向きも後ろ向きもない、肯定も否定もしない、ただただ女同士の恋愛を描いた作品として、
松浦理英子氏の『ナチュラル・ウーマン』
があります。
これはレズビアンの間ではバイブルと言われ続けてきた小説です。
ジャンルの問題は種々ありますが、一応、「純文学」というジャンルに入る作品です。
松浦氏の意図としては、純文学として、人間同士の関係性を描こうとし、そのために「女」と「女」の恋愛を描いたにすぎないようなのですが。
(そういう意味で、私自身はそれまでの人間観ががらっと変わりましたし、レズビアンという括りではなく、「文学」として、多くの人に読んで欲しいなと思っています)
この作品が、レズビアンを描いた文学としては最高傑作ではないかと思います。とはいえ、他にまともにレズビアンをテーマにした文学はないような気もしますが。
あと、レズビアン小説といえば、中山可穂氏の作品が、ほぼすべてレズビアン小説です。
こちらは、いわゆる「大衆小説」に入る小説です。とてもせつなくて、涙が出てきてしまうような小説ばかりです。
いわゆるBL小説に対する「百合小説」以外の小説で、レズビアンを扱ったものというのは、この2氏の作品に尽きるような気がします。
そして、どちらの作品にしても、「前向き」とか「肯定的」とか、そういった肩肘張ったものではなく、また「女が女を愛して何が悪い」とか、そういった主義主張をしているような小説ではありません。
ただ自然に「女が女を愛している」「好きになった相手がたまたま同性であった」というだけであって、そこから生まれる葛藤とか、哀しさとかが描かれている作品だと思います。
※外国の作品については知識がないので、あくまで日本の作品で、ということで回答しました。