私は、8年間、恵まれて解剖学教室の研究生として人体に触れることができましたが、体重の1/15を占めるコラーゲンを主とする筋膜などの《膜》構造がテーマになりました。《膜》構造は線維芽細胞から分泌された細胞間物質が主体で、神経終末が密に分布し、系統・器官を包んで支持し、維持しています。そして、iPS細胞とともに、再生医療に関わる細胞間物質を研究する細胞外マトリックスの研究とも関連しますが、従来は医学、医療の診療の対象にはなく、体の“無番地”状態になっています。《膜》構造は線維成分が疎な脈管通液路となる疎性結合組織を伴って、運動器系や内臓系、脈管系、神経系、感覚系を包んでいますが、その筋膜などの多能な“Fascia”が全身的に一連のネットワークを形成するので、私は“もう一つの系統”として、『支持身体感覚系』と名づけてしまいました。この“Fascia”はオステオパシー流で、米国では補完、代替医療の施療対象の主流になってきています。
“骨組み”は可動性とともに、筋膜などの《膜》構造が骨間隙の可動域を制限しますが、《膜》構造は作用する力がなくなると基に戻る“弾性”と、作用する時間が長いと基に戻らない“可塑性”の性質があります。ストレッチングは筋を伸ばすのではなく、《膜》構造を伸ばすことで筋の活動が容易になるのです。私は他動的なストレッチングの『ずり圧』に行き着きましたが、“体のゆがみ”を完全治癒するには、塑性の変形脱出の元手としてストレッチングや『ずり圧』などを行い、患者が本来の伸びやかな「立ち方」「歩き方」を実現したときに、清々しい本来の体に変身するのです。脊柱側弯症は「肩の左右非対称」に由来し、日常的に肩を楽にし、体の力を抜いていて、体が縮み曲ってねじれたのです。基本的には、「肩を後に退く」「お腹をへこめる」ことです。私は、ご本人の努力で完全治癒を何度も見ることができました。
脊柱側弯症の大半の“体のゆがみ”は、トラックを左回り、自転車は左からの乗り降りなどをする普遍的な“体のゆがみ”と共通で、“右前肩”で逆S字状の『脊柱』と左が高い骨盤の体幹は、右が膨らんで長く、左は尖がって縮んでいますが、四肢は左より右が縮んで曲っています。
施療は、安全に、四肢から、筋膜などの《膜》構造に『ずり圧』を密着して伸展し、動かして、伸ばします。足の裏、手のひらは、縮みがちなので、伸展し、柔軟にします。膝や肘が伸びて、踵や手首が突き出せるようになると、骨盤や肩の様子が変わってきます。頻繁に、ドガのバレリーナのように、後に手を伸ばしきって、手の甲を重ねるポーズをして、背中、お尻を小さくし、その感覚を覚えて、その感覚を楽しむことです。『脊柱』や骨盤を真っ直ぐにするには、肩、上肢、下肢を整えることが重要だったのです。私は、「人体は立つために現れた」と思いました。両肩を後に退いてお腹をへこめ、腰を伸ばして骨盤を直立させて、四肢を伸ばしきったとき、全身が一体感のある温く気持ちの良い身体感覚に包まれます。生涯、丁寧に四肢を伸ばしきる「立ち方」「歩き方」ができると、感覚が豊かで、体が自在に動き、呆けることがなく、善い睡眠をいただくことができます。
“生”を受けたのなら、自力では大変なので、施術者と協力し合って、施療を元手にして、自身本来の姿を表現し、自在に生きることも方法です。しかし、施療やストレッチング、・・・だけでは、「治す」ことができません。たまたま、その人自身の努力で治癒した人があったとき、「・・・で治った」「私が治した」という表現になるのです。
脊柱側弯症は、「治したい」という気持ちと、“重力の場”に適合した「立ち方」「歩き方」を実現する実行力があれば、別人のように清々しく雅やかに完全治癒が実現します。それを私は知って、感動しました。それは、健康!美容!アンチエイジング!を手に入れることになります。