欧米の人でも、もちろん早口の人も居ればおだやかにゆっくりとした話し方をする人も居ます。また、早口でなければ欧米では生きていけない…などといったことは全然無いと思います。
ご質問者様が、どういったことからこうしたご質問をお立てになったのかは分かりませんが、ひとつ言えることは、日本人にとっては、英語、フランス語をはじめ欧米の言葉が早口に聞こえてしまうということはたしかにあります。
では、なぜ早口に聞こえてしまうのか…、答えは案外簡単なことです。日本の言語は、習慣として耳で覚えた会話言語とともに、一方で書いて読む言語も存在する…という世界的に見ても数少ない高等な言語体系に属します。
そしてさらに、日本人が、たとえば英語を勉強しようとするとき、あるいは学校での英語の授業など、こうした英語教育の現場では、多くはまず、書いたものを読むことから始められています。
書かれた文字を読む…、それでもかなり会話力は身に付くはずです。ひとつひとつの単語の意味を知り、正確に発音し、正しいスペルを覚えれば、すくなくとも自分の意思が伝えたい相手に通じないということは解消されるでしょう。
ところが、それでもなお、どうしてもクリアーできない問題が残ります。会話の相手の言っていることがとっさに理解できないという問題です。なんだか、文字通りペラペラととても早口でしゃべられて、意味がサッパリ分からない…。
相手も、この日本人には、もっとゆっくりした口調で話さなくては理解できないらしい、もう一度ゆっくりと話して上げよう…と心遣いを示してくれるでしょう。なのに、それでもなお、早口に聞こえてしまって意味が分からない、日本人の多くがしばしば経験することです。
なぜなのでしょう…、これも答えは簡単です。聞き取れない主な理由は話すリズムにあるからです。これまでの日本の外国語教育は、前述のように「読み書き」を基礎として行われてきました。そのために「聞き話す」という能力が読み書き能力に追いついていないのです。そして、読み書き能力と聞き話す能力の大きな違い、そのひとつが話すリズムなのです。それだけに話すリズムはとても大切です。
たとえば、会話の中でよく使われる"Pick Up"という言葉、わたしたちは学校で「ピックアップ」と教わりました。でも、英語圏ではほとんどどこでも「ピカップ」のほうが通じやすいのです。ましてや、"Pick it Up"ともなると、「ピック イット アップ」ではなくて、もうほとんど「ピキラップ」と聞こえてしまいます。こうした単語を組み合わせた発音の仕方、そうしたものが会話のリズムを作っているように思います。
だからこそ、極端に言ってしまえば、"What time is it now?"を「掘った芋、いじるな」と覚えたと言うジョン万次郎さんではないけれど、ただ単に、話すうえでのリズムさえ身に着けるようにすれば、もっともっと話し言葉に慣れやすく、やがては早口で聞き取れないといった苦しみからも解放されるのだと思います。