登山歴35年ほどです。
テント内での炊事は普通にやりますよ。冬だと晴天でもテント外の炊事など始めから不可能ですから、炊事は100%テント内ですし。(低山では外ですることもないわけではないですが)
テント内で炊事するときは、まず換気に注意してください。テントを閉め切って火器を使用すれば、簡単に酸欠になります。
ベンチレーターはもちろんですが(そもそもベンチレーターは締め切れない構造になっているテントが多いです)、出入り口も必要に応じて開閉して換気を確保してください。
それからテント内炊事での大きな危険は、炊事中の火器類の転倒による火傷です。
火器の安定に最大限の注意を払うことはもちろんです。私は20cm四方ほどに切った厚さ1cmほどのウレタンマットを敷いています。ベニヤ板等を20cm四方ほどに切った板を使っている人も多いです。
また、炊事中は火器にかけているナベ等を、必ず手で保持することを怠らないようにしてください。
火器がよく安定していても、突然の突風等でテントが揺れてナベが落ち、沸騰したお湯で大火傷、という事故は非常によく起きています。私も自分、パーティーメンバー含めると3回ほど経験しています。火傷の程度によっては自力下山ができない、すなわち「遭難」という事態に直結します。
実際問題、テント内炊事の最大のリスク要因は、この「火器の転倒等による火傷」でしょうね。
同じ「火傷防止」の意味でですが、テント内に複数の人間がいる場合は、特に「必ずコッフェル類を手で保持」は守るようにしてください。
また、その場合は誰かがテントの外に出る必要がある場合(トイレや冬山だと除雪等)は、声出し確認をしながら確実に行動するようにしてください。
私はあまり「前室」で炊事をしたことがありません。早朝にまだ他メンバーが寝静まっている時に起き出した炊事当番が、まずお茶を沸かす時には前室でやりますが、それ以外ではほとんどしたことがないですね。単独ではけっこうやりますが。
その理由は、前室で炊事を始めると出入り口が塞がれるので他のパーティーメンバーが出入りできなくなることが大きいです。単独の時にはあまり関係ないので別に前室で炊事しても良いと思いますが。
また、火器の異常燃焼等で炎を吹き上げたときは、テント内より前室の方が「テント生地までの距離」が短いのでやはり危険です。
これも昔のガソリンバーナーでは、炎を数十cm吹き上げるくらいの異常燃焼はしょっちゅう起きたのですが、最近のガスバーナーではほとんど起きないので、あまり心配しなくても良いでしょう。
また、万一火災が発生した場合は、前室でそれが起きるとテント内の人には逃げ場がない、という理由もありました。
これについては、冬山だと就寝時に雪崩などでテントが潰されたりしたときのために、パーティー各自が必ず小型のナイフを入山時から下山時まで身につけていたので(就寝時も)、このリスク要因に関しては夏山の方がシビアでした。夏山ではさすがにそこまで徹底してないので。ナイフを持っていなければ、入り口が火事になれば逃げ場はないですから。
まあ、今のテントは難燃加工が施されているので、そう簡単にテント全体が燃えるような火事にはならないのですけどね。
なので、私は昔の習慣で気持ちが悪いので前室での炊事はあまりやらないのですが、別にやっても良いとは思います。
安定した姿勢で火器やコッフェル類を保持できたり、火事になっても逃げやすいという意味では、テント内でやった方が良いとは思いますが。