当時アメリカに住んでいてリーマン・ブラザーズ経営破綻の前から毎日サブプライムローンの問題をウォールストリート・ジャーナルなどで読んでいました。と言っても専門家ではないので最初はサブプライム・ローンの仕組みと問題が何のことかわからなかったのですが、記憶では2008年の5月くらいから毎日の様にその名前を見るようになりました。自分が住んでいた住宅地近辺で、家を売りに出すところが急に増え、また家を借りていた友人が2人ほど大家が破産したとのことで債権者の銀行から1週間以内に立ち退きをさせられたりしたのを見て何が起こりつつあったのかを勉強しました。
その時点でこのサブプライムローンの問題がどれだけ大きな問題に発展するか、予測した人もいるとは思うのですが、理論的に予測すると言うよりは勘の域を出なかったのではないかと思います。リーマン・ブラザーズへの影響に関して言うと、リーマン・ブラザーズの資産の中にどれだけサブプライムローンが含まれているかを事前に丹念に調べないと、予測はできなかっただろうと思います。と言うのもサブプライムローンの問題はサブプライムローンを含んだ金融証券の信用の問題でもあるので、多くの人が信用しなくなると雪崩的に信用低下が拡大していくと言うもの。ほんのちょっとしたことでどう転ぶか予測が難しかった。それと、サブプライムローンの仕組みはそもそもが誰にもリスクがわかりにくくするために巧妙に作られていたことがあって、世界中の金融商品の中に組み込まれ、見えにくくもなっていました。危険は理解してもいつ誰にどのように、どれくらいの影響があるのかを予測するのは難しかったんじゃないかと思います。
日本ではリーマンショックと言ってリーマン・ブラザーズの倒産を大きく扱っていて、最大の結末の様に言っていますが、アメリカではGreat Recession (大規模景気後退)と言っていてリーマンはその中の一部。景気後退が明らかになるにつれ、大手の金融機関のほとんどすべてが危機に瀕しむしろリーマン以外の会社の名前のほうが新聞に飛び交っていたのを覚えています。それらは倒産したり政府の支援や会社更生法で生き延びたりしたのですが、リーマン・ブラザーズは倒産を選択した中で最も大きかったと言うだけの話だと思っていました。すると日本で名前が知られているせいか大騒ぎになっていて逆にびっくりしました。海外の人に「リーマンショック」と言っても、日本人がそう言う言葉を使うことを知っている人以外には通じないし、意味から言ってもおかしいと感じると思います。
だから、リーマン・ブラザーズに絞って予測した人がいたとしたら、リーマン・ブラザーズの関係者くらいでしょう。