こんにちは。
皆さん悩んでおられますね^^;
私もファンタジーの定義については、だいぶ悩んでいます。ファンタジー世界と言われて誰もが考え付くのが、妖精や魔法が登場するソードアンドソーサリー世界でしょう。しかし、「不思議の国のアリス」や「メリーポピンズ」のような作品にはエヴリデイマジックという呼称が使われているようですが、それはファンタジーなのかどうだと言われると即答に詰まってしまいます。
ファンタジー文学は、日本語ではそのまま直訳で「幻想文学」と言います。幻想と言うと、現実と違うこと全てが当てはまってしまうような気がしますが、それならノンフィクションじゃない(言葉として変ですが)作品は全てファンタジーか、と言われると、そうでもないですね。「サザエさんがファンタジー」なんて言われたら首を傾げてしまいます。ならどこからどこまでがファンタジーか、これが本当に悩みどころですね。
「ノンフィクションじゃない」作品は、当然ながら「フィクション」と呼ばれます。ファンタジー=幻想文学に対し、フィクションは空想文学と訳されるようですが、この「幻想と空想の差」がファンタジーの定義域を示してくれているのではないでしょうか。ファンタジーも「ノンフィクションじゃない」と言う意味では当然フィクションなのですが(本格的にややこしくてすみません^^;)、便宜的にノンフィクションではなく、ファンタジーでもないものをフィクションと呼ぶことにします。文学と言うと堅苦しくなるので、物語としましょう。順序が逆になりますが、空想物語と幻想物語の対比。
■空想物語(フィクション)
……現在の現実世界の定義の上で繰り広げられる、現実とは違う振る舞い。非常に近い未来、もしくは現在・過去において、存在しうる可能性がある物語。
■幻想物語(ファンタジー)
……現実とは定義を異にする世界の物語。現在の現実世界の定義では起こりえない事象、事柄。予測できない遠い未来。
なんてところでどうでしょう。空想の欄で「現在の現実世界の定義」などとわかりにくい言葉を使ったのは、時がたつにつれて世界の定義が変わるからです。大昔の人は世界が平らな盆だと信じていましたし、自分たちの住処のそばには鬼や妖精といった生き物が住んでいると信じていたでしょう。今となってはそれは幻想に当てはまりますが、過去の人にとっては空想、自分の生きる世界への思惟だったはずです。
さて、ちょっと悩んでしまうのは、最初にあげたエヴリデイマジックのような作品と、あとはSFというジャンルの存在ですね。
エヴリデイマジックは、「現在の現実世界の定義」と同じ世界の中に、いわば異物とも言える不思議な存在が迷い込んでくる物語です。たとえば「となりのトトロ」なんかもそうですね。あくまでも主人公は私たちと同じ現実世界の平凡な人間であることが多く、「不思議との邂逅」が主題のひとつだったりします。これはフィクションの中にファンタジーが浸入しているわけで、結論としてはファンタジーに分類されるようです。ならどこまでがフィクションで、どこからがエヴリデイマジックか・・・。ああ、頭が痛くなりますね(苦笑)
次にSFです。最近はSF=サイエンスフィクションが一般的のようですが、私が小さかった頃はスペースファンタジーの略だと教えられました。実際、サイエンスフィクションよりもスペースファンタジーと呼ぶほうがしっくりくるようなSF作品もたくさんあるので、曖昧にしておいたほうがいい気もします(スターウォーズがサイエンスフィクションだなんて、とんでもない!)。
しかし、Fの解釈が二様なのはちょっと見過ごせないですね。フィクション=空想とファンタジー=幻想。先ほどファンタジーの定義の為に差別化した二つの言葉です。SFはフィクションなのかファンタジーなのか。これがかなり難しいところです。例えば「凄腕ハッカーが政府のコンピュータにアクセスする物語」なら、これは現実世界において可能なことであり、フィクションと呼べます。「科学が非常に発展した未来での宇宙戦争」や「タイムマシーンで時間旅行」「多次元宇宙を冒険」は間違いなくファンタジーです。SFと呼ばれている作品の中には、フィクションと呼べるものもファンタジーと呼べるものも存在しているのです。そして、もっとややこしいものもあります。たとえば瀬名秀明のパラサイト・イヴのような作品。100年前に書かれていたら間違いなくファンタジーですが、科学の発展が目覚しい現在では起こりうるフィクションともとれます。SFというジャンルが、科学と言うあらゆる可能性をもった新しい魔法を扱う物語ですから、半ば何でもありな状態で、その全てをファンタジーかどうか定義づけるのは非常に難しいですね。SFを細かく分類すればいい話なんですが、質問とは話がずれすぎると思いますので、やめておきます。
とりあえず、ファンタジーの定義はこんな感じだと思います。一部不明瞭ですが、そこは幻想だけに曖昧ということで・・・(逃)。
ファンタジーのよさですが、これは書き手にすれば「世界を描く楽しみ」であり、読み手にとっては「世界を感じる楽しみ」ではないでしょうか。極端な話、冒険でも恋愛でもなんでも、物語のあらすじだけならば別の世界にトレースできてしまいます。例えば質問にタイトルを挙げられたハリー・ポッターシリーズですが、魔法学校を普通の学校、クィデッチをサッカーか何か、さまざまな魔法を化学的なトリック、ついでに悪役のヴォルデモート卿を番長か何かにしてしまえば、それで似たような話ができてしまいます。ファンタジーの、他に置き換えがたいよさと言えば、それは世界観の一言に尽きると思います。世界を魅力的に描いている作品は良いファンタジーと言えるし、世界に魅力がなくても面白いファンタジーがあったら、それは書き手が優秀だったのでしょうね。
ただ、作品を楽しむときは、しちめんどくさいジャンル分けや、どこがいいかなんて評価は考えず、純粋に作品に向かうことをお勧めします。これだけいろいろ言っておいてなんですが、文学の分類に頭を悩ますのは評論家と本屋さんで十分、読者は気楽に読めばいいのです^^
では、失礼します。