こんにちは。
ふたつの切り口から考えて見ました。
1.ヨーロッパにおける異国趣味(今回のケースでは19世紀末から20世紀初頭の日本的趣味の流行)
19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパはちょっとした日本ブームだったそうです。
(きっかけのひとつはパリで行われた万国博覧会だったようです)
主に美術・工芸分野でのことではありましたが,もちろん芸術家同士の交流はさかんでお互いに影響を受けていましたから,ラヴェル・ドビュッシー・それに続く人たちもその影響は受けていたのかも知れません。ドビュッシーの「海」は,それを最も端的に示す例でしょうか。(スコアの表紙が浮世絵だったというだけという説もあるらしいですが)
もう少し広い話で言えば,音楽における(もっと言えば音楽に限らず)異国趣味,というのはいつの時代にもあるもので(例えばモーツアルトに見られるトルコ趣味,ブラームスのハンガリー舞曲,異国を舞台にしたオペラの数々,など),ちょうどその頃は日本ブームだったのでそれに乗って和風の響きも取り入れてみた,というのもあるかもしれませんね。
ただし,ラヴェルやドビュッシーやイベールが日本の音楽の事を知っていたかどうかは分かりませんし,挙げていただいた曲に日本からの影響があった,という話は私は存じ上げません。
2.ドイツ・オーストリア的な調性音楽に代わる音楽表現技法として
古典派以降,クラシック音楽の主流を占めてきたドイツ・オーストリア的な調性音楽は,ワーグナーやマーラーに至って,とうとう臨界点に達しました。
ウィーンでは調性にかわる新しい秩序として十二音技法が登場しましたが,フランスではより感覚を重んじる方向に向かったようです。
調性音楽の最大の特徴は,三度ずつ隔たった音程による三和音(例えばド-ミ-ソ)が基本になっている事,属和音が主和音に解決する(ソシレ-ドミソというコード進行がある)ことです。フランス近代音楽ではこのような和音やコード進行を避ける事で,「ドイツ・オーストリア風調性感が薄い」響きがうまれました。
彼らが特に日本風を意識したのではなくて,その響きが日本人には日本風に感じられる,という部分もあるのかもしれませんね。
(例えば,オクターヴ内のピアノの黒鍵を全部一度にたたくと,私たちには日本風に聴こえるかもしれませんが,それは全世界の人に共通の感覚ではないと思います。)
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以上,完全に主観ですが,よろしければご参考にしてください。
お礼
ブームというのは、特に必然性もなく起こるもので、しかも結構広範囲な影響力があるので、無視できないかもしれないですね。それが長期間続くと今度はブームでなく、文化として定着してしまいます。日本の白鳳文化なんてそんなだろうか?でも、ブームによって自信の作風を変化させているとしたら、それは柔軟な精神だと思います。 調性音楽の破壊のしかたが、フランス流であって、それがはからずも日本風に近い、というのは非常にありえそうな気がします。私もそう思いました。