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市街化調整区域って何?

 「私の住む市で福祉系施設の建設計画が持ち上がり反対運動が起きています。計画地は市街化調整区域内にあり、反対派は優良農地や自然が壊されるとしています。こうした問題でよく耳にする市街化調整区域とは何ですか」=神奈川県秦野(はだの)市、匿名

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  • SANKEI1
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■農地の真ん中に福祉系施設計画  東京都心から電車で約1時間半。神奈川県秦野市渋沢の丘陵地帯に黒土の畑が広がる。その一画、面積約4000平方メートルのホウレンソウ畑に介護老人保健施設(老健)を建設する計画が昨年10月、明らかになった。  事業主は東京都昭島市の医療法人社団。鉄筋コンクリート造り3階建て100床の施設を建設する計画で、市によると2月16日付で開発許可申請があり現在、市が審査している。  計画に対し、畑に隣接する貸し農園(約6000平方メートル)の利用者と農園主らは「渋沢丘陵を守る会」を結成して反対。問題にしているのは、建設予定地を含む周辺地域が「市街化調整区域」にあることだった。  市街化調整区域とは、都市計画法で定められた「都市計画区域」のうち街の郊外にあり開発を抑制する区域のこと。市街化「抑制」区域と考えると分かりやすい。一方、街の中心部で開発を推進する区域は「市街化区域」と呼ばれる。  国土交通省によると、都市計画区域は平成20年3月末時点で国土の26%を占め、その内訳は市街化区域14%▽調整区域37%▽いずれでもない「非線引き区域」48%。都市計画区域以外の国土は山林などだ。  守る会の代表で元会社員、岡木隆敏さん(68)は「高齢社会を迎え福祉系施設が必要なことはわれわれも理解できる。だが優良農地は農地として生かし、福祉系施設は開発を推進する市街化区域につくるべきではないか」と話す。  守る会によると、建設予定地の地主は秦野市の財政課長の男性(53)。親族から相続した農地で、自身は耕さず近在の篤農家に貸していたという。市によると、男性は21年3月まで高齢介護課長を務め、市内の老健施設を23年度に200床増やす整備計画の策定に関与した。  医療法人社団によると、老健施設は23年8月ごろの完成を目指している。 ■”無秩序な自由特区に”  本来は開発を抑制するはずの市街化調整区域だが、実際は全国で過去20年ほどの間、福祉施設や病院、学校といった公共公益施設の新設・移転が進んだ。  高崎健康福祉大学の松本恭治教授(66)=都市問題=が20年、群馬県の前橋、高崎、伊勢崎、太田の4市について「平成の大合併」前の市域で行った調査によると、特別養護老人ホームの81%、グループホームの59%が調整区域に立地していた。大学・短大は53%、病院は36%が調整区域に建てられていた。  松本教授は「公共公益目的の開発などにより、調整区域はいわば無秩序な開発自由特区と化している」と現状を話す。  公共公益施設が拡散した結果、市街地がどんどん郊外へ広がり、道路や下水などインフラ整備にかかるコストがふくらんだ。市町村の財政を圧迫しただけでなく、お年寄りが生活を送るにも不便が多くデメリットが目立つようになった。  国は19年、改正都市計画法を施行し、それまで開発許可が不要だった公共公益施設の建設を許可制とした。さらに、市街化調整区域につくることは基本的に認めないことにした。  国交省は「社会の高齢化を受け、コンパクトで歩いて暮らせる街づくりを進めるため、公共公益施設が多くの人にとって便利な場所に立地するよう、政策で適切に誘導していく」(都市計画課)と目的を説明する。こうした考え方は「コンパクトシティー(集約型都市)」と呼ばれ、青森市や富山市など先進的に取り組む自治体が増えている。  今回の秦野市での計画はこうした流れの中、例外的な開発許可を求めるものだが、松本教授は「『基本的に認めない』といっても、法律には『首長が特に認める場合』などと必ず”抜け道”が用意されている。調整区域は地価が安く、まとまった敷地が得られるし、地主側も売りたがる人が少なくないため乱開発が後を絶たない」と指摘する。  福祉施設はもちろん、病院や学校、市役所・町村役場…。誰もが利用する施設だからこそ、どのような場所に建てるべきなのか。農地や環境の保護にどこまで配慮しているか。オープンな議論が求められる時代に入っている。(徳光一輝)      ◇  「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。

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