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海辺のカフカのナカタさん
友達に海辺のカフカをもらいこの間読み終えました。15歳の少年のことは理解できたのですが、ナカタさんのことが今いちよく理解できませんでした。彼はどうしてある日の事故以来記憶をなくしてしまったのですか?あの日山に行き、入り口の向こうへ入ってしまったんでしょうか?それにナカタさんと図書館で働いていた柏木さんとのつながりもいまいちよくわかりません。二人は影が半分しかなかったんですよね。それって二人とも自分たちの半分を入り口の向こうにおいてきてしまったからですか?皆さんはどんな風にこの作品を解釈しているのか聞かせて頂きたいです。
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それほど村上春樹の作品を読んでいるわけではなく、ファンとは言えないのですが、私も最近これを読みましたので、いくつか気づいたことを書きます。 質問の答えは第32章、文庫本の下巻172ページにあります。 「ナカタは一度ここから出ていって、また戻ってきたのです。」 戦争中に何かの拍子で蓋があいて出ていき、また何かの拍子に戻ってきた。そのせいで「ナカタは普通のナカタ」ではなくなり、影も半分しかなくなってしまったとナカタさんが星野青年に語っています。 どうしてかについてははっきりとは書かれていない。すくなくとも今見つけることは出来ませんが、第8章および12章あたりがヒントかな、と思っています。 佐伯さんは第42章下巻の355ページで「ずっと昔に私はあるところでそれに巡り合ったのです。」と言っています。 それで「海辺のカフカ」の曲が生まれたと言うか、見つけたとどこかに書いてあったような…。 第42章356ページ、「私が遠い昔にあの入り口を開けてしまった」と佐伯さんは言っています。その理由は360ページ「でも彼を失わないために、(略)石を開かなくてはならないと私は心を決めたのです。」とあります。 「ものごとをあるべきかたちにもどすこと」 そのために入り口の石を開け、佐伯さんの書いた物を燃やすことがナカタさんの役目で、佐伯さんはナカタさんが来る「その時」を待っていたのだと思います。 あなたが世界の縁にいるとき 私は死んだ火口にいて ドアのかげに立っているのは 文字をなくした言葉。 「文字をなくした言葉」とはナカタさんのことだと私は思います。 第10章でナカタさんが「通電状態」になって意識の周辺の縁をさまよう場面があります。 「あなたにはその資格がある」と佐伯さんが言ったのにはこのことも関係しているかもしれません。 いずれにしても佐伯さんはカフカ君の問いかけに何も答えず、彼女自身のことを書き表したものは焼かれてしまったので、謎は謎のまま残ってしまった。 作品の解釈についてですが、それほど読み込んでいないので、いま、書けません。 「役割として必然なものは、そこに存在するべきだ。それがドラマツルギーだ」(128ページ)。 「海辺のカフカ」をひとつのドラマと見れば、ここに書かれているものは何らかの必然性があって書かれているのでしょう。 読者としては書かれたものから何かを読み取り、そこからまた自分のドラマを構築すれば良いのだと思います。
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- la-luna
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大の春樹ファンです。 まず、春樹さんの作品一般についてですが、いつも多くの謎が残ります。 謎は謎のまま、その余韻も含めて、ひとつの作品なのだと私は理解しております。 特に春樹さんの作品は、そういった謎の部分についての手がかりが非常に少なく、ご本人自身も考えてないのでは!?と疑いたくもなるくらいですから(笑)、「これ!」という明快な解答がない、というのが解答かと思います。 で、本題のナカタさんですが、質問者さまのご推察どおり、ナカタさんは「意識」の中で、「あちら側」に行ったのではないかと思います。 ナカタさんは、意識不明の状態が長く続いていましたが、その間「あちら側」にいたのでしょう。 (そして半分の影と、記憶と、性欲を含む一切の欲望・エゴを置いてきてしまった、あるいは失ってしまったのではないでしょうか) その原因は、山に登る前に皆が見た「ジェラルミンのような光る飛行物体」のせいかもしれませんし、先生に殴られたことによる(そして信じていた先生に「裏切られた」という)ショックのせいかもしれません。 佐伯さんについてですが、二人とも「あちら側」に行った、という点にあるように思います。 佐伯さんの場合、佐伯さん自身が言っていますが、恋人との完璧な世界をとどめて置きたいと強く願ったために「扉」を開けてしまったから「あちら側」に行くことができたのです。 「あちら側」に行くためには、ホシノさんのように重い石をひっくり返さなくても、精神的な要素だけでも行けるからです。ナカタさんも、物理的には移動していませんし。 そして、「あちら側」に自身の一部を置いてきたのでしょう。もしかしたら影も置いていったのかもしれません。 (それが、カフカくんが夜の図書館で出会った少女であり、カフカくんが「あちら側」で出会った少女なのではないでしょうか) ナカタさんがどうして佐伯さんのところへ一直線に来られたのかは不明です。 何かと不思議な能力のあるナカタさんですから、「あちら側」に帰るべきときが来たことを察して、一緒に帰るべき佐伯さんを迎えに行ったのではないでしょうか。 ここでの「帰る」行為はつまり、「死」ということになります。 くどいようですが、謎は謎のままですから、こだわらないのが一番かと。 とても好きな作品なので、長々と書いてしまいました。失礼しました。
お礼
詳しい回答ありがとうございました。大変参考になりました。 >(そして半分の影と、記憶と、性欲を含む一切の欲望・エゴを置いてきてしまった、あるいは失ってしまったのではないでしょうか) 同感です。 同じ本を読んだ読者の皆さんからの意見を聞けて大変うれしく思います。人によっていろんな捉え方があるのだなとつくづく思いました。
- akkyi3377
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こんばんは。 実はもう大分前に読んだので随分忘れてしまったのですが、私もこの小説の数々の謎はすっきり解けませんでした。 はっきりした答えはあるのでしょうか? それぞれの解釈があって良いのではないかと思います。 「少年カフカ」のことはご存知ですか? この小説に興味を持ったなら読んでみると面白いと思いますよ。
お礼
詳しい回答有難うございました。madgeさんの回答を読ませて頂いてかなりすっきりしました。