クルマの設計屋です。
1.HSA(ヒル・スタート・エイド)はいすゞ自動車の発明品で、乗用車では‘84年にいすゞ・アスカの、これまたいすゞの発明品・セミオートマチック変速機のNAVI5採用車に搭載されていました。(‘85年デビューの初代FFジェミニのNAVI5搭載車にもHSAは採用されました。)
実は、このHSAは永らくいすゞの特許として保護されてており、他のメーカが自由に使える状態にありませんでした。
近年、NAVI5の特許が切れてフェラーリやアルファロメオ、トヨタなどがセミオートマチックを採用していますが、同様にHSAの特許も切れたのでこれから採用車種が増えると考えられます。
2.大型車でやたら空気の音が聞こえるのは・・・
(1)大型車のブレーキは、乗用車のブレーキオイルの代わりにエアで動いています。これは、乗用車的なオイルとバキュームサーボの制動装置では制動力が不足するからで、大気をポンプで7kgf/cm^2の圧力まで圧縮し、この圧縮空気をタンクに溜めておいてブレーキ作動に使っています。
ブレーキを使う度にプシュッ!と音がするのは、ブレーキ作動に使った圧縮空気は、ブレーキペダルを戻した時に大気中に放出されるからです。(空気は大気中にいくらでもあるので、圧縮空気を作っている空圧回路にはリターンのルートが無く、使った空気は捨ててしまいます。これが油圧回路なら、気安く大気に捨てるワケにはいきません。)
(2)シフト機構は2種類ありまして・・・ダイレクト変速機構の推力を圧縮空気でアシストする構造と、ブレーキと同様フルエアで動くモノです。
どちらも空圧ブレーキ同様、使った空気は大気に開放しているので、やはりブレーキ同様プシュッ!と圧縮空気が大気に逃げる音がします。
さて、これらの空圧装置が乗用車に使われる可能性ですが・・・使われる事は無いでしょう。
このシステムを採用するには、まずエアコンプレッサと圧縮空気を溜めておくエアタンクが必要です。エンジンルーム内のレイアウトが苦しい乗用車で、これらの装置をワザワザ追加するかどうか、疑問です。
また、空圧ブレーキは小さいペダル踏力で強力な制動力を発生しますが、車重が軽い乗用車でこれほど強力な制動性能が必要か?という大前提がありますし、そもそも空圧ブレーキのブレーキペダルは単なるエアバルブに過ぎないので、制動力のコントロールに非常に特殊なテクニックが要求されます。(この点は、大型トラックやバスを運転されている方は、よくお判りでしょう。)
シフトコントロールも同様で、大型車では変速機内の各歯車の回転慣性力が強く、人力だけではカンタンには同調させられないほど強力なシンクロ機構が必要となっていますが、乗用車では逆に人力でシンクロを壊すほどなので、圧縮空気によるシフトはオーバーアシストになってしまいます。
お礼
とても詳しくご説明いただきありがとうございました。