百貨店が差別化するところは、接客しかないと思います。
スーパー、ネットショップ、コンビニと百貨店でしか手に入らないものというのはほとんどなくなってしまいました。
しかしこれらの店舗は「安売り」がサービスであり、そのための人件費を抑制して運営しています。
そのためお客は自分で商品知識をもって選ぶか、または安価な方を選ぶかの選択肢しかありません。日本の小売業界には「きちんとした商品知識をもったプロが時間をかけて接客する」という選択肢がほとんどないのです。
今では同じものを安く買うことが出来るのですから、「定価」で販売する分の「付加価値」がなければいけないと思います。それが百貨店なら接客という方法で付加価値を高めることができると思います。
ちなみに「きちんとした商品知識をもったプロが時間をかけて接客する」という付加価値のつけ方で売り上げを伸ばしている業界がひとつだけあります。それは電気機器小売業です。
いわゆる町の電気屋さんは、郊外型の安売り大型店に客を奪われたのですが、最近商品知識の無い方(特に高齢者など)を対象に、ご自宅まで行ってカタログ販売と相談に乗る・購入時にはセッティングやリモコンの使い方なども説明して納品する・納品した商品に不具合または問い合わせがあればご自宅に伺って対応する、などの個々にきめ細かい対応をすることで生き残っているのです。
電気機器についてはあまりにも高度な内容であり高額商品が多いため、ヨドバシカメラとかビックカメラなどでも高度な商品知識を有するコンシェルジュ制度を導入して売り上げに貢献しているようです。
翻って百貨店はどうでしょう。カルティエやティファニーなどの高級品は接客販売が当たり前ですし、化粧品も対面販売が一番の売り上げを上げていると聞きます(特に資生堂はノルマをやめて、顧客満足度に指標を変えて売り上げを伸ばしていますよね)すでに百貨店内でそのようなプロがいっぱいいてシステムも出来ているのに、それを活用する手はないのでしょうか。
たとえば靴売り場なら、シューフィッターなどの認定自体があります。男性のスーツなどもTPOに合わせたネクタイ・シャツなど相談することはいっぱいあるでしょうし、少しお金が出来たからセミオダーしてみたいという顧客の掘り起こしも出来るはずです(オーダーの背広は着てみればやはり違いますから)
女性の服などはちょっと難しいものもありますが、単品の服だけで考ええるのではなく、結婚式へ着ていく服を探しにこられた若い女性には、着こなしのTPOやテーブルマナー講座のご案内(もちろん買ってもらったら無料で招待)などの副次的なニーズがたくさんあるはずですし、百貨店ならレストランやサロンそして化粧品売り場、場所によっては美容室など総合的に女性をプロデュースことが出来るはずです。
私が百貨店の総支配人なら
・すべての売り場階にコンシェルジュデスクを置き、相談に乗りやすい体制をとる。
・すべての従業員に無線をもたせ、ご案内の必要なお客様をお待たせしないようにする。(売り場階を跨ぐようなご案内なら特に必要)
・一度受けたお客様の相談は(購入にいたらなくても)すべて記録し、次の来店時のアドバイスに役立てるようにする(百貨店のカードを持ってもらえば難しくないはず)
をすぐに導入し、後はその地域の特性に合わせて展開します。
いい百貨店とはサービスの行き届いたレストランと同じだと思います。心地よいレストランは、たとえばお酒がなくなり頼もうと周囲を見回すとドリンクメニューをもって現れたり、コースの皿が空くタイミングで次のお皿を完璧な温かさで持ってきてくれるようなところです。それはお客様の全部を見ている接客の指揮者と厨房が一体になっているからできることでしょう。
そのようなレストランなら何度も足を運びたいですし、(味もありますが)少々高くても納得できます。
しかし最近の百貨店はスーパーと同じですね。売り場で周囲を見渡しても、相談できそうな店員は近くにいませんし(逆にずっとくっついて売ろうとするウザイのはいますが・・・)相談しても商品知識に難がある、または明らかにほかの仕事をかたずけたいと思っている人が多くいます。
靴ひとつとってみても同じようなミュールでも高い商品にはそれだけの価値があるはずです。お客様に納得してもらえばその対価を得られるはずです。
お礼
詳しく丁寧なご回答ありがとうございます。 確かに昔の街の電気店といえばサービスがよかったと聞きます。 今の家電量販店もそうですが。 本当にありがとうございました。