自動車をはじめ、プロダクトデザインを仕事とする上で一番大切なものとして求められる資質は発想の自由さ、多彩さ、幅広さでしょうね。「オリジナリティに富んだ良いもの」を生み出す発想、つまり創造力がなくてはこの仕事はできません。
その発想(アイデア・イメージ)を頭の中から取り出して紙の上に表現する.....この段階で表現力が必要になります。自分が抱いたイメージを余すところなく表現して、しかも他人に共感を与えるには、やはりそれ相当の「絵」の才能が欠かせません。
一部にCADがあるから大丈夫....という意見もあるようですが、アイデアやイメージは次から次にと沢山出てくるものですし、また実際に沢山求められます。だから、いちいちCADに頼っているようでは間に合いませんし、その操作の段階で当初のイメージはどんどん変化してしまいます。デザイナーたちが相変わらず画材を使って紙の上にイメージスケッチをするのもそうした理由からです。
では発想が豊かで表現能力もある.....ならカーデザイナーになれるかというと、まだまだ足りないものがあります。
自動車という工業製品は技術力、デザイン力、工業力、市場調査能力、販売力と、大変幅広い知識と技術の集大成として作り上げられているものです。
構造力学、材料力学、運動力学、流体力学など「基礎工学」の粋であるばかりでなく、居住性や操作性、視認性といった人間工学の分野や、経済性、生産性、市場性、コスト解析といった「作って売る」分野での解析の粋でもあります。
もちろん、大手メーカーともなると、これらの解析もそれぞれの部門で行われますが、それにしても、かなりのレベルの基礎知識や日常の勉強がないと、たとえイメージを生みしてみても、そこには現実性が乏しく、結果として効率の低い、役に立たない仕事に終始してしまいがちなものです。
一時期、わたし自身、大手メーカーのデザイナーチームやイタリアの有名デザイナーたちと一緒に仕事をしたことがありましたが、彼らの造詣の深さと広さ、それに、どんな細かいところでも不満があれば手を入れる、そのごたわりには本当に驚いたものでした。
自動車が好きで、自動車とはなにか、どうあるべきか、ユーザーが自動車になにを求めているかを肌で感じられる人.....ある意味ではカーデザイナーにとって、これが一番大切だとここで言い直してもいいかもしれません。
あなたが、ご自分こそこの仕事に向いているとお考えなら、優秀なデザイナーになることを目指してがんばってください。
お礼
専門的な知識を下さり本当に有り難うございます。 やはり絵を描く力は必要なのですね、そしてなにより全てのバランスを考えてデザインする力が必要になってくることがよく分かりました。それらの力を手に入れるために一生懸命勉強や絵を描くことに励みたいと思います。