それはおそらくクリスティの『ABC殺人事件』を言っているのだと思います。
正確に言うと「同じトリック」ではないのですが……。
『不連続…』は、純文学の作家である坂口安吾が、“日本の推理小説界に挑戦したもの”と、雑誌連載時から話題になったようですが、連載途中で横溝正史は「これはクリスティの『ABC殺人事件』の複数化だね」と指摘して、犯人を見破ったのだそうです。
以来、この横溝の指摘が『不連続…』に被せられることも多いのです(その横溝は、この作品にインスパイアされて『八ツ墓村』や『夜歩く』を書いた。確かに『夜歩く』は雰囲気も登場人物の設定もよく似ています)。
坂口安吾は、昭和二十年代、ディクスン・カーのトリックを中心としたミステリの影響を強く受けていた日本の推理小説を“人間の心理を不自然に歪めたもの”であると批判しており、同じ翻訳ミステリでも、動機を重視したクリスティの作品を愛好していたようです。
ただ、個人的には同じクリスティでも『スタイルズ荘の怪事件』『ナイルに死す』なんかの方に似てるかな、と思いました。
登場人物は人数の多さもさることながら、過去の関係が入り組んでいて、やたらややこしい(それこそ作者のねらいでもあるのですが)。
雑誌連載時には、すべてが出そろった時点で、読者に挑戦状が出され、懸賞金まで出たそうです。
質問者さんも、登場人物の関係図を作りながら頭をひねって、安吾の挑戦に応えてみてください。
お礼
ABC殺人事件は読んでないのでよんでみます。どうもありがとうございました。