>広大な国土を所有し、国を富ますには人口が増えても問題ない
この考え方は現在では正しくないと考えられます。そのことについて少し長くなりますが、説明させていただきます。
人が生活していくためには食料を初めとしてさまざまな物資が必要です。人類が現在のような文明を築いてこれたのは今からおよそ9000年前にメソポタミア地域で麦の栽培を始めたことに由来します。つまり、農業によって食料を自分たちの手で作ることができるようになり、多くの人口を養えるようになったのです。
さて、農業を行うためには土地が必要ですし、土地が肥えているとか痩せているとかで条件の差異はありますが、結局のところ耕地面積が大きければより多くの穀物生産が可能であり、農業に従事しない人間を含めて多くの人口が養えます。言い換えると農業生産が「富と国力」のもとであり、その結果として多くの人口がある国が強国・大国であったのです。
しかし、およそ250年ほど前にイギリスで産業革命が始まり、生産の中心が農業から工業に移り工業力が国力の目安となっていきます。特に20世紀になりますと化学工業などの発達などで工業製品(化学肥料やトラクターなど農業機械)が農業生産の拡大を可能にして、工業力が富や国力の源泉となります。
そうした中で中国共産党を率い、国民党と争って中国を統一した毛沢東は農民出身ということもあって、人口増加が国力の増大であると考えてしまいました。人口が多ければより多くの生産が出来て国が豊かになると思ったのです。しかし、今まで述べてきたことで判りますように、農業が生産の基本であった時代には人口の多少が国力の強弱に直接的に比例していましたが、現代は必ずしもそうではありません。
マルサスという人が18世紀末に「人口論」で述べたように人口の増大と食料生産とでは人口増大の方がスピードが早いので、食料生産が追いつかなくなる時がいつかやってきます。工業化の進展により食料生産能力も増加したのでマルサスの予想ははずれた様に思えますが、現実に飢餓が生じてから対策を講じようとしても遅いのです。
また、急速な工業化の進展により地球の資源に限界があるということが理解されてきました。「限りある地球」ということです。農業中心社会であれば地球の環境に対してもダメージを与えることは少ないのですが工業化の進展により環境問題などが現実のものとして現れてきました。
で、中国政府首脳も遅まきながらそのことに気がつき1979年から人口抑制策をとるようになりました。これが「一人っ子政策」ですあり、豊かさを維持する為というのが真の目的です。
長くなりましたので最後にまとめますと、無制限な人口の増加は国力を増すどころか社会の不安定要因を作り出すということが現在では理解されています。(ただ、同時にその国の人口構成のあり方も問題ですがそれはお尋ねのコトとはまた別の問題ですので割愛いたします。)