>不良肉芽は増殖してどんどん骨を侵してしまう
これは全くの間違いです。
肉芽は骨を侵食しません。
骨というのは、細菌の感染に対してとても弱い組織なのです。細菌が骨に侵入すると、骨髄炎などの重篤な症状を生じてしまいます。そこで、生体の防御機構は、細菌が骨に到達しそうになると、骨を壊して移動させ、細菌が骨に到達できないようにします。江戸時代の火消しが家を壊して延焼を防いだのと同じですね。
このときに骨を壊すのは歯骨細胞という細胞です。この歯骨細胞が骨を壊すことで、骨髄炎などを生じるのを防いでいるのです。
ですから、歯周病で骨がなくなるのは、細菌や不良肉芽が骨を侵食するのではなく、歯骨細胞が骨髄炎を防ぐために骨を避難させているのです。
わたしが子供のころ見た怪獣映画に、海から来た怪獣が日本に上陸して、町を壊しながら進んでゆくときに、警察だったか自衛隊だったかが、怪獣の進路の住民を非難させるシーンがありました。
おばあさんが、「ご先祖の仏壇がある家から離れたくない」と言って避難しようとしないのです。そこへ自衛隊員が来て、そのおばあさんを無理やり家から引きずり出すのです。するとその直後に怪獣が家をドシンと踏み潰すのです。
おばあさんは自衛隊員のおかげで命が助かります。
この自衛隊員が歯骨細胞です。骨を無理やり壊して他所へ持っていってしまうのです。そのかわり骨髄炎などの重篤な症状の発生を防ぐことができます。
さて、自衛隊は怪獣の被害がこれ以上広がるのを防ぐために、バリケードを築くことにしました。強力なバリケードで怪獣の動きを止めておいて、戦車の大砲で怪獣をやっつける作戦です。そこでまず強力なバリケードを作りました。怪獣はバリケードに阻まれてそこから先に進むことができません。
このバリケードが、繊維から成る肉芽で、「被包」と呼ばれたりします。肉芽というのは細菌の侵入と拡大を防ぐバリケードなのです。
そして、戦車が大砲をぶっ放します。怪獣は砲弾を浴びて傷つき、逃げ始めました。さあ、戦車で追いかけて、怪獣をやっつけましょう。
と思ったら、なんと言うことでしょう。怪獣を防ぐバリケードがあまりにも強力すぎて、戦車が通過できません。怪獣の進撃を防いだバリケードが逆に邪魔者になってしまったのです。怪獣は逃げて、生き延びてしまいました。きっとまた襲ってきます。困ったことになりました。
これを見ていたゴシップ雑誌記者が、このバリケードに名前をつけました。
なんという名前だと思いますか?そうです。「不良肉芽」という名前をつけたのです。
人間て勝手ですね。
>不良肉芽には感染力があるため
バリケードは住民を殺しません。バリケードは住宅を破壊しません。
ですから、肉芽というのは生体を守るためのものであって、生体に害を与えるようなことはありません。
でもバリケードは戦車の進路を妨害してしまいますし、怪獣に壊された家を建て直そうとするときに、邪魔になります。そんなバリケードを人間は自分たちの勝手な都合で、身体を守る役に立つ「被包」と呼んでありがたがったり、邪魔な「不良肉芽」だと言って排斥したりするのです。
基本的には同じモノです。
歯周病では骨が治って欲しいわけです。歯骨細胞によって非難させられた骨が、元の場所へ戻ってくれると良いのです。ところが、その場所には細菌の侵入を防いだ肉芽がいます。そのため、骨が元の場所へ戻ってくることができません。そこで、自分勝手な人間はこの「邪魔者」を「不良肉芽」と呼ぶのです。
とは言っても、「不良肉芽」がいるために骨が治ることができないのは事実ですから、歯周病の治療ではこの肉芽を除去し、骨が元に戻るのを促すわけです。
不良肉芽と優良肉芽(という名前はないけれど)との差は、実はありません。人間(と医者)から見て役に立つのか立たないのか、という差です。その勝手な都合で「不良肉芽」と呼んでいるだけなのです。
お礼
あけましておめでとうございます。 改めての質問にご回答くださりありがとうございます。 お礼がまとまらず遅くなり申し訳ありません。 スペクタクルな解説に、ある意味感動を覚えました。 引き込まれました。 不良肉芽はバリケードであり、それ自体は悪さはしない、 という解釈でよいのかなと思いますが たとえば、 根尖性歯周炎の場合、感染根管治療がうまく行けば あとは放っておけばよいのでしょうか・・。 怪獣はどこに行く??? もし、ヒビや破折があれば、 いくらバリケードを張っても怪獣が暴れますよね?? まだまだお尋ねしたいことがありますが うまくまとまらないので改めて新規の質問をするかもしれません。 その時によろしければまたよろしくお願いいたします。