キャンプでの練習時間の違いは、野球に対する考え方の違いも影響しています。 日本では四月上旬の開幕に照準を合わせています。 いわば、短距離のスタードダッシュのように、ここに集中しています。 一方、大リーグで実績のある選手は、ポストシーズンにピークが来るように身体を慣らしています。
ヤンキースの松井秀喜選手にいろいろ助言をしているレギージャックソンは現役時代『ミスターオクトーバー』(10月の男)といわれていました。 夏場から力を出し始め、ピークをきちっとワールドシリーズに合わせて来る。 そして、その長丁場の最終である、第七戦になると、不思議に力を発揮して、チームを栄冠に導く。
三月、四月とまだ肌寒い時に無理をしない。 身体が温まって来る六月頃から、次第に調子を上げてくるというチームもあります。 アリーグ西地区のオークランドアスレチックスは、その典型的なチームのひとつです。 ほとんど毎年ポストシーズンに進出して来るヤンキースもそんなチーム戦術を採っています。 ヤンキース一筋だったバニーウィリアムスなど、例年四月は一割台の打率でスタートし、夏場にはきっちり三割に上げて来ます。
大リーグのスプリングキャンプでがんばってやっているのは、殆どが招待された選手です。 彼らはここで実績を出さないとマイナーに落とされるか、契約して貰えません。
2001年、イチローの大リーグでのルーキー年、彼はキャンプで実績を出すようにかなり飛はしています。 四月、三割三分を越える打率を残しています。 これは日本でプレーした七年間でもなかったことでした。 その後は四月は二割台です。
例外は昨年で、これは春先の三月にWBCがあったためです。 春先は順調でしたが、七八月にスタミナ切れを起こし、同時にチームもアスレチックスに屈辱の15連敗。 これで一気に沈んでしまったのは記憶に新しいところです。