「できるだけ安く作りたい」ではなく「興味から真空管を
使って作りたい」、同時に「費用を安くすませたい」
ですよね。でなければ真空管式にする理由がありません。
トランスレスにはヒーター電圧の合計値を100Vに合わせた
完全トランスレスとヒーターの点火部分のみトランスを使った
セミトランスレスがあります。どちらもプレートにかかる
高圧(B+)は、コンセントに来ているAC100Vをそのまま整流
するか、倍電圧整流して取り出します。質問者さんはこの
あたりの仕組みはご存じのことと解釈してトランスレスの
メリット、及びデメリットについてのみ解説します。
家庭に届いているAC100Vラインは安全のため片側がアースに
落ちています。これをコールド側と呼び、落ちていない側を
ホット側と呼びます。さて真空管アンプの内部では、(B+)の
反対側はシャーシケースにつながれます。つまりAC100V
ラインのどちらかが、直接シャーシにつながれることに
なります。ここでコールド側がシャーシにつながれれば
よいのですが、ACプラグの差し込み方しだいでは、シャーシが
AC100Vホット側の電位となり、アンプの金属部分に触れると
感電してしまいます。更にそれだけでなく、他の器機と
接続する場合、その器機が同じトランスレスですと漏電事故を
起こすこともあります。
以上のようにトランスレス電源は安価に、かつ小型軽量に
できるメリットがある反面、危険性があり扱い方が非常に
厄介であるということが言えます。実際に昭和40年頃の
真空管式テレビはコストを抑えるために電源トランスを省き、
ツマミ類やケースをすべてプラスチックにして製品化した
物がありましたが、それはメーカーの事情というものです。
特に現代では「安く」を目的とするなら、最初から自作は
やめた方がいいでしょう。そうでなく興味のためならば、
このようなけちり方はすべきではありません。買った部品は
無駄にはなりませんよ。そのアンプが不要になったらバラして、
また何か他の物を作りゃいいんです。