容疑者が覚せい剤所持や使用の容疑を否認し続ける限り、警察も、そうした供述の信憑性を解明するため、裏付け捜査としては最も有力な物的証拠を確保せざるを得ません。
報道によると、容疑者は、覚せい剤ではなく、医師から処方された「安息香酸(あんそくこうさん)ナトリウムカフェイン」という医薬品を服用したと供述していたとのこと。
安息香酸ナトリウムカフェインは、脳神経に作用するため、専門医からの処方が必要な劇薬です。
鎮痛剤の効果を高めたり、眠気や疲労回復に役立つことで知られ、医師の処方箋があれば、入手は可能です。
容疑者の担当医と思しき人物が過去の処方について証言する別記事を読みましたが、劇薬指定された薬品を常用し続けるほどの病人だった容疑者が、自宅に戻らず、入院するわけでもなく、知人宅に入り浸ることに、果たして合理性や正当性は認められるのか、徹底的に追及されてしまうわけです。
合法的な投薬と信じ込んでいたという容疑者の証言は実に巧妙です。
そうした「勘違い」の真偽を当事者以外の第三者が見抜くことは困難ですから。
となれば、次に問題になるのが、投薬の動機。
合法的な投薬は、体調管理を目的に行われます。
享楽目的を満たすため、合法性のない薬物と自覚しながら常用していた可能性を裏付ける方法としては、身柄を拘束された両容疑者が、「薬物を使って肉体関係を持つ関係」であったことを意味する物的証拠を入手するより他になかったのでしょう。
公開されたのは残念ですが、度重なる虚偽により、警察や報道機関の心証は芳しくないでしょうし、それも容疑者自身が招いた結果ですから、仕方ありません。
ただ、そうした情報の公開は、ふたりの容疑者を卑しめる目的ではなく、出向先の人材派遣会社でVIP用の接待要員を務めていたとされる、女性容疑者との背後関係を洗い出すための重要な手がかりを世に知らしめる為だと私は認識しています。
実際、記事文中では、芸能界と医療系人材派遣会社という、一見、別世界の業界に籍を置く両容疑者が接点を持った謎に関わる興味深い情報まで言及されています。
この記事で着目されるべきは、精液云々より、反社会的行為が組織ぐるみで行われている許しがたい実態が浮き彫りにされている点です。
両容疑者が出会ったのは、女性容疑者が出向していた医療系人材派遣会社のグループ代表が、政財界のトップや大物芸能人を接待するための迎賓館として設けた、東京都港区内の別荘風の邸宅。
彼女は、招待する相手に合わせ接待の趣向を変える医療系人材派遣会社の命令に従い要員された一人に過ぎない。
接待に招かれた関係者からの、「接待を受けるリビングは、10対10で向き合って座ってもスペースが余るほど。障害者が描いた絵画が並び、おはやしや舞踊が披露される中、贅を尽くした料理が出てきた」という証言から伺える、大手派遣会社の裏の顔。
この派遣会社とは、派遣先企業として関わりを持ったことがあります。
派遣会社に支払う金額と、派遣社員に手渡される報酬との格差に驚かされました。
派遣社員には雀の涙のような給料しか支払わず、派遣先企業から搾取したカネを肥やしに強欲に溺れる既得権益層。
日本社会の闇の一部をまざまざと見せつけられた気がして、私にはこちらの方がショックですし、その一方で、国民が知らずにいた、こうした重大事件が、権力に臆することなく報道される日本社会であることを、強く望みます。
著名人でも加害者でも、一定のプライバシーは護られるべきですし、麻薬に関して云えば、それを流通させる黒幕組織が一番の問題であり、所持使用容疑者は、ある意味被害者でもあるでしょう。
ともあれ、容疑者が容疑を認める供述を始めた今となっては、世間の野次も反省のひとつと耐え、彼を心配する多くの人達の為にも、何年かかろうと諦めることなく、しっかりと立ち直ってくれることを願うばかりです。