養があれば、自ら栄養を取り入れて増殖することができるので、多くの生物間で感染がおこるものが多いのですが、ウイルスには自ら増殖する能力はありません。例えば栄養たっぷりで環境もばっちりのカンテン培地(微生物などを繁殖させるための物)に細菌や寄生虫を入れればどんどん増えていきますが、ウイルスを同じ環境においても何も起こりません。ウイルスが増えるにはウイルスが感染できる生きた細胞が不可欠なのです。なぜかというとウイルスには栄養を取り込んだり栄養を使ってエネルギーを創りだすという機能が全くないからです。では、ウイルスはどうやって増えるのでしょうか?
実は、ウイルスはウイルスの遺伝子を生きた細胞に組み込む(一種の遺伝子操作です)ための酵素とウイルスの遺伝子(DNAではなくRNAと呼ばれるタイプ)とそれらを包む殻しかもっていないのです。そのため、ウイルスの遺伝子を組み込める遺伝子を持った生きた細胞がなければ増えることもできないのです。したがって遺伝子の構造が大きく異なる種類の生物間ではウイルスが遺伝子を組み込むことができないので感染は起こらないのです。
実際にウイルスが増えるプロセスですが、ウイルスが遺伝子を組み込むことができる生きた細胞にウイルスが遭遇すると、ウイルスは酵素を使って細胞に自らの遺伝子を組み込みます。そして細胞をウイルスの製造工場に作り替えてしまうのです。ウイルスに取りつかれてウイルス製造工場になってしまった細胞が作ったウイルスはさらに別の細胞に取りつきどんどん増えていくというわけです。前述したように一般にウイルスは遺伝子を組み込むためにどんな生物にも取り付けるというわけではありませんが、ウイルスによっては多くの生物で感染できる種類もあります。例えば狂犬病のウイルスで、このウイルスは殆どの哺乳類に感染することができます。これは哺乳類に共通する遺伝子配列の部分に自らの遺伝子を組み込むことができるからですが、インフルエンザなどは組み込む部分が生物のよって異なる部位に組み込むため、人のインフルエンザが猫や犬に移ることはありません。
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