野球に限らず興行の類いはぜんぶそうなんじゃないでしょうか。確か大相撲でも払い戻しができないとかでちょっと話題になったことがありましたね。
私はミュージシャンや役者をやっている友人が多いのですけどね、あの業界では「売ったチケットがその人のギャラ」ってのが一般的です。それで考えてみてください。もし誰かがチケットを買ってくれたとしても、「ごめん。今日仕事が長引いて観に行けなくなった。ついてはキャンセルしたいのでチケット代を返して」っていわれたら、そりゃねえだろって思いますよね。席は空くし、自分のギャラはなくなるしそんなのやってられないと思います。黙っていても当日チケットを求めに来るような人気コンテンツならまだしも、小劇場のお芝居とかあまり有名でないミュージシャンのコンサートなんて、当日突然「席が空きました」といっても売れるものではありません。
旅行などだって、当日キャンセルだと100%つまりお金が戻ってこないのが一般的です。だいたい30日前以降になるとキャンセル料が発生しますよね。野球や芝居やコンサートなどでも「30日前以前なら払い戻しに応じます」にしてもいいかもしれないけど、でも事前に予定を立てる旅行ならまだしも、たかが数時間のコンサートやスポーツの試合に1ヶ月前から行けるかどうかなんてはっきり分からないですよね。
JRの切符だって、指定席や寝台席だと直前キャンセルだと30%の手数料が取られます。鉄道の場合は利用者がいるのでキャンセルが出ても他に売れる可能性がありますが、興行の類いだとそうはいかないですね。鉄道なら自由席が満席なら「指定席にキャンセルが出ました」といえば買うという人は出てくるでしょう。しかし、プロ野球の外野席などを除けばおおむね席が指定されている興行のチケットの場合、「あそこが空いているから買いませんか」で需要が出るわけではありません。それは旅館やホテルの部屋の場合も同じですが、旅館やホテルなら当日キャンセルは料金は戻りません。
しかしながら、実際は大型ホテルだと当日キャンセルをしてもキャンセル料は取られないのが慣習になっています。ホテルの規約では当日キャンセルは100%料金をもらうと書いてあるのですが、部屋の予約だけして支払いは当日ってのはよくありますよね。それで、当日に「キャンセルです」といっても「かしこまりました。またのご利用をお待ちしております」の一言で終わりです。
ホテルの場合は、そういう当日キャンセルのリスクに備えてわざとオーバーブッキングつまり部屋数以上の客を入れてしまいます。つまり事前にどのくらいキャンセルが出るかを読み込んで多めに仕込んでおくのです。しかし思ったよりキャンセルが出ないと部屋数以上にお客さんが押し掛けることになるわけで、そこを上手く読むのがホテルの支配人の腕の見せ所なわけです。実際、仮にオーバーブッキングしちゃった場合はどうするのかというと、実は大手ホテルの場合は予約で満室となっても、実際は「使っていない部屋」というのがいくつか確保されているのです。それはどういうことかというと、当日に重要な顧客から「今日泊めてくれ!」と急にいわれることがあるんですね。一流と呼ばれるホテルはそういうときに「それではご用意させていただきます。いつもご利用ありがとうございます」と答えます。ちゃんと予備があるんです。だから、大抵は多少オーバーブッキングしてもその予備部屋を提供したり、あまり予約が入らないスイートルームを提供したりしてやりくりするのです。
しつこいですが、スポーツや芝居、コンサートではそういうやりくりはできません。だからリスクはお客さんに負担してもらうわけです。そこが読めないなら、最初から予約しないで当日券でも買ってくれというわけです。
お礼
なるほど! よく分りました。