安倍政権については、実は参議院選挙のころまではそれなりに評価していました。別に信用していたわけでも崇拝していたわけでもありません。少なくとも一年ごとに総理大臣が変わるよりはマシと思っていたのです。
従来わたしはリフレ派なもので、「異次元の金融緩和」と大規模な財政出動に乗り出したこと自体は評価していました。しかし、これらはしょせん一時凌ぎの政策でしかなく、もっと根本的な問題を解決しないかぎり、元の木阿弥どころか事態はもっと悪化するとも思っていました。
この根本的な問題解決のためには構造改革と所得の再分配を進める以外にありません。特に後者は少子化対策を最優先課題とします。両者をともどもに追うのは矛盾していると見えるかもしれませんが、片面を欠いた改革が何をもたらすのか、いいかげんわたしたちは学ぶべきです。
まじめに社会政策を考えれば、これはほとんど自明のことではないでしょうか。意見が分かれるのはそのバランスとか優先順位であって、ネットで見受けられる勇ましい言辞はほとんど役に立ちません。
心配なのは、昨今の自民党の目立った政治家たちはこのネットの勇ましい「保守派」と不気味なほど親和性を示している点です。もともと保守派だから共通しているのは当然なのかもしれませんが、かつての自民党がそなえていた現実感覚を失ったそれらはただの夢想です。
よく「保守派」の人たちは左派を「お花畑」と評しますが、わたしにはよほど彼らも夢の世界で生きていると感じます。現実離れした活劇のような「世界」を思い描いているのではないでしょうか。
というわけで安倍政権ですが、どうも最近はその地金が顔をのぞかせたと感じることが増えています。靖国参拝しかり、特定秘密保護法案しかり。前者は心情としては理解できなくもありませんし、後者はその目的は納得できる部分があります。しかし、その思慮深さと無縁な進め方からは不安しかおぼえません。
特定秘密保護法案に関して、あの産経新聞の世論調査でさえ「政府にとって都合の悪い情報が隠蔽される」85.1%、「慎重に審議すべき」82.5%だったことは、多くの国民がわたしのような懸念をいだいているのだとわかります。ネット世論が国民世論ではないと、いつ気がつくのでしょうね。
具体的にどれが安倍政権の悪政失政なのか、考え始めたら切りがなくなってしまいました。なので、他の方が上げておられないものを一つだけ。
NHKの経営委員会に安倍政権は「お友達」を四人も送りこみました。安倍さんの現実感覚を失った国家主義に賛同する人がいてはいけないとまでは言いませんが、いくらなんでもやりすぎでしょう。さすがにデモとテロの区別がつかない人たちはやることが違います。
ちなみに、原発の再稼働については、思っていたより進んでいないと感じます。いまだ世論の反対が大きいからであり、国会で圧倒的多数を占めているからと言って何でもできるわけではない証しでしょう。
震災復興については野党時代は「民主党だから進まない」と責めたてていましたが、まあこんなものでしょう。一気呵成に進むはずもないのですから、絵空事は置いておいて地道にまじめに進めてほしいものです。