野菜畑と花庭でも虫はどちらも寄ってくるものなんですが、寄ってくる虫の種類や数の多さが違うだけです。
「虫によって食べる餌が違う。」まずはこれが基本。花が咲く植物だと花の蜜や花粉を食べる虫が寄ってきやすいです。これらは植物と共存関係なものが多く花にとっての害虫はほとんどいません。たまにセイヨウマルハナバチなど盗蜜(蜜が溜まっている部分から直接盗むので受粉が伴わない)や、蜜や花粉目的で寄って来た虫を狩るクモなどはいますが・・・。
花が咲く植物の場合、土質や環境から軟弱に育ってしまえば害虫が付きやすくなりますが丈夫に育っていれば害虫(葉を食べたり植物の汁を吸う虫)は付きにくいんです。植物の細胞レベルからの丈夫さから害虫が食べるには食べにくかったり汁が吸いにくくなっているから。花は花がより綺麗に見える事重視で改良されているので他の部分は元々の原種とそれほど質が変わりません。なので花や実・種子を食べる害虫が付いたりするものの、土質や環境が合っていて肥料の成分や肥料が適切に与えられてさえいればそんなにひどい害も無いのです。
でも野菜の場合は事情が違います。人が食べるのに都合が良い様に改良され尽くされているので、人の手入れが適切でないと虫がとても付きやすくなります。
特に「人が食べやすい柔らかさと味、育ちの速さを重視し改良されてしまっている」ので、そういう野菜ほど「害虫にとっても食べやすく美味しい」んです。
虫には同じ種類の仲間同士で意思疎通を図る為にフェロモンなどの匂いを出し・感じ行動する性質があります。そして好条件だと短期間で爆発的に殖える種類が多いです。
個人的な感想ですが野菜の害虫の発生具合は、元々合わない土質や肥料の成分の偏りや量が多い事により酷くなりやすいです。
特に葉物野菜だとこの点に気を付けなければ害虫の大発生に陥る事も多いです。
植物の細胞レベルでの生育に特に関係している窒素分を多く与えすぎたり土壌に残留している事で葉野菜に害虫が大発生してしまう事は珍しくありませんし、水の与えすぎや日照の不足など細胞自体が軟弱になると虫が食べやすい状態になり易いです。
「野菜は肥料で育つ」と考えてしまう人も多く、その為に家庭菜園では野菜に虫が付きやすくなる場合も多いです。
実は野菜でも栽培次第では害虫の大発生などを防げるのですが、一番手間の無い方法は「肥料を与える量を少し控える」こと。
極端に言えば、土質さえその野菜に最適で堆肥の種類や量を守ってさえいれば野菜は丈夫に育ちますし、害虫の発生具合もそれほど気にならない程度です。元肥を入れていけば生育もします。
ただ、野菜でそれだけだと人が食べるには食感が固かったり味が足りない事も結構あるんです。水を好む野菜だとそこそこ瑞々しくはありますが、柔らかさや甘さなどが市販の物ほどにはならないし、水分の少なめな野菜だと筋っぽくなったり食べにくくなりがちです・・・。
よく植物が、その植物にとっては過酷と思われる場所で健気に生えていたりしますよね?そういう植物には不思議とあまり害虫は付きません。それは植物自体の生命力が強いので害虫が付け入る隙が無いのです。ギリギリの条件で生きてると細胞も頑丈だし虫が好む味にもなりにくい。さらに種類によっては植物の香りが強くなりその香りが虫を寄せ付けない働きをしています。
ハーブと呼ばれる種類がその典型。ハーブでも本来好む環境や栽培法ではなく野菜の様な育て方をしてしまうと香りが薄くなったり悪くなったりしがちですし、害虫が嫌う香りを放出するはずが逆に害虫に好まれて食べられてしまう事もあり得ます。
「人がより美味しく食べやすく栽培するため」には適切な時期に適切な種類の肥料を適切な量与えなくてはなりません。そしてその量が多いほど害虫にも狙われやすい・・・。
なので近年の改良では特定の害虫に対して耐性を持つ品種と言うのも結構多くなりました。また、栽培環境を整える事で(温室やビニールハウス内に害虫を寄せ付けない防虫ネットや害虫を駆除してくれる益虫や有用菌などの導入)野菜を柔らかく美味しい物を害虫の害に逢わずに作れる様にも成ってきました。
そんなわけで花栽培だとそれほど害虫は寄って来ないのです。もちろん花の観賞が目的の種類でも合わない環境で育てたり、葉の生育の為にと窒素分を与えすぎれば害虫は寄って来ますが、元々花目的の植物に窒素が効きすぎると花が咲きにくくなるので、それが無い限りは害虫の種類も数も少ないのです。また花や葉の香りで虫を寄せ付けないと言うのもあります。
野菜の場合、元々花や葉に強い香りのある種類は少ないですし、栽培方法も人が食べやすいような状態に育ち易い物。なのでお母様も庭に野菜畑を作ると虫が寄ると仰るのでしょう。
庭で野菜を作りたい、害虫も出来る限り抑えたいとお考えになると結構手間がかかります。
まず、野菜に向く土質かどうか?土質によっては何年もかかる土壌改良が必要だったり酷いと余所から運んできた土に全取り換えする必要があったり、水はけが良くなく暗渠を設けなければならない場合もあります。
野菜を栽培すれば手間もとてもおおくなります。適期に間引いたり定植したり摘心したり、水遣りも花よりも頻繁にすることになりますし、害虫が心配なら予防の農薬散布なども必要に成ります。特に農薬散布は薬剤の種類によっては住宅地だったり家に近い庭では危険性を伴う場合も・・・。
工夫によっては、益虫を導入したり害虫を食べてくれる生き物を庭に寄せる工夫をしたり(テントウムシ・カマキリ・トンボ、トカゲやカエル、野鳥など。でも近年は鳥インフルエンザの事で野鳥の餌付けもままなりません・・・)の方法もありますが、益虫や有効な動物は人に嫌われる物も多く周囲の理解が無いと難しいです。
手軽に取り入れやすい方法は、ハーブなどのコンパニオン植物を野菜と一緒に植えての栽培でしょうか。
トマトの傍にバジルを植えたり、カボチャの傍にネギを植える等インターネットで調べるといろいろな例があります。ただ、ハーブの中には直接地面に植えてしまうと蔓延って大変な物もあるので鉢やプランターに植えた物を野菜の傍に置くなどの工夫が必要。
あと、害虫が寄りにくい野菜だけ栽培すると言う方法もあります。こういう物には宿根草が多いので栽培の手間も省け初心者向きです。
ネギ類、ミツバ、ミョウガは一度植えれば毎年生えてきますし、一年草扱いのシュンギクやゴボウあたりはそれほど手間がかかりません。ゴボウは長い種類よりサラダゴボウの様な根が短い物が掘り易いです。一般的な野菜よりは山菜に近い物が手間がかからないので我が家ではウドや京フキ、オオバギボウシが沢山うえてありますし、ミツバは土の中で種子が休眠していたのか元は農家の畑だった場所から生えてきてどんどん増え今ではミツバ畑の様になっています。こちらでは軟白や茎を伸ばした栽培よりも自然に生えている物を食べる方が好まれ、生えている所も限られるので近所の方におすそ分けすると喜ばれます。近所にはギョウジャニンニクを栽培されている家も多く、植える以外は手間をかけないほど風味が良く(堆肥や肥料が多いと食べやすいですが独特な風味が失われる)虫も付かないので食べる時の匂いさえ気にならないなら初心者向けと思います。
北海道の様な冷涼な環境だとアスパラガスの種子を野鳥が運んできて落とすので我が家敷地には野良アスパラが何本も生え春には夫婦で食べるのに十分食べられる量生えてきますし、元々野生で生えていたアサツキの原種(エゾネギ。ハーブのチャイブスの仲間)も春に沢山生えてきます。北海道の人が大好きな山わさび(ホースラディッシュ)も植えていて年々増えて行っています。
元農家の家なので庭の敷地が広く、元々生えていた山菜のエゾエンゴサクや自分で植えた物が増えたカタクリも沢山生えてきているので、あと数年経てば山菜として食べられそうです。先代が植え今や地面に蔓が這ってしまい春は芽がたくさん出てくるミツバアケビは、今年山形の方がとても好きな食べ方があると知って、試しに初めて食べてみました。
京蕗やホースラディッシュやアケビは扱い方が悪いと蔓延り勢いを抑えるのにはコツがあるので初心者や敷地が限られる方にはお勧めできませんが、他の山菜的な物は初心者向きと思います。殖えすぎたら株を掘って間引けば良いし(掘ったものは欲しい方に譲っても)、多く採れれば調理して保存食にし瓶詰や冷凍しておくと旬以外にも食べられます。
手間なく無農薬で作れますので家庭菜園的な野菜の種類よりは、まずはこういうものから始めてみると良いかもしれません。
お礼
どうもありがとうございました。