こんにちは。
子供の頃、私も良くおたまじゃくし飼いました。カエルになるとき、何時の間にか尻尾がなくなってしまいましたね。切れたんだろうとは思ったのですが、目の前で見たことがありませんし、水槽の中に使用済みの尻尾らしきものは見当たりませんでした。これは、アポトーシスというプログラムによって尻尾の細胞が死んでしまうからだったんですね。
根元の細胞が先に死んでしまえば、手っ取り早くちょん切れてしまいそうな気もするんですが、どうも成長に従って順番に死んでゆくらしいんです。これがプログラム死と言われる所以です。
生物の細胞には寿命があり、ある程度の細胞分裂を行なうと役目を終えて死滅します。だから身体の細胞が順に新しいものと入れ替わるんですね。従来、これは細胞の壊死、もしくは自然死として取り扱われ、「ネグローシス」と呼ばれていました。最近の研究では、細胞の死にはもうひとつあって、生体のシステムの維持のために、役目を終えた物、不要なものは寿命が来なくても死滅するという、プログラムされた細胞死があるということが判りました。これが「アポトーシス」ですね。細胞をひとつの生命として捉えれば、常に自らの寿命を全うしようと勤めるのが道理です。ですから、全体のために自殺を選択するメカニズムがあるということが、当時、生命の新しい概念として受け止められました。実はこれによって、初めて「おたまじゃくしの尻尾がどうなるのか」ということがきちんと説明できるようになったんです。何とも、最近(ここ10年くらいだと思います)の話だったんですね。
ところで、おたまじゃくしは尻尾が短くなるのと同時に手や足が生えて来ますよね。最初、手足は単に棒のように生えて来ますが、やがて四肢の先端に指や水かきが出来上がります。これも手足が生えるための細胞分裂と同時にアポトーシスが起きるからです。細胞がただ分裂するだけではただの肉の塊にしかなりません。細胞分裂と平行して不要な細胞が抜け落ちることにより、指や水かきが決められた通りに造形されるわけですね。
お母さんのお腹の中にいる人間の胎児の手足もこのようにして作られます。もちろん、受精卵一個に状態から人間の身体全部が出来上がってゆくのも、言わばそんな彫刻のようなものいうことになります。
胎児は発生の時点からその作業を始めて出産で終了しますが、おたまじゃくしは「変態」という成長の時期を見極めてもう一度そのスイッチを入れ直しているんですね。チョウチョの幼虫はきれいな羽をもった成虫に生まれ変わるために、さなぎの中で同じことをやっているんですよ。不思議ですね。
お礼
すごくよく分かる説明で、生物のことをあまりよく知らない私にも良く理解できました。どうもありがとうございました。 ほんとに生物って不思議な力を一杯持っていて神秘的ですね。